利樹は幼い頃に父を亡くしている。
母一人で育てられた為、父親のイメージが無い。
父親として、どのように息子と接するべきか判らないのだ。

光司は、言葉少ない大人しい子である。
利樹のことを利樹さんと呼ぶ以外は、家族の一員として
認めてくれている。
が、あくまでもそれは、一緒に家に住んでいる男の人という
だけである。

同僚に訊ねたり、本を読んだりしてみたが、そんなことでは
どうにもならない。
とにかく当たって砕けろ、とばかりに暇を見つけては光司と遊んでは
いるが、全く進展が見られないように思える。
少し、気が滅入る時もあるが、それでも利樹は何とかして
父親になろうと頑張った。

今日はこどもの日なのだ。
雪江が言うには、光司は校内の球技大会に向けて
、近所の公園で毎朝、練習をしているという。
今日ぐらいしか付き合える日が無い。
利樹は雪江が作ってくれたお握りを一つ頬張ると、公園に向かった。
疲労が溜まっているせいか、少し頭が痛む。