(悔しい…みんなして私を無視するのね…私はここに居るよ!)

今日も雅美の呟きは、ことごとく無視されている。
いつ頃からだろうか、こんな状態になったのは。
入学した頃は、雅美はクラスでも人気者だった。彼女を中心にした輪に入りたいと願う者ばかりだったのだ。

ほんの気まぐれから始まった苛めは、瞬く間にクラス中に広まった。
輪の中心は、また容易に攻撃の中心にも成り得る事に気づいた時には、既に遅かった。
かれこれ半年以上も彼女は誰とも口をきいていない。
彼女はクラスの影になったのだ。

(誰かこっちを見て!私を見てよ!話を聞いてよ!)

どんな呟きも無視されるのだが、それでも雅美は、なけなしの意地をかき集めて教室に居続けた。

冬休みを間近に控えたある日のこと。
この時期には珍しく、転校生がクラスに現れた。その子は桜井圭子と自己紹介し、ぺこりと頭を下げた。
その佇まいに、神秘的なムードが漂っている。

この人なら、私と話してくれるかもしれない。
淡い期待を胸に雅美は、圭子に近づこうと試みた。

見るからに大人しそうな外見に安心して、圭子は話しかけた。

返事は返ってこなかった。

無口なだけかもしれないという予想は見事に外れた。