「ジ…ロ…」

「え?母さん何か言った?」

「ジロ…、ジロー、ジローッ!!」
亜紀子は車椅子から立ち上がった。
杖を頼りに、歩こうとして転んだ。
濡れた歩道をずぶ濡れになりながら、亜紀子は
ジローの方へ這っていく。

「ちょ、ちょっと母さん!」

止めようとする真一を振り払い、亜紀子は呼びかける。
その声は悲鳴のようだ。
「ジロー、ジロー、ジーローッ!」

「な、なんだよ。このばあちゃん、あんたの連れか?
何を叫んでるんだ?」
驚いたオペレーターが真一を手招いた。

「す、すいません、私の母なんです。
そのロボットは昔、母と暮らしていたロボットなんです」

「あぁ?こいつが?」

亜紀子は杖で体を支え、
立ち上がり、ジローにすがった。

「無理だよ、あんた。
このロボット達は工場で初期化されているから。
昔の事なんか覚えちゃいないよ」

男の言葉を裏付けるように、ジローは
亜紀子の体をそっと離す。
よろめいたはずみに、
亜紀子の持っていた杖がジローに当たった。
軽い電気ショックがジローに伝わる。
微かに白い煙が上がった。