山のように盛り上がった椅子の下で、男は息も絶え絶えである。
これでも逆らうようなら、フォーメーションC(ちなみに机を投げつける)
が待っていたのだが、どうやら発動には至らなかったようである。

通報を受けた警察官が到着し、様子を見て呆れた。
男は体中に傷を負っている。
どちらが被害者か判らないぐらいだ。

「これは…いったい何が」

ずい、と綾が一歩前に出た。
「あたしが指揮しました」

「君が?」

「はい。不審者が来たら、こうしなさいって父が教えてくれました。
刃物を持った相手に背中を見せたらやられるって。
無理に押さえつけようとせず、警察が来るまで物を投げ続けろって」

「なるほど。いやはや、大した中学生達も居たものだ」
感心した警官に、一瞬隙ができた。
くたばっているとばかり思っていた男が、突然立ち上がり
綾に向かっていったのだ。

「せめておのれだけでも殺したるわいっ!」
包丁を腰に溜め、体ごと綾にぶつかっていく。
男にとって甚だ不幸な事に、綾は少林寺拳法を嗜む娘である。
見事な転身蹴が決まり、男は腹を押さえた。
が、まだ倒れない。

「しつこいわねぇ…よし、フォーメーションR!」

「こ、今度は何じゃいっ!」

「ふっふっふ。フォーメーションRとは。
ま、後ろを見てごらん」

振り向いた男の目に映ったのは、身の丈185cmの巨大な男。
男はニヤリと微笑み、軽くストレッチしながら言った。

「俺の娘に何してくれてんねん」
そう、フォーメーションRとは究極の護身術であった。