「ちぇいいっ」
必殺の気合と共に、休む事無く繰り出す突きが悉く外されていく。
当たらない。
どうしても当たらないのだ。

「何故だ、何故当たらぬ」
血の叫びを吐く大石に向い、
広目天が子供を諭すように言った。
「大石。広目天とは千里眼を持つ神なのだよ。
すなわちそれは、見切りの神なのだ。
ぬしの剣はわしには当たらぬ」

「ばかな」
力なく刀を垂らした大石の背後で鼓の音がした。
いつの間にか現れた摩多羅神の笑い声と共に、
その鼓の音は大石の心に深く深く
入り込んでいく。
心が折れた瞬間を狙って摩多羅の鼓は襲い掛かるのだ。
あれほど大きかった大石の体が、徐々に縮んでいく。
次に現れる時、大石は既に人では無かろう。

これで四天王全てが揃ってしまった。
芹沢鴨、河上彦斎、千葉周作、そして大石進。
凄まじい剣技を持つ者ばかりである。

「さ、広目天よ。いよいよだ、我等が主の復活の
日が近い」

「は。この上ない喜びでござりまする」

「うむ、後は都を落とすのみ」

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