「あ、あぁすんません」
頭の上から聞き覚えの有る声がした。
見上げると、つくね亭の熊さんだった。

「あ、熊さん」

「え。あぁ、昨日の叉焼丼お代わり娘さん」

「きゃぁ。そんなことをこんな公共の場で」

くすくすと後ろでえっちゃんが笑っている。
「無理ないですよ、熊さんの料理ならお代わりしたくなりますもん」

「えっちゃん、今日はお花遅れてるの?」

「えぇ、すいません熊さん。二時には着くと思います」

「そう、それなら夕方には間に合うな。水仙をとっといてください。
後で貰いに来ます」
そこまで話して、ようやく熊は自分が店の出入を著しく邪魔しているのに
気付いた。

「あ。あぁごめんなさい。邪魔しました。叉焼さん、今日はどちらへ」

「それ、やめてください。歩美といいます。」
だが、歩美はそれほど悪い気はしていない。
熊と直接話せる機会を楽しんでいる。

「こりゃまた失礼。歩美さん、後でいらっしゃいませんか。
今日のお勧めは本当にお勧めだ」

「そうしたいんですけど、今からお花を探さなきゃならないんです。
入院したおばあちゃんがどうしても、って欲しがっていて。
花が何よりも好きな人だから、願いを叶えてあげたい」