「おじさん、あのテルって子、大会とか出たことある?」

「うん。以前はわしの孫と一緒によく出ていた。」

やっぱり、と少女は深くうなづいた。
「只の犬じゃないと思った。今日はその子は?」

源次が口篭もる。

「どしたん?」

テルが帰ってきた。その顔は、喜びに満ちている。
今まで、ただ散歩に行って帰ってくる時には
絶対に見せたことが無い顔だ。
源次はその時、決めた。

「なぁ、君みたいに上手く投げられるには
何ヶ月かかるかなぁ?」

「何ヶ月もかかんないよ、ちょっと貸して。」

少女は、ディスクを胸の前で構えた。
「いい?腕だけで投げても飛ばないの。
手首のスナップが大事なのよ。
スナップだけでもほら」
と、腕を動かさずディスクを飛ばす。
たちまちテルが拾いに行く。

「ね?まずはこれから始めるといいよ。
注意するのは、地面に平行に飛ばすこと。
体を開いたり、肩を回したりしないこと。」

源次もやってみた。
「スナップ、平行」
呪文のように唱えながら投げる。
ふわ、っと浮きながら、わずかではあるが
まっすぐ飛んだ。
あっという間にテルが咥える。

「ほら、できたじゃん。あとはその要領で
だんだん距離を伸ばしていけばいいわ。
投げ終わった後、重心を後ろに残しちゃダメ」

源次は、少女への礼もそこそこに
ディスクを投げ続けた。
「ふふ。がんばってね、おじぃちゃん」

「あ、あぁすまん。ありがとうな、助かった」


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