「あのコックさんは、
どうした。」
「もう一人の怖い
おじさんを連れて
出ていったよ。
お父さんに地下室へ
行けって言ってた。」

そういえば、微かに
覚えがある。
火を点けると言って
いた。
地下室に心中した
家族を隠した、とも。
急がなくては。



酒井は吉岡に何度
目かの打撃を与えた。
すでに吉岡の頭部は
グズグズになり、原型
を留めていなかった。
それでもなお、吉岡
は酒井に向かって
きていた。

厨房には、まだ片付け
きれてない油があった。
そしてもう一つ、探して
いた物、長年使い
馴れた包丁を見つけ
だした。

「吉岡、すまないが
決着をつけよう。
俺一人助かる気も
ないからな。
先に行っておいて
くれ。」

己の魂である包丁を
汚す気がして一瞬
とまどったが、酒井は
吉岡に最後の一撃を
振るった。

頭と胴を離され、
吉岡はようやく動きを
止めようとしていた。

唇を噛み締めながら
それを見ていた酒井
は、振り切るように
背中を向けると
天ぷら油の容器を
持ち、地下室へ
向かった。