夏休みが終わろうとしている。

聡子と晴美は、朝から一言も口をきいていない。

今話しかけたら、二人とも号泣するのは判っていた。


だから苦手なんだよ、子供を預かるのは…聡子は夕食の後片付けをしながら愚痴った。

その夜、晴美は聡子の布団に潜り込んできて泣いた。

聡子もまた、素直に泣けた。


晴美が帰る朝が来た。
遠くの山に入道雲がかかっている。
真っ青な空だ。

その空に黄色いひまわりが揺れている。



「おばあちゃん、ありがとう」

晴美の腕の中で揺れている。


「…元気でがんばんなさい。」


バスに乗り込んだ晴美は、見えなくなるまで手を振っていた。
ひまわりの花がその隣で揺れていた。


聡子は、のろのろと家に戻った。
晴美の居ない家は、ガランとして息を潜めているようだ。

だから苦手なんだよ、子供を預かるのは…
聡子はもう一度つぶやいて泣いた。


庭先からひまわりが消え、聡子の心から青空が消えた。

またいつものように一人暮らしが始まった。


数日後、晴美から手紙が来た。
家族揃って微笑む写真が同封されてある。

そして、ひまわりの種も入っていた。

あたしもひまわりを育ててみようかね。

ニッコリと微笑みながら、聡子はいそいそとひまわりの種をしまった。

来年の夏は、庭いっぱいにひまわりを咲かそう。


ひまわりの花言葉は愛慕だ。
聡子の胸は、今、愛慕の気持ちで満ちていた。