そのとき、微かな声がした。
「僕、知ってます。」

皆は気がつかない。
「あの!僕知ってます!」

ピタリ、と騒ぎが止んだ。
全員が声の主を見た。

「僕、知ってます。」
玲音が、精一杯胸を張っていた。

ハナクロが優しく訊ねた。
「玲音くん、何を知っているというの?」

「ここと同じくらい、暮らしやすい素敵な
森があるんです。」

「どういうことかな?」

「僕、ここに来るまでに色んな土地を歩いて
きました。その途中、何度も聞いた事が
あるんです。ハナクロさん、猫の森って
知らないですか?」

ハナクロには覚えがあった。
というよりは、捨て猫なら皆が知っていた。

「ばか。ばっかだよこいつ。」
チロがあざ笑う。

「あんなもの、噂話に決まってるだろ!
捨て猫達がのんびりと過ごす猫の森、
そこはいつでも暖かく、食べ物にも
困らない。そんな場所、有るわけ
無いだろっ!」

玲音はいつも弱気な猫である。
その彼が珍しく引かなかった。
「僕はその森で暮らしていた
猫に会ったことがあるんです。」