白髪交じりの温和な顔が余計に穏やかになる。
彼もまた、春美の持つオーラを好む一人であった。
「来たな。春ちゃん。田上さんのことか」

「さすが先生。すんませんけど、外泊許可出したってください。
今、奥さん来はりますから」

「えらい急やな。そりゃ構わないが…帰って何したいって言ってんの?」

「それがですね、えらいことですわ。雑煮食いたいっちゅうてはります」

穏やかな小西の顔が一瞬にして曇った。
「餅か。これはまた困ったことをば」

「お願いします。先生、私、田上さんの食事に立会いますから」

「それ以上、何を言っても聞かないだろうねぇ。判った。
あとは御家族さんと意思の確認をする」

「ありがとうございます!」

嬉しそうに頭を下げる春美に、小西は言った。
「いつも君が言ってるよな、『情』と『理』のバランス。
頼んだよ、春ちゃん」

「わっかりましたぁ!」

二時間後、全ての用意が整った。
田上の妻、松子に小西が静かに言った。
「田上さん、もうね、好きなようにさせてあげてください。
美味いもん食べて、大好きな奥さんの側にいるのが
今、何よりの薬ですからね」