「ごめんなさいよ」

いつも来てくれる近所のおばあさんだ。
よしさん、としか知らないが常連客であった。

「あ。いらっしゃいませ…すいません、今休業中で」

「らしいね。何だい、しょげた面ぁして。あんたのお父さんは
いつも笑ってたよ」

そう言えば、よしさんは古くからの客であった。
雅夫は苦笑いを浮かべる。

「仕方ないですよ、こんな有様じゃ。休業補償されたところで、
これから先、お客さんが戻ってくるやら判らないし」

愚痴る雅夫を皺だらけの手で制し、よしは言った。
「誕生日のケーキを注文しに来た。いいかい、一番大きい
ケーキだからね。頼んだよ。」

「いや、でも、いつ入荷が再開するか判らないんですよ。
どなたの誕生日か存じませんが、間に合うとは思えない」

よしは、ふん、と鼻で笑い店を出て行こうとしている。

「あ、よしさん。聞こえました?いつになるか判らないんですってば」
よしは、振り向きもせずに答えた。