2019年度 97本目の劇場鑑賞
実在した女性指揮者のパイオニア、アントニア・ブリコの半生を描いた人間ドラマ。
オランダからの移民アントニアは「女性は指揮者になれない」が常識だった時代、音楽に対する情熱だけで数々の困難を乗り越え目的を達成してゆく。
よくあるサクセスストーリーで女弁護士を目指した「ビリーブ」の音楽版とも見える。
音楽はもちろん、映像も美しく良質な作品であることは間違いないが、分かり易すぎの演出と詰め込みすぎで139分になってしまった。小生的にはあまり重要ではないエピソードは削り、曲を長くしたい。
フランクとの恋愛への発展やオーケストラのメンバーからの反発のシーンも分かりや過ぎる。水戸黄門とまでは言わないが悪者は最初からバレバレ。
小生がバカなのか、産んだ子を手放さなければならない、は理解できたが、可愛がりもしない子を何で養子として受け入れたのか分からなかった。最後はまた抱き合ったりして・・・。
アントニアは生活費を稼ぐためゲイのナイトクラブでピアノを弾いていたが、そこの同僚ロビン(スコット・ターナー・スコフィールド、トランスジェンダーの役者)が良いアクセントとなり作品に色を添えていたと思う。
しかしながらアントニアからのWho are you?(「あなたは誰?」ではなく、流れで「本来はどっち?」の質問、 字幕は忘れた) の問に対してロビンの返答It’s meだったかJust meだったか忘れたが「男の自分」の字幕訳は違うでしょう(たしかにその後男装に戻るが)!男でも女でもなく自分そのもの、との意味で短い表現はあるかな?
音楽学校で指導されているシーンでは指揮者に必要な本質的な技術を見せて欲しかった。小生は素人なので詳しくは知らないが、例えば、指揮によってどのように音が変わるか、譜面解釈の多様性など。指揮棒の振り方を手を取って教えることはないだろう。
小さなスクリーンで鑑賞したのが原因かもしれないが曲、音で圧倒されることはなかった。そもそも一曲を通して聞かせたら何時間あっても足りやしない。史実なのかもしれないが、最後一番盛り上がる時の曲がエルガーの「愛の挨拶」ではなく、もっと迫力のある曲を選んだほうが映画としては良かったのではないか?
ちょうど世界大恐慌の時、女性が仕事を得るだけでも大変で家庭(愛)との両立などは不可能な時代だったと思うとアントニア・ブリコの苦悩は深かったろう。最後にインタータイトルで、現代でもベスト50のオーケストラには女性の首席指揮者はいない、とのことだった。
評点・・・★★★☆ 3.5
『シュヴァイツァーというと医学博士、哲学者のイメージしかなかった。バッハの研究者でオルガン奏者でもあったことは知らなかった。頭の良い人は多岐において優れている。うらやましい。』
