東京にやってきた外国人観光客が不満に思うこと パリと東京、その都市生活の決定的な差とは? | 世界に目を向けグローバル、地方(京都・東京・岡山・静岡・大阪・神戸・横浜・金沢・長野)を中心にグローカル=iPhoneAndroidAPIブログ

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東京にやってきた外国人観光客が不満に思うこと パリと東京、その都市生活の決定的な差とは?


■東京にもっとエンターテインメントを!

死者129名という、パリにおける悲惨なテロは、世界中に大きな波紋を呼んでいる。各国で治安対策が強化され、スポーツの試合やコンサートなどのイベントが中止に追い込まれたり、爆破予告で航空機の運航が止まったりしている。

このような事態は、市民の日常生活に大きな不便をもたらすとともに、経済にも暗雲を投げかけている。いうまでもなく、観光産業にとっては大打撃であり、日本でもインバウンド(訪日外国人客)2000万人という目標が少し遠のくことになりかねない。

パリのテロは、金曜日の夜を狙ったものであったが、それは市民が夜にも生活を楽しむという、フランス人の生活様式を念頭に置いた上でのことである。

私も20歳代の頃にフランスで勉強し、生活したのでよく分かるが、フランス人ほどワークライフバランスを徹底してきた国民はいない。週40時間労働制、2週間の有給休暇も1936年に成立したレオン・ブルムの人民戦線内閣で導入された。今では1年に1ヵ月まとめて夏休み(ヴァカンス)をとることが一般的になっている。

それでも、日本人よりもフランス人のほうが豊かであることについては、前々回の本欄で述べた通りである。とくに、各種エンターテインメントの多さは日本の比ではない。

私も、パリで生活していたときには、毎晩のようにコンサートに通っていた。毎日どこかで演奏会がある。世界的なスターからコンセルバトワールの学生までピンキリであるし、演奏会場も大・中・小たくさんある。

その点で言えば、東京の舞台、演奏会場、芝居小屋などが今後改修や閉鎖で減っていくことに私は大きな危機感を持っており、対策を講じるようにすでに関係部局に指示してある。

■まずは、ワークライフバランスの徹底を!

パリと東京の違いは、夕食後(アフターディナー)の娯楽の多少である。

パリでは、軽食で夕方の空腹を満たした後、演奏会や芝居に出かける。だいたい7時半頃に始まって10時頃に終わる。その後、出し物や演奏家、役者などについて批評しながら夜食を楽しむ。地下鉄も遅くまで動いているので、深夜に帰宅する。

ところが、東京だとそうはいかない。まず、コンサートなどは夕方6時半には始まる。仕事が少しでも長引くと遅刻してしまう。そして9時頃には終演である。しかし、それから食事に行こうとすると、多くのレストランはもう閉まっている。

なぜ、そうなるのか。

そもそも東京はパリに比べて広大である。若いサラリーマンは、住居費の関係で都心ではなく郊外に住むことが多い。遅い時間にコンサートなどをやると、終電車がなくなって彼らが自宅に帰れなくなる。そういうこともあって、劇場やレストランなどは遅い時間に営業をしなくなるのである。

訪日外国人客の不満の一つは、東京に夕食後のエンターテインメントが少ないということである。これは、インバウンドを増やし、観光立国を目指すにはマイナスである。では、どうすればよいのか? 多くの分野で総合的に手を打つしかない。

まずは、ワークライフバランスを徹底し、夕方6時には仕事を終える。その後、軽い夕食を済ませて、劇場や映画館やコンサートホールなどに行く。7時半に開演、10時頃終演。客が来るので、飲食店も営業時間を延ばすことができる。終電の時間を少し遅くしても、客がいれば鉄道会社も赤字にはならない。

また、需要があれば、バス会社も、たとえば銀座~八王子間の直行バスを出すことができるようになる。ニーズのあるところ、ペイするところには、黙っていても民間が参入する。

■ゆとりをもって生活を楽しむ成熟社会へ

私たちが、しっかりとワークライフバランスを徹底し、生活を楽しむことを優先するようにならないかぎり、外国人観光客向けの施策だけでは限界がある。わたしが誤解を恐れずに「週休3日制」を提唱しているのも、そのような働き方の改革なしには日本社会の根本的な改革はないと考えるからである。

1964年のオリンピック・パラリンピック東京大会は、戦後からの復興、高度経済成長のシンボルとなった。そして2020大会は、ゆとりをもって生活を楽しむ成熟社会への転機とならなければならない。世界中からアスリートや観客がやってくる。彼らに対して、東京の、そして日本の豊かさを示す絶好の機会である。

そもそも江戸文化はゆとりと成熟がそのエッセンスである。現役をできるだけ早く引退して、隠居の身で文化的な趣味にいそしむ。それが当時の人々の理想であり、広重、伊能忠敬がその典型である。今のフランス人の理想とあまり変わらないのではないか。

そして、ゆとりこそが、新しい文化を生んでいく。そのような好循環こそが、実は経済を活性化させるということを忘れてはならない。私は東京を賑わいのある楽しい都市にしていきたいと、本気で思っている。