返した後はどうするのかと言うと、実は既にMyチェロを入手している。
ちなみに、2台並んでいる、手前が返却前のイタリア製レンタルチェロで、後ろが自分のチェロだ。
写真だけ見ると高そうだが、ヤフオクで買った99,000円の中国製で、古そうに見えるが、アンティーク仕上げと言って古く見えるように加工しているだけで、2012年の新作だ。
LiuXi工房と言うところで製作されてサインが入っている。
一般的に中国製と言うのは最近アメリカを中心にヨーロッパまでOEM供給されていて、ラベルが張られていない物があり、ヤフオクなどで流れている物にはそう言う物が多いらしいが、これはちゃんとサイン入りラベルや工房の製作証明書が入っていたので、ある程度自信作なのだろう。
セミハードケースはキャスター付で軽いが、元々ソフトケース付を+1万円でセミハードケースに変えてくれると言う事でこちらにしたが、こちらも激安だ。
激安なだけに作りは悪く、到着してすぐにケース内部の小物入れの蓋を開けようとしたら取っ手が引きちぎれたので、修理して使っているが、今のところ充分。
この楽器はLiuXiのBestModelと言うタイプで、国内ではあまり入荷しないモデルの様だ。
ネットで有名な楽器店辺りで販売されると30~40万は付きそうなランクの楽器だが、個人で仕入れて出品した様で、落札後に電話で問い合わせをしたところ、以前、15万で出したが売れなかったので値段を下げたらしい。
エンドピンも一人前にカーボン製となっている。
「そんなもんで音はどうなんだよ!」とツッコミが入りそうで、この辺は僕も心配だったが、レンタルの180万のチェロと比較しても、良く楽器が響いて、基本の音色も悪くなかった。
但し、セッティングが問題で、当初は高音が鳴るベルギータイプの駒にラーセンが張ってあったので、キンキンのセッティングになっていた。
駒にはフランス駒とベルギー駒があり、背の高い駒がベルギー駒で、見た目としては駒の真ん中にある穴の形が異なる。
駒の違いに関する詳しい話はこちらを参照
http://www.sasakivn.com/werkstatt/qa/stegetyuepe.htm
高音はうるさいくらいバリバリ鳴っていたが、低音が物足りなく薄っぺらい音がしていたので、馴染みの職人さんのところで低音が出るフランスタイプへ変えて貰い、魂柱も作りなおして貰った。
弦も張ってあったラーセンから落ち着いた音のするナイロン弦のオブリガードへ交換して、そのセッティングでN◯K交響楽団のFさんのレッスンを受けた。
レッスン場へ到着当初、Fさんがまだ居られず、ピアノの調律をされる方だけで作業も終了されたので、楽器を出して音を出すと調律師の方が「良い音しますね~やっぱりチェロって良いですよね」と言われた。
「いやーでも、これヤフオクで9万の楽器ですよ」と言うと絶句されて「きっと高い楽器だろうと思ってましたが、値段を聞くのは失礼だろうなと思ってました。そんな値段でチェロが手に入るとは思いませんでした」と言われたので若干気を良くした。
レッスンを受けた後に、やっぱり値段を言うとFさんも非常に驚かれて「ちょっと弾かせて下さい」と僕の楽器でバッハの無伴奏3番のプレリュードを、それも丸々弾かれた。
記念に楽器にサインを入れて貰いたい程光栄だったが、自分の楽器ながら(演奏者が素晴らしいので良い音がするのは当然)、思わず「おー」と声がするくらいの良い音がするのに驚いた。
Fさんも「一つも嫌な音がしませんね。超お買い得品ですよ!(こんな物をヤフオクで買って)いやーお買い物上手ですね~」と変な感心のされ方をされてしまった。
「(最初の楽器としては)この楽器で充分でしょう」と太鼓判を押してもらった。
これ以外にも、一人で聴き比べしてもわからないので、別の機会に二人ほど楽器の弾き比べも付き合って貰ったが、値段の差が20倍はあるのに、寧ろ、そっちの方が響く、箱が鳴ってる感じがする。と言う評価だった。
箱の状態に関しては中華チェロは職人さんにセッティングされていて、レンタル楽器は調整を全くしていないと言うのはハンディがあるだろう。
個人的な印象では、やはり本物の音はイタリア製だと思うが、ただ、音色の好みと言う点では、A線の音の伸び方も好きで、ソロを楽しむ目的には充分だと思っている。
但し、やはり中国製。不具合もあった。
先日、若干弦高が高くなってる感じがしたので、調べると指板の反りが大きくなっている様で、指板とネックの隙間から光が見えるのを発見した。
指板がネックに綺麗に接着されていない様だった。
このまま放置すると、湿度の高いシーズンになり益々隙間が広がって最悪指板が剥がれるので、すぐに職人さんへ連絡して、指板を張り直して貰った。
思えば、受け取った時に指板とネックの繋ぎ目がピッタリと一致してないので気になっていたのだが、既に剥がれかかっていたのだろう。
まあ、値段が値段だけに、この程度は織り込み済みだったが、早期発見できてよかった。
アジャスターやペグ周り等、他のところは特に問題無さそうで、取り敢えず音が良ければそれでよしだ。
張替えは7千円で、気になっていたネックと指板の繋ぎ目も綺麗になって良かった。
弓の方も同様にヤフオクでArcosBrazilの中古を熾烈な競争?の結果40,500円で落札して、フィッティングの銀は銀磨きで綺麗にして毛替えをして貰ったら立派な弓となった。
こちらも後輩のチェロ弾きに弾いて貰ったら「あ~こりゃ4万なら良い買い物ですよ」と言っていた。
確かに、レンタルしていた20数万のデーリングと比べての僕の印象と同じだった。
今回、比較の基準としてある程度の値段の楽器を借りたのは非常に良かった。
弓にしても、バランスや音の品質は高い弓の方が良いのは当然だが、何処が違うのかと言う弾き比べも出来て良かった。
もし、最初から安い楽器しか手にしてないと「高い楽器ならこーなんだろうな」と自分の練習量は棚に上げて、変な妄想を抱く事もあるだろう(笑)
短い付き合いのイタリア製チェロにも感謝しているし、中国製のMyチェロも愛着充分だ。
しかし、自分でやっていて何だが、クラッシクの楽器をヤフオクなどで弾きもせずに購入するのは薦めない。
写真で見ても出来栄えなどは中々分からないし、中国製には安かろう悪かろうと言うのは山程存在する。
購入したチェロは豊富な写真があって、様々な情報から、これはお買い得だろう言う判断をしたが、それもでも、かなり清水の舞台で、音を出すまで相当心配だったのは間違いない。
そして、「何かあってもある程度解決してくれる職人さんを知っているから」と言うのもあったからで、普通の初心者なら、やはり誰か詳しい人と実際に音を出して購入するのが一番だろう。