三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長 中谷 巌さんの話があったが、これが中々分かりやすく又、素晴らしい言葉が載っていた。
基本的には、僕が普段ブログなどで書いているような考えと殆ど一致しているので、長いが、全文紹介したい。
『かつては規制緩和や市場開放の旗振り役だった。
小渕恵三内閣の「経済戦略会議」の議長代理としてまとめた提言は、小泉純一郎元首相が進めた構造改革の下敷きになった。
だが、2008年のリーマン・ショック直後に著書で、新自由主義との決別を宣言。
経済学者の「転向」は大きな反響を呼んだ。
「資本主義の推進力は、飽くなき資本の自己増殖の欲求。
それを支えたのが科学技術の進歩で、原子力発電もその延長線上にある。
科学の力でどうにでもなるという信仰の下、生態系では処理できない放射能という異物を生態圏に持ち込んだ」
「欲求が引き起こしたという意味では欧州債務危機も同じ。
新自由主義を進めた結果、国境を越えて自由に移動するグローバル資本が登場し、その暴走がリーマン・ショックや欧州債務危機を招いた。
富裕層と貧困層の格差を拡大し、社会を二極化した。
グローバル資本は何の脈絡もなくもうかるところに飛んでいき、大工場を造ったり、乱開発をしたりして、もうからなくなれば別の国へ逃げていく。
その土地で歴史を刻んできた人たちの生活を根こそぎ破壊してしまう点でも、原発事故と重なる。
原発をやめることは、資本主義を大きく修正する話と似ている」
福島第1原発事故まで、日本の電力供給の3割を占めた原発。
拡大が期待される再生可能エネルギーはコストや安定性の面で課題がある。
経済活動への影響を懸念する経済界には原発再稼動を求める声が根強い。
「20年程度の猶予期間を設け、徐々に原発をなくすのが現実的だろう。
その間にも死にものぐるいで再生エネルギー開発に徹底的に資源を投入すれば、コストも安く、安定供給できる技術が次々と生まれてくるに違いない。
日本経済にとっても大きな希望になる。脱原発を決めたドイツやイタリアと連携して、国際世論に訴えることも重要だ」
「前例はある。1970年に米国でマスキー法という法律が施行された。
自動車の排ガス中に含まれる一酸化炭素などの汚染物質を5年以内に10分の1以下にせよ、という途方もなく厳しい規制だった。
日本の自動車メーカーは、世界に先駆けてこの基準をクリアする自動車を造り、世界に躍進する原動力になった。自然エネルギーでも、同じことが起こり得る」
「災後」という言葉を生んだ東日本大震災と原発事故。ひたすら経済成長を追い求めてきた私たちの価値観を揺さぶる。
「資本主義社会は市場で値段が付くものしか評価しないシステム。
震災を機に見直された『絆』のように、値段は付かなくても価値があるものを、これからの社会に組み込んでいかなければならない。
原子力から自然エネルギーへの転換は、自然と慈しみあいながら生きるという、人間本来の姿への回帰でもある」
「脱原発依存を掲げる政府が、原発輸出を後押しするのは完全な二枚舌だ。
当面のビジネスチャンスがなくなるのは痛くても、もうけを優先する民間会社がリスクを抱える原発を運営する今までのやり方を見直し、長期的な再生エネルギー戦略を描く必要がある」
』
中谷さんの話は非常に分かりやすく、又、将来の方向に対してもしっかり見通しを持っている。
さすがに「三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長」と言う肩書きは伊達じゃないし、だからこそ説得力がある。
そして、中谷さんの話を補足する具体的な例を幾つか紹介する。
僕が下線を引いた箇所は「グローバル企業」とあるが、これは日本の国内での大企業も全く同じ、
寧ろ、それよりも酷いかもしれない。
『兵庫県は9日までに、尼崎市のパナソニックプラズマディスプレイ工場の生産停止・縮小を受けて、同工場に支出していた誘致補助金の一部、12億6千万円の返還を求めることを明らかにしました。
パナソニック社は2005年から尼崎市に三つの工場を建設し稼働させてきました。
県は、05年稼働の第1工場に28・4億円、07年稼働の第2工場に40億円、09年稼働の第3工場に10億円の誘致補助金をこれまで支出。今後の分も合わせてパナ社に合計218億円(姫路工場を含む)の補助金を出す契約でした。
ところがパナ社は昨年10月、第1、第3工場の生産を11年度中に停止することを決定。これを受けて県は、操業期間や投資実績に応じて第1工場で11・4億円、第3工場で1・2億円の返還を求めるものです。井戸敏三知事は会見で、「補助金は10年の操業を前提にしており、操業期間からみて過大になっている分を清算してもらうもの」とのべました。』
要するに儲からないとなるとサッサと撤退して、海外移転なんて話を出している。
これはパナソニックに限らず何処の大企業もそうだろう。
これまで散々税金から補助金を貰って利益を上げながら利益が出なくなったとなるとサッサと稼働停止。
周囲の影響や雇用なんて知ったこっちゃないということだ。
大企業が得をしているのは法人税だけでは無いのだ。
そして、これだけ大企業が日本で優遇されているのは、このシステムが未だにしっかり根付いているからだ。
沖縄・辺野古への新基地建設のための環境アセスメントに総額86億円が費やされた上、入札でまともな競争が行われず、ほとんどを防衛省OBらの天下り企業が受注している。
新基地建設という「結論ありき」の環境影響評価書を作成して、早朝に守衛室に運び込んで強行提出した、殆ど意味の無い書類に86億もの破格の費用を掛けた上、防衛省の天下り先企業が全体の93・5%受注していると言うのは税金の無駄遣い以上に色々な問題を含んでいる。
つまり、このシステムが改善されない限り、日本の大企業優遇は継続するだろう。
最後に、100年以上前に、お金が全ての時代を嘆いた文豪森鴎外の面白い話が、別の日のコラムにあったので紹介したい。
『陸軍軍医として小倉に約3年間駐在した森鴎外は今年が生誕150年。
113年前、本紙の前身の福岡日日新聞に「我をして九州の富人(ふうじん)たらしめば」の題で寄稿した。
富人とは資産家のこと。
鴎外は財力をひけらかす九州の炭鉱主に、自分なら芸術・学問の振興や労働者の福利厚生に金を使うと説いた。
執筆のきっかけは人力車の乗車拒否だった。
車引きは炭鉱主が札びらを切るのに慣れ、規定料金で乗る鴎外を相手にしなかった。
雨の中、8キロ歩かされた鬱憤(うっぷん)を「富の抑圧」と表現した。
寄稿料はビール1ダース。
弊紙としては、文豪を怒らせた車引きに感謝すべきかもしれない。
本紙の北九州本社が12日、小倉北区の中心部、平和通りに移転する。
これに合わせ、来年50歳を迎える北九州市の進むべき方向性を連載で提言する。
鴎外の論にははるか遠く及ばないが、記者と粘り強くこの都市の未来図を考えたい。』
以上、全く関係の無い話だが実は全てが関係していると思えるのは僕だけだろうか。