お正月になると博多では、ぶりの刺身が定番だ
ぶりは焼いて「焼きぶり」として雑煮にも入るが、出世魚と言ってヤズ、ハマチと成魚となるにつれて名前が変わる縁起の良い魚であり、冬場は脂が乗って美味しくなるのもあるだろう
我が家の正月はこのぶりを中心に刺身の盛り合わせが、お節料理と並ぶ
この刺身と一緒に並ぶ「刺身のつま」
昨日、この「つま」を残したら、本物の「妻」から「あー残しとー!」と怒られた
その時、「刺身のつま」は「食べるものかどうか」と言う話になった。
僕も知らなかったし、食べる時はさしみ醤油とかにちょっと付けて食べていた程度だったので、Google先生に教えて貰うことにしたが、結論として「そのまま食べる物」と言う事になったので、調査の成果をご報告
この、添えもの程度の軽い役割しか担っていないものと言う意味で使われたりして、殆ど飾り付けの様に思われている「刺身のつま」だが、実はしっかり役割りがあった
特に、「刺身のつま」の代表である「大根」に含まれている「ジアスターゼ(アミラーゼ)」は、でんぷんの消化を促進し、胸やけ、二日酔い、胃酸過多、胃もたれなどに効果があるとされている。
一般的に酒の肴として出される刺身にはピッタリだ
また、大根には解毒作用がある「ミロシナーゼ」と言う酵素が含まれている
ちなみに、この「ミロシナーゼ」は大根の辛味成分である「アリルイソチオシアネート」を生成するが、この「イソチオシアネート」はそのままの形で大根の中には存在していない
元々、大根中の別々の場所に存在している「グルコシノレート(芥子油配糖体)」と「ミロシナーゼ」が、大根をすりおろしたり、切ったりする事で、細胞が壊れることにより混ざりあい、イソチオシアネートを生成する化学反応を起こして作り出される成分だ
この「グルコシノレート」は根の先端部分ほど含有量が多く、葉に近い部位の約10倍にもなり、また若い大根には多く、成長するにしたがって減少する。そのため、大根の先をおろした物は辛く、若い夏大根は辛いのだ。
良く焼き魚を大根おろしと一緒に食べるが、辛味の風味も然ることながら、このミロシナーゼには発ガン作用を抑える働きもある。
魚の焦げには発ガン物質が含まれている事は良く知られているが、「大根おろしに医者いらず」と言うことわざがある様に庶民は良く分かっていた様だ。
この様に、刺身と言うのは生物(なまもの)である為、解毒成分があるつまと合わせて食べたり、飾りとして刺身と盛るのは理にも適っているのだ。
刺身と言うのは元々「一器一種」と言って一つの器に一種類の魚しか盛らないと言う決まり事があった。
これは数種の魚を盛り付けると、魚の匂いが移り、素材そのものの味を美味しく味わう事ができなくなるからだった。
これが江戸時代末期となる頃、庶民が魚屋へ皿を持って行き、適当に数種の魚を盛りあわせてもらう様になり「盛り合わせ」が一般的になった様だ。
「刺身のつま」と言うのは、その盛り付けを美しく見せると言う役割もあれば、匂い移りを防ぎ、薬効成分により身体へも配慮されている庶民の知恵が沢山含まれていたのだ。
又、色々な刺身を食べる前に、大根のつまを醤油を付けずに食べると、口中に残っている他の魚や料理の味を消し、刺身の味を一層引き立たすという役割をする。
なので、僕の様に醤油に付けて食べると言うのは全く意味が無い
実際、その後、脂の乗ったブリを食べた後にちょっと「つま」を食べて、鯛を食べると確かに味が良く分かる
他の料理を食べた後も同様だった。
添えもの程度の軽い役割しか担っていないものと言う例えで使われる「つま」だが、漢字で当てると「妻」と書かれる。
確かに世の中にはそう思える様な仕事や人も居るかもしれないが、気が付かないだけで大切な役割を果たしている事が多いのでは無いだろうか。
企業の中でもそう言う人に目を向けている人は、先日のK部長の様に人々から愛され、自身も良い仕事が出来る
家庭の中なら家庭円満だろう
音楽でもそうだが、一つ一つの音符を大切にすると言う事は基本であり、オーケストラでもあるか無いか分からない様な楽器が実は重要な役割を担っていたりするし、そう言う配慮があるだけでも自身の演奏のレベルも上がる。
主役だけに目を向けずに周りを大切にする事は、この「刺身のつま」の様にきちんと自分へ還ってくるんだな。と思いながら今朝の刺身を美味しく頂いた