ラヴィリティアの大地 | 『拝啓、夫が捕まりました。』でんどうし奮闘記

『拝啓、夫が捕まりました。』でんどうし奮闘記

鬱で元被害者の妻とつかまった夫の奮闘記。

☆人物紹介はこちらから→

 

【前回まではこちら】

 

「道すがら街に戻って来るヒーラーには全員声をかけました!いつでもクォーリーミルの砦に向かえるよう皆の支度を整えておいてください、後はお願いしますミューヌさん!!」
「わかった、クゥ、君は下の搭乗口でガーロンド会長専用飛空艇に乗って!気をつけて…!」

ラヴィリティア王太子の本当の伴侶であり回復士のクゥクゥ・マリアージュは森の都『グリダニア』にある、カーラインカフェと言われる冒険者ギルドの世話役ミューヌの所へやってきていた。現在ラヴィリティア王国に攻撃を仕掛けてきている帝国『ガレマール』との戦いに、冒険者の新たな回復士派遣の手配の為グリダニア市街まで戻ってきたのだ。クォーリーミルの砦でー際大きな爆音を聞いてもう居ても立っても居られず、一度通過した逗留地『バスカロンドラザーズ』へ取って返した。バスカロの酒場で新人のヒーラーが手にする杖を購入し、酒場の前にあった移動型チョコボの駅『チョコボポーター』で大鳥『チョコボ』を借りて今ここに居る。世話役のミューヌにその場を任せてクゥクゥは更に砂の都へ向かう為、カフェの真下に乗り場がある空の飛行便『飛空艇』で砂の都ウルダハまで急ぎ旅立つのだった。



「ねぇ、ローラ。冒険に行かないの?」
「そうだねぇ…」
「僕たちつまらないよ、冒険に行こうよ」
「…」

最後に口を閉ざしていた背の高い男性で兎のような耳を生やしたヴィエラ族のパステルという男は、ソファに座り湯気を立てる紅茶を口にしながら適当な相槌を打つローラというひとりの冒険者の様子を伺う。ローラは冒険者仲間のララフェル族のひとりに出かける事をせがまれているところだった。その場所は砂の都『ウルダハ』の冒険者居住区『ゴブレットビュート』の一角にある、冒険者が情報や武器防具金銭の一時貸付等を行えることのできる民間団体『フリーカンパニー』の詰所であった。奥行きのあるフリーカンパニーのリビングの、豪華なソファに腰を落ち着けていた彼等だったが、そのリビングに繋がる玄関扉が勢いよくばんっと音を鳴らし突然開いた。その扉を開いたのは国を跨いで森の都グリダニアから砂の都ウルダハまでやってきた回復士クゥクゥ・マリアージュだった。彼女は息を切らして蹌踉(よろ)めきながら、フリーカンパニーの屋敷の中を進む。その弱りきったクゥを先ほどのヴィエラ族のパステルが、大丈夫かと体を支えた。それでもクゥはソファから無言で立ち上がったこのフリーカンパニーのリーダー、ローラの体へ手を伸ばした。クゥは声が掠れながらもローラへ叫んだ

「ローラさん!貴方と見込んでのお願いがあります、どうか力を貸してください、オークが…!ラヴィリティア国とガレマール帝国の戦争に巻き込まれています!森の都グリダニアで出来る限りのヒーラーを集めました、でも、ヒーラーの派遣団をクォーリーミルの砦に無事送り届ける護衛の冒険者がどうしても足りません。どうかローラさんとローラさんの仲間と“その力”を私に貸していただけませんかっ…」

クゥの声は息が切れ切れになりながらも、頭を下げてその言葉をローラという黒髪の冒険者に一息でぶつけた。彼女の肩は自らの呼吸でまだ大きく上下に揺れている。ローラはクゥが身に纏う戦闘服ではないあちこち擦り切れた服と、冒険初心者しか手にしない粗末な上に中央から折れてしまった杖を目を細めて見やった。今ラヴィリティア国とガレマール帝国の戦で戦火に包まれている森の都『グリダニア』から自分の居る砂の都『ウルダハ』は、普通の旅人は日の出ている時間だけでは到底移動は出来ない。ここまでの道程は南や西にジグザグで、例え冒険者といえど難儀な道程だ。噂で冒険者を辞したと聞いていた彼女の移動手段は、彼女を信頼する誰かが手を貸したに違いない。自分の能力に付いてこない武器を掲げながらなんとか魔物を振り払い、その道中すれ違う冒険者達一人一人にきっと声をかけたんだろう。ここまで一体どれだけの人に真摯に、幾度頭を下げて協力を仰いできたのだろう。その頭を下げ続けた当のラヴィリティア国には『人を憂う国』と謳われる国と思えない仕打ちを受けていたともローラは聞いていた。そんな状況になっても彼女は、クゥクゥ・マリアージュという女性は自分の最愛の夫オーク・ラヴィリティアの為にここへ来た。その彼が愛する国の為に彼女は他国に、フリーカンパニーを束ねる自分に助けを請いに来た。汗の流れる首すじに張り付く髪をそのままにしたクゥに、自分の体へ縋りつかれていたローラは何かを心に決めて短く息を吐いた。ローラはクゥを慰めるように、彼女の肩にそっと手を掛ける。クゥの片手を取って自分の胸の、心臓あたりに手を押し付けたローラは口を開いた

「クゥクゥちゃん、落ち着いて。今オークの状況がどうなってるのか僕に詳しく教えて?こんな姿、女の子がするもんじゃないよ全く…本当に罪作りな男だね、オークはさ。」
「…っ! ありがとうございます…!本当にありがとう…ローラさん」
「事情を聞くあいだにカンパニー会員を呼び戻そう、パステル、リンクパールで会員全員を呼び戻してくれ」
「ローラ、会員全員ってどこまで?」
「本当に『全員』だ。ダンジョンに潜ってる奴も全員呼び戻して、これはリーダー命令だと伝えろ」
「了解。こちらパステル、フリーカンパニー会員全員に通達する。全ての会員は今すぐウルダハのフリーカンパニーに戻れ。またダンジョンに潜っている者は討滅次第その足でこれから指定するグリダニア現地に集合しろ、繰り返す、」
「ララ達は暖簾分けした元副リーダーの、フリーカンパニーの奴らに声をかけてきてくれ。それからヒーラーを優先して回してくれと伝えてほしい」
「わかったよローラ!」
「ローラさん、皆さん、本当にありがとう…」
「クゥクゥちゃん、オークも君も僕達の仲間だ。ヒーラーの君たちの事は必ずクォーリーミルまで送り届けるよ。僕に任せてくれ」
「…はい!」

巉巌(ざんがん)の異名を持つローラという冒険者は共に冒険者の心得を学んだ嘗(かつ)ての仲間オークという青年の為、今まさにラヴィリティア王国王太子の身分で巻き込まれているひとりの冒険者の為にフリーカンパニー総出で森の都グリダニアにある砦にクゥと急ぎ集まるのだった。



一時間も経たない間に砂の都ウルダハから腕利きの冒険者達が森の都『グリダニア』南部森林に集まってくる。クォーリーミルの砦に向かう為の『アッパーパス』という一本道の手前で、ラヴィリティア国とガレマール帝国の諍いにより許可が出ていない者を篩(ふる)いにかけるラヴィリティア兵達がクゥ達冒険者を足止めした。その兵の中に顔を見知った者がいると、クゥはハッと目を見張った。またクゥの姿を真っ先に見咎めて小隊長達が大きな声を立てて騒ぎ出す。まるでそこに居る誰もに伝わるようにだ

「そこの長い髪の女、止まれ!お前まだオーク王太子の周りをうろついているのか、我々ラヴィリティアはこの先お前に何も保証しない。後ろの冒険者達もこの先は誰も通さない、ラヴィリティアとガレマールが交戦中だ」
「その言葉、やっぱりそうだ…」
「? どうしたの、クゥクゥちゃん?」
(あの人も、あの人も…皆見覚えがある。まさか、)

共に着いてきてくれたローラの問いかけに、クゥは一度思案をして目線を下げた。が、自分に高圧的な態度を取るラヴィリティア兵へと視線を戻し唇をきゅっと横に引き結んだ。今は些末な事に拘っている場合ではなく、やる事は変わらないのだと自分に言い聞かせてクゥは兵たちへ毅然と告げた

「この先のクォーリーミルの砦ではもう魔物と冒険者の戦いになっています、ラヴィリティア国の兵士もその戦いに巻き込まれてるかもしれない。だからそこを通してください」

 


「そんな虚言に惑わされると思っているのか!立ち入るのが冒険者であっても我々ラヴィリティアと同盟の契を交わしているグリダニア、ウルダハ、リムサ・ロミンサ三国の許可承諾がなければ誰であろうと通すことはできない、即刻立ち去れ!」

大義があっても通さないというラヴィリティア兵達の、何か頑な意思を感じる。国と国との衝突は既に始まっていて今は有事だ。出来るだけ多くの命を救う為に敵味方が方針を変えるそんな最中だ。援軍が来たならば両手放しで喜ぶところが彼等にはそんな素振りが一切感じ取れない、それにクゥもローラも気が付いた。何か、それは確実にクゥひとりだけへ向かっている感情のようだった。苛立ちを隠せない、そんなふうにも見てとれる。クゥ達を追い払う言葉が段々と理由も雑になってきていた。そんな折にクゥがある小隊長へ突然口を開いた

「貴方は私が初めてなじられた日、雹(ひょう)混じりの雨が降った時に居た人ですね?一際大きな雹が兜に当たってその傷を気にしていました」
「…! そんなことは覚えていない…っ!」
「後ろの兵隊さんもさっき私の顔を見て気まずい顔しました、その隣の貴方もです」
「!!」
「私はこの場に居る全員の顔が分かります。思い出しました、全員はっきり覚えています」
「そんなバカな…っ」
「門番の番兵さんがいつも同じ顔ぶれなのだと思っていました、でも違う…貴方達が“私の担当”なんですね、私をこの先に通すなと指示したのはオークですか?」
「違うっ!」
「じゃあ、オーク王太子以外の人がクゥクゥちゃんの事を見張れって指示したことになる訳だよね?クゥクゥちゃん」
「はい、その通りだと思いますローラさん」
「くっ…」

クゥの迷いなき言葉に、その場にいるラヴィリティア兵全員が押し黙った。それを確認するとクゥは彼等にはっきりとこう言った

「私は!私は今、冒険者特殊陸戦隊回復士の隊服を身に着けています。だからここには冒険者の一人として来ました。オーク王太子だけじゃない、彼を護っている貴方がたの多くの仲間も危機にさらされているんです。何度でもお願いします、道を開けてください」
「い、行かせるものか…っ!」
「ハイハイ、分かった!ラヴィリティア兵のキミ達の気持ちは痛いほどよく分かったから退いてくれる?ボクたち本当に時間が無いんだ、このヒーラーの子たちを砦に送り届けてあげないとならない。クゥクゥちゃんはこの僕が守ってあげるよ」
「誰だ、お前は!」
「僕はローラ。でも僕が誰だってこの場にいる誰もが関係が無いし、僕を止める権限も無い。それにこの子たちは君達の王子様を助けに行こうとしてるんだ、国境なき医師と同じ理屈でしょ」
「そんな小理屈がまかり通り分けがなっ…ひっ!」
「僕が、そこを退いてって言ってるんだよ?」

その場の空気が一変する。回復士であるヒーラーのクゥ達に足止めをかけようとするラヴィリティア兵に、ローラと名乗った一人の冒険者と彼に付き従う冒険者仲間が兵達を睨みつける。それはこの神々に愛されし地『エオルゼア』で二つ名を持つ、剣士“巉巌(ざんがん)のローラ”と呼ばれる百戦錬磨の冒険者が殺気を放った瞬間だった。ローラはラヴィリティア国小隊長達を静かに威圧しながらこう言い放った

「それに僕のフリーカンパニーは『零式』部隊だ。このエオルゼアの様々な権限を唯一、有して戦う事の出来る冒険者。邪魔立てしないで貰おう、ヒーラーの彼等を戦地まで送り届けるのが今回の僕等の役目だ」
「零式だと…っ!?蛮神専門の討伐部隊…一人一人が一騎当千と名高い零式の人間だと言うのか…」
「僕は国の許しなんてとっくの昔に貰っているのさ。もう一度言う、そこを退いて。特殊陸戦隊の彼等に何かあるなら僕等が容赦しないよ」
「…っ」
「行きましょう、ローラさん」
「ああ、オークを助けに行こう」

押し黙り、迷いの出たラヴィリティア兵達を掻き分けながらヒーラー派遣団がクォーリーミルの砦へと歩を進め始める。それを護るように零式部隊ローラ達が彼等の脇を固めて、魔物と人の衝突で阿鼻叫喚になっている戦地へと向かった。問題はこの先のずっと奥だ。もう少しだけ持ちこたえてくれと願って止まないクゥクゥ・マリアージュ達。その一行は南部森林に広がる『沈黙の花壇』と呼ばれる、オーク達が居る筈の場所を目指してただひたすらに突き進むのだったー。


(次回に続く)
 

読者登録をすれば更新されたら続きが読める!

フォローしてね!

ぽちっとクリックしてね♪

 

↓他の旅ブログを見る↓

 

 

☆X(※旧ツイッター)

 

☆インスタグラム

 

☆ブログランキングに参加中!↓↓


人気ブログランキング