11.商標権消滅後一年間の他人の登録排除規定の廃止


・ 商4①十三は、商標権が消滅した日から1年を経過していない他人の商標と同類の商標であって、その商標権に係る指定商品等と同類の商品等について使用するものを不登録とする旨規定する。


・ 法は、何人かが使用していた商標はたとえその使用を止めても一年間程度はその商標に化体された信用が残存しているから、出所の混同を防止するべく商4①十三を設けている。

・ もっとも、同号が規定する期間が経過すれば、同不登録事由は解消することから、審査においては、同号が規定する期間の経過を待って登録査定をする運用がなされている。


・ しかしながら、早期の権利取得へのニーズが高まっている状況下において、当該規定により、権利化の遅延という弊害が顕著化している。


・ そこで、早期の権利取得へのニーズに応える観点から、1年間の期間経過を待たずに商標登録を受けることを可能にするため、商4①十三を廃止した。

10B.権利者の救済手続の見直し


・ 特許料の納付期限を徒過してしまった場合には、追納規定(112)と追完規定(112の2)との2段階の救済手続が設けられている。


・ しかしながら、2段階目の救済における「その責めに帰することができない理由」という回復の要件は、極めて厳格に解されており、国際調和の観点から、我が国の救済は実態において厳格すぎるとの指摘を受けている。


・ そこで、世界的なすう勢に鑑みて、救済要件を緩和し、救済期間を拡大した。

10A.出願人の救済手続の見直し


・ 特許法条約(PLT:Patent Law Treaty)とは、各国により異なる国内出願手続の統一等による出願人の負担軽減を図ること、及び一定の要件の下、手続期間の徒過による特許権の失効を回復することで出願人の救済を図ること等を目的として、2000年6月に採択され、2005年4月に発効した国際条約である。


・ 外国語書面出願または外国語特許出願の出願人は、所定の翻訳文提出期間内(36の2②本文、184の4①本文、PCT22)に日本語による翻訳文の提出を義務付けられており、翻訳文の提出がない場合には出願が取下擬制となる(36の2③、184の4③、PCT24)。


・ しかしながら、翻訳文提出期間を徒過した場合について、我が国では一切救済手続が設けられていないことから、救済手続の導入に対して強いニーズが存在している。また、国際調和の観点から、諸外国の制度との不均衡についても指摘を受けている。

・ 一方、PLT未加盟国であっても「指定期間徒過後の救済」や「権利の回復」といったPLTの主な項目に準拠して救済規定を設ける国も多く、手続面での国際的な制度調和が進んでいる。


・ そこで、ユーザーの利便性の向上の観点から、翻訳文提出期間徒過について新たに救済手続を導入することとした。