◆【前田伊織モノガタリ】第2話
20代半ばから、旅のおもしろさにハマった私。
タイの島でのんびり過ごすのが、一番お気に入りでした。
ゆっくりと流れる時間の中、私は小さいころから好きだった編みものをはじめました。
ファンキーでカラフルな編みキノコを編んでは、旅友達にプレゼント。
『私でも、人を笑顔にできるんだ…』
人が苦手だった私にとって、私がしたことで人が喜ぶということが、とってもうれしかった。
編んで、編んで、どんどんプレゼントしました。
まるで、一度喜んでくれた母親に、また笑ってもらいたくて、何度も同じことを繰り返す子供のように。
すると…
「売ってください」
「うちで作品を委託販売しませんか?」
そんな声をいただくようになりました。
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それまで、モノを売って、お金を得るなんて、考えてもいなかった私。
働きに出るという選択肢しか、頭の中に存在しなかった私。
このことをきっかけに、独立・起業の道を歩むことになりました。
前田伊織、28歳のころでした。
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『自分でネットショップを立ち上げてみよう!』
そう思った私は、本屋へ走り、初心者向けのネットショップの本を買い、苦手なパソコンと格闘し続けました。
同時に、個展をやってみない?というお誘いを受け、勇気を出して開催。
そこで、その後10年というショップ経営時代の苦楽を共にするスタッフとの運命的な出会いがありました。
『人が苦手、人なんて信用できない』
そんな私の心のブロックを、身をもって外してくれたスタッフのMAIは、私の人生にとってかけがえのない恩人でもあります。
どんなときにもキュートな笑顔、天真爛漫で優しい性格のMAI。
経験もなく、自己流で始めた私のビジネスに、ずっとずっと、ついてきてくれました。
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『大好きなことを仕事にする』
なにそれ、意味が分からない!
私にできるわけがない!
そんな風に思い込んでいた、それまでの鬱々とした生活が一変。
トントン拍子で2004年に大阪アメリカ村に衣類と雑貨のセレクトショップをオープンしたのです。
すべて自己資金。
内装、チラシ、買い付け、メールのやりとり…できることは、なんでも自分でやりました。
アイディアが次々とわいてくる。
毎日がキラキラと輝き、楽しくて仕方ない!
前田伊織、30歳にして、ようやく、生きていることが楽しいと感じ始めたのです。