食べ物の恨みは恐ろしいと昔からよく言われますが、あれは本当ですね。
お酒のつまみになるものを探して、冷蔵庫の奥の方に隠すように入っていたチョコレートを、僕がついつい全部食べてしまった時のことです。後からそれに気づいた嫁さんが、冷蔵庫を閉めてこちらを振り向き叫び声をあげるまでの映像が、まるでスローモーションのように見えたのを今でもはっきり覚えています。声も低くて獰猛な、TVでよく見るあの感じで。
犬嫁日記#42:『消えたご飯』の巻
その日は仕事が長引いて、終わった時にはすでに23時を回っていました。疲れた身体を引きずりながら、僕は夜の街中を歩いていました。お腹がすいていたので、適当にどこかお店に入ろうと思ったのですが、「もしかして家にご飯の用意がされているかも」と考えた僕は、嫁さんの携帯に電話を入れました。
しかし、この一本の電話が、後に起きる惨劇に繋がることを、僕はまだ知りませんでした。
僕:「まだご飯食べてないんだけど、家に何か食べるものある?」
しかし、この一本の電話が、後に起きる惨劇に繋がることを、僕はまだ知りませんでした。
僕:「まだご飯食べてないんだけど、家に何か食べるものある?」
嫁さん:「えっ、なんにも作ってないよ。そういうことは早く言ってよね」
何時に終わるか分からない仕事だったので、事前に言いようがなかったわけですが、それよりも嫁さんに期待した自分が甘かったようです。
僕:「分かった。じゃあ、どこかで外食して帰るから」
嫁さん:「家に食材はあるよ。帰ってから作って食べれば?」
僕:「疲れてるからそんな気力ないよ。じゃあね」
電話を切ろうとしたのですが、なぜか嫁さんは食い下がります。
嫁さん:「なんで私の言うことが聞けないの?家で食べた方が安全かつ経済的でしょ?」
僕:「だから、疲れてて料理する気力ないって言ってるだろ」
嫁さん:「どこまでも強情だよね、犬は。仕方ないから私がご飯作っておいてあげるよ。だからとっとと帰りなよ」
言いたいことだけ言うと、嫁さんは一方的に電話を切ってしまいました。僕としては、今すぐ何か口にしたい気分だったのですが、ご飯を作ると言われては帰るより他に選択肢がありません。グゥグゥ鳴りつづけるお腹をさすりながら、僕は電車に乗り込みました。
家に帰ると、なにかいつもと雰囲気が違います。電気は点いているのですが、生活音がまるでありません。普段なら、嫁さんがいる時は、音楽をかけているか、TVで海外のニュースを見ているはずです。
これはなにか起きたな。…直感でそう思いました。
急いでリビングに駆け込むと、そこにはなんと、嫁さんがうつ伏せで倒れているではありませんか!僕は驚いて声をかけましたが返事がありません。彼女の右手には、なぜかTVのリモコンが握られたままになっています。そして、近くのローテーブルには、飲みかけのワインがグラスに半分ほど残っていました。彼女の鼻に手をかざすと、息をしていることは分かりました。
僕:「これは…いったい」
次に、僕はキッチンへ行き、炊飯器の蓋を開けてみました。中は空っぽです。焦った僕は周りをよく観察してみました。すると鍋がひとつコンロにかかっており、中に何かが入っているようです。僕は恐る恐る鍋のふたを開けました。
僕:「なんなんだ、これは!!」
そこには、水分を吸ってブヨブヨに膨らんだそうめんのようなものが入っていました。いえ、ぜったいにこれはそうめんです。いやいや、「かつてそうめんだったモノ」と言った方が正しいでしょうか。
僕は、そっと鍋のふたを元に戻し、こう叫びました。
僕:「こんなもん、食えるかーーー!!!」
しかし、その声は健やかに眠り続ける嫁さんには、まるで届きませんでした。
仕方なく、嫁さんの残したワインと、その辺にあったクラッカーをかじっていた僕は、疲れからか睡魔に襲われ、そのまま眠りにつきました。
目を覚ますと、窓の外からまばゆいばかりの陽光が差し込み、昨日の悪夢がまるで嘘のようです。ふと見ると、倒れていたはずの嫁さんはすでにそこにはおらず、どこかに出かけてしまったようです。
お腹がすいていることを思い出した僕は、キッチンに行き、昨日の鍋がそのままになっているのを見つけました。顔をしかめつつ中身を捨てようとふたを取ったその瞬間、僕は驚愕しました。
僕:「く、食ってる!!!」
あの不気味な食べ物がきれいさっぱりなくなっていたのです。
…嫁さんの生態は、まだまだ謎が多いです。
何時に終わるか分からない仕事だったので、事前に言いようがなかったわけですが、それよりも嫁さんに期待した自分が甘かったようです。
僕:「分かった。じゃあ、どこかで外食して帰るから」
嫁さん:「家に食材はあるよ。帰ってから作って食べれば?」
僕:「疲れてるからそんな気力ないよ。じゃあね」
電話を切ろうとしたのですが、なぜか嫁さんは食い下がります。
嫁さん:「なんで私の言うことが聞けないの?家で食べた方が安全かつ経済的でしょ?」
僕:「だから、疲れてて料理する気力ないって言ってるだろ」
嫁さん:「どこまでも強情だよね、犬は。仕方ないから私がご飯作っておいてあげるよ。だからとっとと帰りなよ」
言いたいことだけ言うと、嫁さんは一方的に電話を切ってしまいました。僕としては、今すぐ何か口にしたい気分だったのですが、ご飯を作ると言われては帰るより他に選択肢がありません。グゥグゥ鳴りつづけるお腹をさすりながら、僕は電車に乗り込みました。
家に帰ると、なにかいつもと雰囲気が違います。電気は点いているのですが、生活音がまるでありません。普段なら、嫁さんがいる時は、音楽をかけているか、TVで海外のニュースを見ているはずです。
これはなにか起きたな。…直感でそう思いました。
急いでリビングに駆け込むと、そこにはなんと、嫁さんがうつ伏せで倒れているではありませんか!僕は驚いて声をかけましたが返事がありません。彼女の右手には、なぜかTVのリモコンが握られたままになっています。そして、近くのローテーブルには、飲みかけのワインがグラスに半分ほど残っていました。彼女の鼻に手をかざすと、息をしていることは分かりました。
僕:「これは…いったい」
次に、僕はキッチンへ行き、炊飯器の蓋を開けてみました。中は空っぽです。焦った僕は周りをよく観察してみました。すると鍋がひとつコンロにかかっており、中に何かが入っているようです。僕は恐る恐る鍋のふたを開けました。
僕:「なんなんだ、これは!!」
そこには、水分を吸ってブヨブヨに膨らんだそうめんのようなものが入っていました。いえ、ぜったいにこれはそうめんです。いやいや、「かつてそうめんだったモノ」と言った方が正しいでしょうか。
僕は、そっと鍋のふたを元に戻し、こう叫びました。
僕:「こんなもん、食えるかーーー!!!」
しかし、その声は健やかに眠り続ける嫁さんには、まるで届きませんでした。
仕方なく、嫁さんの残したワインと、その辺にあったクラッカーをかじっていた僕は、疲れからか睡魔に襲われ、そのまま眠りにつきました。
目を覚ますと、窓の外からまばゆいばかりの陽光が差し込み、昨日の悪夢がまるで嘘のようです。ふと見ると、倒れていたはずの嫁さんはすでにそこにはおらず、どこかに出かけてしまったようです。
お腹がすいていることを思い出した僕は、キッチンに行き、昨日の鍋がそのままになっているのを見つけました。顔をしかめつつ中身を捨てようとふたを取ったその瞬間、僕は驚愕しました。
僕:「く、食ってる!!!」
あの不気味な食べ物がきれいさっぱりなくなっていたのです。
…嫁さんの生態は、まだまだ謎が多いです。
苦難は次回へ続きます。犬