刑事モノのドラマでよくあるのが、犯人の足取りを辿っていくというパターン。残された遺留品から、犯人がそこでなにをしていたのかを推理し、刑事たちはジワジワとホシを追いつめていく。ちなみにウチの嫁さんの足取りを調べるのはとても簡単。まず玄関を開けると、そこには重くてキッチンまで運べなかったであろう買い物袋が散乱。廊下には、楽な格好に着替えようと、一枚ずつ脱ぎ散らかしていった服が点在。そして、空腹に耐えかねて食べたであろうパンの食べ残しがテーブルに。予想どおり、嫁さんはベッドで御就寝。遺留品ありすぎ、分かりやすすぎで、刑事もこれではやりがいがありません。
犬嫁日記#39:『動線上のアレや!』の巻
ある日、僕が仕事から帰宅して玄関を開けると、そこには大量のダンボールが積み上がっていました。
僕:「ちょっと、これどうしたの?」
すると奥から嫁さんの声が。
嫁さん:「お水を注文したんだけど、一桁数を書き間違えてたみたい」
それはそれで問題なんですが、僕が玄関から中に入ることができません。
僕:「なんで人が通るところに積み上げるんだよ」
嫁さん:「知らないよ。宅配便のおじさんがどんどん積み上げたんだから」
仕方なく、僕は重たい水を何度もキッチンまで運びました。入りきらない分は、玄関の脇に並べます。疲れて帰ってきたのに、こんな大仕事が待っているとはついていません。
ようやく一仕事終え、ソファーに座ったとたん、僕は悲鳴をあげて飛び上がりました。
僕:「痛てて!なんだこれ?」
見ると、ソファーの上に、嫁さんの使っている金属製の髪どめが、ちょうど僕のお尻の位置にくるように落ちていました。
僕:「危ないじゃないか!ソファーの上にこんなもの置いて!」
嫁さん:「危ないと思ったなら、どかせばいいでしょ」
僕:「気がついた時にはお尻に刺さってたんだよ」
嫁さん:「注意力が足らないんだよ、犬は」
納得いかないまま風呂に入り、気分はサッパリして寝ようとベッドへ。
僕:「あ!なんだこれ?」
勢いよくベッドにダイブした僕の頭に、嫁さんが読んでいたであろうハードカバーの分厚い本のカドが突き刺さったのです。頭にきて文句を言おうとしましたが、嫁さんはすでに寝息を立てています。やり場のない怒りを抱えたまま、夜は更けて行ったのでした。
次の日。
仕事が終わり帰宅した僕は、昨日の教訓を活かして、家の中を注意深く見まわし、足元には特に注意を払いました。自分の家を警戒することになるなんて、思いもよらないこともあるものです。ソファやベッドは大丈夫、椅子にも異常はありません。ホッとしてTVを観ていると、
嫁さん:「ねえ、TV観てるんなら、お風呂を沸かしてよ」
“TVを観てるなら”という理由は気にくわないですが、まあいいでしょう。僕は立ち上がり、風呂場の扉を開け、中に入ろうとしたその瞬間!
僕:「おい!なんで風呂場に剣山が落ちてるんだよ!!」
僕の右足は、ギラリと光る鋭い針の山の、わずか数センチ上のところで止まっていました。僕の声を聞きつけた嫁さんが、風呂場にやって来て中をのぞきこみます。
嫁さん:「ああ、さっきお花の水を取り変えようとしたら、花瓶が汚かったからお風呂場で洗ってたんよ」
僕:「俺を殺す気か!!!」
嫁さんは悪びれもせず、すました顔でこう言いました。
嫁さん:「大げさだなあ。あ、犬は足の裏が弱いもんね。昔、健康サンダルのイボイボの奴ちょっと履いただけで、足の裏が血だらけになってたもんね」
僕:「そういう問題じゃない!俺の動線上にモノを置くな!!」
すると、嫁さんはキョトンとした顔で僕の顔をのぞきこみます。
嫁さん:「ドー…セン…ジョー?」
僕:「急に外人みたいになるな!!もういいわ!」
苦難は次回へ続きます。
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あけましておめでとうございます。本年も「犬嫁日記」をよろしくお願い致します。犬