何年ぶりかにゲームをやった。
ファミコンの「ギャラガ」と「スーパーマリオ3」だ。
僕は最新のゲーム機にはあまり興味がない。
しかし、誕生日に貰ったファミコン交換機が家にあり、
そこまで古い機種になると、かえってやりたいという気持ちになる。
先日中野で大量にファミコンカセットを売ってるお店の前を通りがかり
なんせ大量にカセットがあるものだから
どれを買ったらいいのか散々迷い、
しかし、特にゲームマニアでもないので
どれが面白いのか選び切れず
昔やったことのある無難な2タイトルを買ってきた。
まず「ギャラガ」をやってみた。
昔、学校帰りに友達とスーパー「ヤマナカ」の店内に設置してあるゲームコーナーで
いつもこのゲームをやっていたことを思い出した。
ある日、友達数人で同じように「ギャラガ」をやっていたら
ふたつ年下で、その子のお父さんがヤ○ザだと噂の男の子がひとりで店に入ってきた。
子供とは思えない貫禄のようなものがその子には備わっていた。
ゲームコーナーに緊張が走った。
しかし、次の瞬間その子は満面の笑みを浮かべて
『一緒にゲームやろうよ。』
と僕らの輪の中に入ってきた。
僕らは和やかにゲームを楽しんだ。
しばらくすると急にその子が僕を睨みつけた。
僕は訳がわからず、その子を見た。
その子は睨んだまま僕から目をそらさない。
僕:『な、なに?』
その子:『…なに見てんだよ。』
僕:『え?』
その子:『なに笑って見てんだよ!!』
僕:『え?え?』
最悪の事態になったことは
友達数人の顔色で分かったのだが
こういう場合の対処の仕方が全く分からない。
その子:『お前、名前は?』
僕:『……』
その子:『何校の誰なんだよ!!』
その子の目は野生動物のそれだった。
完全に飲まれていた。が、僕はふたつ年上だし、
何も悪いことはしていない。
できるだけ落ち着いた声でこう言った。
僕:『北校の犬飼だ。』
これで俺の素性は向こうにバレた。この先何があるのか
考えただけで気分は憂鬱になった。しかし、
その子:『…北校の犬飼?じゃ、俺の同級生のお兄ちゃん?』
屈託のない表情に戻ったその子と僕は、そのあと握手して
何事もなかったかのように『ギャラガ』を続けた。
そして僕らは笑って別れた。
ファミコンが家に来てから、ゲームセンターに行くことは減った。
知らない子と話すこともなくなった。