お芝居を観に新国立劇場に行って来ました。


僕は昔から“国立”と聞くと

無意識に身体が硬くなる性質で

そのせいかどうなのか、開場の何分も前に劇場に着いてしまい

その上、何もすることがないものだから

ベンチに座って、格調高い建物と水を湛えた庭をただただ見ておりました。


その内、他のお客さんたちも集まり始め

僕の目の前を行き過ぎていきます。

その人たちは、これまたどことなく品があって


『ええ、私は“国立”には何度も足を運んでおります。』


という顔をしているように見えます。どうしてもそう見えるのです。


『このままでは、なんだか“国立”にふさわしくない人間だぞ俺は。』


そんな卑屈になる必要は全くないのですが

そう思えるんだから仕方がありません。

“国立”にふさわしくなるために、耳から垂れ下がっているiPodを外してしまい

少し姿勢を正してベンチに座り直します。


すると、隣りに座った女の人がおもむろにハンバーガーを取り出し

食べ始めたではありませんか。


『ハンバーガーは“国立”にはふさわしくないのでは?』


と、まるで国立側の人間になったかのような面持ちで

女の人の方を見つめている自分にハッと気付きました。



『そうか!“国立”の気分とはこうやって作られるんだ。』