みなさんは、自分の家にいるのにそこが自分の家じゃないような気がする時ってありませんか?
僕はあります。
例えば、帰宅して嫁さんに「ただいま。」と言ったら
「こんにちは。」と言われた時。
例えば、朝起きて嫁さんに「おはよう。」と言ったら
無言で会釈された時。
犬嫁日記#28:『天の岩戸』の巻
その日、僕は芝居関係者とお酒を飲み、終電を逃した安田ユーシを自宅に泊めることにして連れ帰った。
安田君:「こんな時間に帰って奥さん怒ってるんじゃないですか?」
僕:「大丈夫、怒ってないから。」
安田君:「…ならいいんですけど。心配だなあ。」
自宅マンションの廊下を歩いていくと、僕の家からなにやら騒音がしている。
安田君:「なんですかね、この音?あ、ドライヤーの音ですね。」
僕:「ほんとだ。」
安田君:「うああ、やっぱ怒ってるんちゃいます?奥さん…」
僕:「窓開けてるから音が響いてるだけだよ。」
安田君:「さすが奥さん。ドライヤーの音がなにかを主張してますね…」
部屋に入り、買ってきたお酒を飲みつつ2人で会話。
安田君:「奥さん、部屋に閉じこもったままですねえ。」
僕:「何やってんだろ?顔くらい出せばいいのに。ちょっと言ってくる。」
安田君:「あ、いいです、いいです、もう遅いですし。」
寝室に居るはずの嫁さんに声をかける
僕:「安田君来てるんだから、ちょっとくらい顔見せなよ。」
嫁:「見せられないからここにいるんでしょ?」
僕:「なんで?」
嫁:「さっきメールしたでしょ?見てないの?」
携帯を取り出しメールチェックすると、そこには嫁さんからこんな文章が送られている
“閉じ込められた”
僕:「…意味分かんないんだけど。」
嫁:「ドアノブが壊れたの。」
僕:「えっ?!」
ドアノブをまわしてみるが、ガチャガチャと音がするだけでドアが開かない。
僕:「ええっ?なんでまたこんなことに?!」
嫁:「知らないでしょ!急に壊れたんだから。早くなんとかしてよ!」
それからしばらくドアノブと格闘を続け、ようやく寝室のドアが開く。
嫁:「安田さん、こんばんは。わたしは明日が早いので失礼します。」
それだけ言い残し、今開いたばかりの寝室へ再び姿を消す嫁さん
安田:「閉じ込められていても、平然とドライヤーで髪を乾かしてたんですなー。さすが犬嫁。」
数日後
僕:「ただいまー。」
嫁:「ちょっと。また閉じ込められたからここを開けてよ。」
僕:「またやったの?」
嫁:「私が壊したみたいに言うのやめてよね!」
ドアノブと再び格闘する僕。その間数10分。
僕:「やっと開いた。あのさあ、今後は…」
そこにはベッドでスヤスヤと寝息を立てている嫁さんの姿があった
苦難は次回へ続きます。犬