京都に来てから16日が経過。


メンバーであるエディの家に同居しているのであるが

エディの留守中にこの家の主として振る舞わねばならないことが2回あった。


一度めは、エディが購入したパソコンとHDDプレイヤーを電気屋さんが届けに来た時。

ダンボールの箱を置いて帰るものと思い込んでいたら

電気屋さん二人組がどかどか家に入ってきて、TVとプレイヤーの配線をつなぎ始めたのだ。

設置してくれてるのを帰らせる理由が見当たらないのでそのままやってもらっていると


電気屋さん:「山本様…あの…すいません…」


「ああ、今自分は山本なんだった。」と思いながら


僕:「はい。」

電気屋さん:「ここのご住所の郵便番号を教えていただけますか?」

僕:「えっ、…郵便番号ですか?…なんでまた?」

電気屋さん:「TVのチャンネル設定に必要でして…」

僕:「あ、なるほどね。…ええと、郵便番号ですか…ちょっと待ってくださいよ。」


別に焦る必要はないのだが

インターホンで「山本様ですか?」と聞かれ「はい。」と一度答えていたので

いまさら代理人とは言えない空気になっていた。

家の中に郵便番号が書いた封筒などがないか探してみるが

都合良くは見つからない。


僕:「…忘れちゃいました。」

電気屋:「…」


いかん、不信に思われている。なんとかこの場をやり過ごそう。

電気屋さんから少し離れて携帯電話でエディに連絡を取る。


僕:「もしもし、あのさ、ここのマンションの郵便番号が必要なんだけど…」


エディ:「郵便番号?…忘れたわ!」



二度目は今日。

大阪ガスが3年ごとに行っているガス漏れ調査に来るから立ち会ってくれと

留守中のエディから電話で頼まれる。

現れた大阪ガスの調査員は開口一番


大阪ガス:「山本様ご本人でお間違いないですか?」


ときた。


僕:「ええ、もちろん。」


と答える。

一通りガスについて説明を受けたあと、調査員はあることに気付く。


大阪ガス:「山本様、ガス漏れ警報器が期限切れです。新しいものに是非付け替えてください。」

僕:「あ、じゃまた連絡するのでその時に…」

大阪ガス:「できましたら今お約束して頂けると助かるんですが…」

僕:「即答できないんでまた今度。」

大阪ガス:「なにか理由でもございますか?」

僕:「休みが不定期なんで…いつ来てもらったらいいのか分からないし…」

大阪ガス:「でもすぐに取り付けないと万一の時がありますから、是非当社製品の『ぴこぴこを』…」


人の家のガス警報器のめんどうまで見切れないので

なんとか調査員を黙らせる。


大阪ガス:「最後にここにサインをいただけますか?」


ほっとした僕は大きな字で『犬』と書いてしまってからあわててその左横に『山』を書き

『山犬』になったサインを調査員が覗き込もうとしたのを『犬』を『本』に無理やりつなげて直す。



…大丈夫、ばれてない。