結婚してからしばらくは、嫁さんから「犬飼さん」と呼ばれていた僕ですが、

最近は「犬」と呼ばれるようになりました。


犬嫁日記#7:「車折神社」の巻


京都に車折神社(くるまざきじんじゃ)という所があります。

(※鎌倉時代初期の頃、当時の天皇の御車が石に乗り上げ、轅(かなえ)が折れたとのことから

車折大明神の号と正一位を贈られたという由緒ある神社 商売繁盛、芸能の神)

僕は昔、京都で劇団に所属していた頃、演技で悩みを抱えていて、

近くにあったこの神社にお参りに行った事があります。すると次の公演で、

僕の演技はお客さんに受け入れられ、不思議なくらい楽に演じることができたのです。


話は変って1年半前。僕は小林賢太郎プロデュース公演「paper runner」の東京公演初日に

台詞を忘れました。

2ページに渡る長台詞の途中で頭が真っ白になり、1分以上固まってしまいました。

こんなことは今までなかっただけに、その日楽屋で出演者に謝っているときもまったく

現実感がありませんでした。

帰宅して玄関を開けるとそこには嫁さんの顔がありました。

僕:「ただいま…」

嫁:「どうしたの?顔が青いよ。」

僕:「うん。今日は大変なことをしてしまった。」

嫁:「何があったの?」

僕:「うん、実はさ…」

次の瞬間、涙がこみ上げてきて僕はその場に泣き崩れてしまいました。

「えーん」と声をあげて泣く僕に、嫁さんはびっくりしてしまったようです。


次の日は愚図ついた天気でした。僕は楽屋に入り、衣装のチェックをしていました。

開場まであと数分という時、携帯電話が鳴りました。

嫁:「今から劇場の外に出てきて。」

僕:「もうすぐ開場だからあとにして欲しいんだけど」

嫁:「走ってくればすぐでしょ!すぐ来てよ、渡すものがあるから!」

外に出ると、嫁さんが雨の中立っていました。近寄るなり僕に何かを手渡して

嫁:「落ち着いてやりなよ。」

見るとお守りでした。(これを渡すために来たのか。)しかし、よく見るとそのお守りには

「車折神社」と書いてあります。

僕:「お前、これ…」

嫁:「うん、朝一番の新幹線で京都に行ってきた。ご利益があったんでしょ?

じゃあね。」


                                嫁さんはたまにすごい事をします。