ある夜の散歩中向かいから犬がきて、
案の定うちの犬は吠えた。
吠え続けてた。
向こうの犬は素知らぬ顔。
気にすることもなく用をたす。
うちの犬は吠え続けてる。
向こうの犬が見えなくなるまで吠えて、
最後にフンっ!と鼻を鳴らした。
それはなんとも誇らしげに。
私は「負け犬の遠吠えだよ、勝ってないよ(笑)」と声をかけた。
その時に気がついた。
その誇らしげな姿を見て、あ、違う、勝ったんだ
自分に。
うちの犬は吠え続けることで自分自身に勝ったんだ。
周りから見たらただの負け犬の遠吠えって言われるけど、
吠えることさえやめたらもうほんとに何もなくなっちゃうんだ。
負け犬だって言われても吠え続ける。
そして誇らしげに鼻を鳴らす。
俺は俺に勝った。と言わんばかりに。
誰になんて思われようが吠え続けることで
自分を奮い立たせる。
私だって負け犬だ。
みんなができることができなかった。
だから逃げた。
でも、みんなができないことが私にできるんだって
そう信じて私は吠え続けてやるんだ。
それが負け犬の遠吠えだっていい。