今日…

病院でセンセーの奥さんと子供を見てしまいました。


センセーのおじいちゃんが入院したから。


その話を聞いてから、いつかは見てしまうんぢゃないかと思っていました。


今日の昼、ふと顔を上げると…

センセーのお母さんが歩いていました。


そして隣には赤ちゃんを抱いた若い女の人。


その瞬間、アタシは動けませんでした。



息さえできませんでした。


センセーのお母さんと並んで歩く奥さん。


それは間違いなく『家族』でした。



そして思い知らされました。

アタシは『他人』だと。


いつもはそこにセンセーもいて、1つの『家族』だという事を。



センセーの子供はかわいくて…やっぱりとてもかわいくて。。


心臓を握り潰されているみたいに苦しかった。



センセー。

ねぇ、センセー。


アタシはやっぱり『他人』だね。


自分のしている事の重さに潰されそうになったよ。



アタシにこの人達の幸せを奪う権利はない。


センセーの赤ちゃんの顔が忘れられない。


あの子の顔が浮かんで苦しいよ。



見たくなかった。

今更見たくなんかなかった。



アタシ達は、あと10日くらいしたら最後のデートをします。


そしたら、サヨナラします。


そぅ決めたのに。

もぅカウントダウンは始まってるのに。



会いたくなんかなかった。

どれくらい時間が経ったかは自分でもよく分かりませんでした。


誰かに体を起こされて気が付きました。
センセーでした。


センセーが目の前にいる。
アタシ、楽になれたんかな。


そうボンヤリ思いました。


するとセンセーはアタシを強く強く抱き締めました。
息は切れ、急いで来てくれた事が分かりました。


これは現実なんや。


センセーはアタシを抱き締めたまま
医者よかった。ホンマによかった…


つぶやくように何度も何度も言っていました。

医者飲み物買って来る。


アタシから離れそう言って部屋を出て行きました。

帰ってきて飲み物を台の上に置きました。

医者ちょっとタバコ吸ってくるわ。

そう言ってまた部屋を出ようとし、途中で座り込んでしまいました。

背中を向けていたけど、泣いているようでした。


アタシに会っている間タバコなんて吸った事なんてなかったのに、何度かタバコを吸いに外に出て行きました。



少し落ち着いて戻って来たセンセーはアタシの前に座り、また強く抱き締めました。

そして、アタシを平手で殴りました。

怒りと、悲しみが混ざったような表情で何度もアタシを殴りました。

痛くて怖くて…アタシは震えが止まりませんでした。


でも、センセーがどういう気持ちでアタシを殴っているかがよく分かったのでアタシはじっと耐えました。


また抱き締め『でもよかった…』
そうつぶやき、アタシの腕の傷を押さえてくれました。


医者怒っとるよ!


そう言いながら両手を広げ、腕の中に呼んでくれました。

アタシはまた、自分からその中に入ってはいけませんでした。

それを感じ取ったセンセーは、アタシを引き寄せ抱き締めてくれました。

その瞬間、涙が止まらなくなりました。


あたしごめんなさい。
医者悪いと思っとる?
あたしセンセーに対しては思うよ。また迷惑かけて巻き込んで、ホンマに悪いなって思う。でも正直、、また楽になれんかったって思うよ。アタシはセンセーが一緒におってくれるって言ったからまた頑張ろうって思えた。今は苦しいけど、少しずつ楽になるって信じようと思った。でも違った。どんどん苦しくなるし、ツライ事が起きる。あの日、アタシがメッチャ電話してしまった日。我慢して我慢してその結果だったんよ。電話したらアカンって思ってるけど、それでもあんなにかけてしまったのはよっぽどの事やって分かってくれると思った。でも一言目に出たのはメッチャ冷たい言葉だった。あの瞬間、もうこれ以上は耐えれんって思った。
医者確かにあの時怒ったよ。でもそれは「家族との大事な時間を邪魔するな」って意味じゃない。あんな風に連絡されたら、もう電話さえできなくなる。そう思ったから怒ったんよ。家の事やから詳しくは言わんケド、俺今家から一歩も出れんような状態になっとる。それでもお前が大事やから無理してこうやって来たんよ。その気持ちは分かるやろ?


言葉が出ませんでした。


医者正直俺もツライよ。お前がこんなんして心が痛いよ。限界や。でもお前の方がつらくてしんどいって分かっとるから、やから言わずに我慢しとるよ!

あたし分かってるよ。センセーがツライの我慢して言わずにいてくれてるのに、アタシは全然我慢できてない。それがツライ。アタシがいる限り、センセーにどんどん迷惑がかかる。もうこれ以上センセーにうんざりされたくない。
医者…よく話したな。頑張った。泣いていいよ。イッパイ泣け。


センセーがそう言ってくれたから、アタシは泣きじゃくりました。
声を出して子供みたいに泣きました。


医者俺はお前に前向いてほしいんよ。
あたしそれは1人でって事やろ?
医者…そうや。
あたしやっぱりそうやん。アタシはもうそれが聞きたくないからいなくなりたいのに。


アタシはその場から逃げました。

走って階段を下りたけど、センセーにつかまりました。


医者まだ話の途中や!
あたし嫌だ。もう聞きたくない。これ以上ツライ思いしたくない。許して。
医者許さん。


結局連れ戻されました。


医者ちゃんと話する気あるの?次逃げたらもう追いかけんからな。


アタシは小さく頷きました。


医者お前いつも言うてるやん。『ズットは続かない、いつかは終わる関係や』って。その日が来たら、お前はどうするつもりやったん?


きっとアタシの気持ちは伝わらない。
何も言えませんでした。

医者俺はズットそれが不安だった…
あたしせっかくまた一緒におれると思ったから頑張れてたのに。また1人にするなら引き止めんといてよ。
医者アホ。そのつもりなら今ここに来てないわ。お前は必死に俺に助けを求めてるやろ?
あたし…うん。
医者どーでもよかったら「勝手にしろ」ってほっとくわ。でもどーでもよくないからここにおるやん。1人にしてないやろ?


その言葉が本当にガツンと心に届きました。

あたしアタシを1人にせんといて。
医者また言うてる。せんって言ってるやろ。


そう言って優しく抱き締めてくれました。
そしてチューをくれました。


あんなに孤独だったアタシの心が、嘘みたいに晴れていきました。
と同時に、心が痛みました。


センセーは今日、どういう理由をつけて家を出てきたんかな。
やっぱりアタシが、センセーの幸せを壊してしまっているんかな。


いつまでもこのままではいられない。


ズットは一緒にいられないって分かってるのに、、

どうしてアタシの心はセンセーぢゃないとまともに動いてくれないんやろう。。




ゴールデンウィーク。


アタシにとってはセンセーに会えないツライツライ日々でした。

必死で我慢していました。

でも、とうとう気持ちが壊れてしまいました。


センセーと連絡が取れない事にすごい不安を感じました。


センセーに何かあったかも。
そういう気持ちも大きくなって、アタシは電話していまいました。


何度も。


いけないと思ったケド、不安で、怖くて。
自分で自分の行動を止められませんでした。


何度目かの電話でセンセーは電話に出ました。

医者何っ?!


そう言ったセンセーの声は、とても冷たく、、とても怒っていました。


腰がくだけそうでした。
もうアタシは嫌われた。


センセーにとったら家族との大事な時間。
アタシはそれに耐えられなかった。


今度こそ、センセーはアタシを許してくれない。
そんな世界で生きていくのはツライ。


もう限界。

消えたい。


嫌われた事を確信する前に消える。


メールこのメールに気付いたら電話下さい。


最後の望みでした。
最期にセンセーの声が聞きたい。


センセーからの電話。
あたしもしもし。
医者もしもし。


いつものセンセーの声とは少し違いました。

あたしゴメンね、センセー。ホンマに色々すいませんでした。
医者ゴメンな、ホンマに。
あたし最後に1つお願いしていいですか?今すぐ消えるから、もう迷惑かけんから、アタシの事嫌いにならないで…
医者ゴメン。ホンマに…。俺仕事辞めて遠くに行くから。そしたらお前は普通に生きていけるやろ?
あたしアカン!センセーは辞めたらアカン。アタシはもうセンセーを失いたくない。センセーが仕事辞めるならなおさらアタシは今すぐ消えたい。もうこれ以上の絶望感、味わいたくない。センセー、もう一度だけ、アタシの名前呼んでください。
医者…まい…
あたしありがとう。ホンマにありがとう。このまま死ねたらアタシは幸せやで。ばいばい、センセー。
医者アカン!!アカンで!!
あたしバイバイ。


そう言ってアタシは電話を切りました。
このまま、センセーの声が耳に残ったままアタシは楽になりたい。


そしてまた、自分の体に傷をつけていました。

痛みはありませんでした。

迷いもありませんでした。


血がどんどん出て止まらなくなり、だんだん思考が止まっていくのが分かりました。


薄れていく意識の中でセンセーにメールを送りました。


メール電話くれてありがとう。アタシ幸せだったよ。センセーと出会ってからの1年半が人生で1番幸せだった。嫌われてなくてヨカッタ。センセーは病院辞めないでね。センセーが辞めてもアタシは変わらんから。余計つらくなるだけやから。アタシはセンセーを失う事から逃げたいんです。分かって下さい。最後に1つ聞いていい?正直に答えてね。センセーは幸せでしたか?アタシの事、少しは愛してくれていましたか?
メール好きやし、大事に決まってるやん。お前は絶対幸せになれるから。
メールゴメンね、センセー。もう遅いよ。血が止まらん。でもよかった。言っとくけど、アタシのほうが好きやったから。泣いてばかりやったけど、思い出す時は笑顔のかわいいアタシを思い出してね。