水島御大の『あぶさん』がついに連載終了するそうな。『ドカベン』がオールスター戦みたいになっているので、そっちへの参戦への兼ね合いなのかもしれないがどちらにしろ長いことご苦労さんという感じだ。
今の若い漫画読みの人は、5巻くらいでマンガが終わると「打ち切られた」という判断を下すことが多いようだ。まあ、少年誌の『ワンピース』があの異常な長期連載だし、ほかも基本的に長くてあたりまえだからねぇ。
とはいえ、俺としては青年漫画などは5巻、10巻くらいの刻みでまとめてくれる方が読みやすいし話もまとまっててよい。例えば『行け! 稲中卓球部』でギャグ漫画家として売れた古谷実などは、その後、芸風を変え、人の業やら心理的に深い部分をえぐるようなマンガを連続して発表し続けている。長さはだいたい単行本で5巻くらい。商業出版的には短い長さだと思う。しかし、これが、この作風には丁度よい。むしろ”コミックCue”にプラットフォーム移せばって勢いだ。
今度ハリウッドで映画化される岩明均の『寄生獣』。これも全10巻。今の漫画読みからするときっと物足りない長さかもしれない。だけど、これがベストの長さ。この漫画の強みは、寄生生物であるミギーと共生していくうちに、主人公が人から人でなくなっていくアンバランスさを描いているところだと思う。後は、最後は割と風呂敷を大きく広げかけるのだけれど、それを無理やりたたむのではなく、ここで止めておこうと収める潔さがよい。10巻という長さだから成立する傑作だと思いまする。
スポーツ漫画でキレが良いといえば、小林まことの『柔道部物語』が全11巻でまとまりがいい。真面目な主人公が柔道の才能に目覚め強くなるという、今でいう『はじめの一歩』的話なんだが、一歩はいつまでたっても話が進まねえ、というか、世界チャンピオンにすると連載終わるけども長すぎる。その点この漫画はリズムが非常に良い。柔道という組合いが描写のメインながらも、スピード感があるし、アングルも素晴らしい。ちなみに『はじめの一歩』の鷹村さんの元ネタは、これに出てくる先輩キャラの鷲尾さんだったりする。小林まことは、初期の『スラムダンク』にもかなり影響が出てるし(吉田聡の影響もすごいが)、テンポの良さと画の安定感が素晴らしいベテランだといえよう。『1・2の三四郎』も10巻くらいなので読んでみるとよいですよ。
大友克洋『AKIRA』なんかも判は大きいけども、6巻と短い。あのバカみたいな画力と書き込みは6巻読めばお腹いっぱいですわな。『AKIRA』は、まあ、近未来の超能力モノなんだけども、とにかくビルや都市、瓦礫の描写が異常に細かい。個人的には2巻と4巻あたりが好きだ。作者本人が監督したアニメ映画も手描きアニメの最高峰なのでぜひ観てみるとよい、というか観なさい。
漫画も出版社によって、引っ張るところと、うまくまとめて次に切り替えるところがある。個人的には講談社あたりは、連載もわりと売れそうになさそうなのをアグレッシブに始めるし、止める時も止め時を誤らないかもしれない。まあ、場合によるけど。少なくとも、どこぞの出版社みたいに、作品の色がなくなるほど絞りとるマネはしないと思う。
──まあ、長く続けても楽しい漫画もあるけれども、どうしたって無理があるだろうというほど引っ張ってる漫画も多いよねぇというお話。とくに少年漫画はね。
以上。
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