10月も半ばを過ぎた頃から、ほんの何週間か前までの気候なんて忘れ去られるぐらい急に冷え込み出して、ヒートテックなるものに興味をそそられながらも、何のポリシーか知らんがユニクロにだけは一生涯手を出さないと決めていて、私の中でまだ許せる無印良品でヒートテックもどきの商品を見かけるも、高くて買わずにいた。
 そんな中、昨日私の分のヒートテックのパッチを買ってきた。妻はインナーに関してはユニクロに何の偏見もない。
 早速着てみてスピードスケートの清水の物真似をして喜んで見せた。
 もう一着欲しいね、あと上も、なんて嬉々と言っている自分に驚いた。
 私のポリシーなんてたかがそんなものだ。
 本棚を見ればその人が分かる、なんて言うけれども、逆に本棚を見られる側からしたら、言い訳をしたくなる本が何冊かはあるはずである。
 私の本棚を誰かに見られる可能性は今のところ皆無に等しいが、それでも一貫性或いは多様性のある本棚の中にぽつんと恥ずかしい本が何冊か並んでいる。
 自分の部屋でオナニーをして賢者モードに突入したとき、ふと我に返って守護霊様が見ていたらどうしよう、というふうな、自意識過剰な羞恥心、特定される誰かではない他者の目を気にするネガティブな感覚は、きっと誰しもが持っていると思っている。

 昨日淀屋橋のブックファーストで雑誌や漫画を物色していると、たまたまハローバイバイ関暁夫の「都市伝説3」が発売されているのを見付けた。
 もともと私はやりすぎコージーの都市伝説スペシャルが好きで、その中でもハローバイバイ関暁夫の話を毎回楽しみにしていて、実は関の都市伝説シリーズは1巻も2巻も持っている。
 ハッキリ言って、誰かに薦められる訳でも、自分の違う一面をアピール出来る訳でもない、サブカルチャーの骨頂な代物、というのは本のタイトルだけでも察っせられるのであって、いや、まあ、その、何と言うかこう、ちょっと好きなんですよ、めっちゃじゃないんですよ、エヘヘ、と、本棚に並んでいると言い訳をしたくなる本、が、まさにこれである。
 しかしながら、例えばベッドの下のエロ本ならまだ目的はあって、「こういうの、読むんだ~」が理解し易いが、ハローバイバイ関暁夫の「都市伝説」、しかも3!なら「こ、こういうの、読むんだ……」と、残念がられるのが目に浮かぶ。言い訳をするとしても、もはや私に対しての残念感は取り返しがつかない。

 さんざん迷った挙げ句、結局購入したが、みんなには内緒にして欲しい。私は誰かに本棚を見られたとき、こう言い訳をすると決めているのだから。

「い、いや、友達にもらってん。そ、そうそう、3冊とも。信じるか信じないかはあなた次第。な、なんてね(恥)」
 2ちゃんのまとめサイトで面白い漫画の数あるひとつとして挙げられていて、Amazonでレビューを見たりググったりすることもなくただ「刻刻」という作品名だけは頭の片隅に残っていて、昨日たまたま立ち寄った本屋で平積みされているのを見付けた。1巻の帯に水木しげる先生が、2巻の帯には伊坂幸太郎氏がそれぞれ推薦文を書いていた。
 私は漫画を買うとき、たまに気分によってジャケ買いをすることはあっても帯買いをすることはない。帯というのは推薦文の内容云々よりも誰が推薦文を書いているかというのが重要で、例えば重松清ならどうせ感動系かと思ってしまうし、ホリエモンなら内容は関係なく何かしらの利益が絡んでそうと疑ってしまうし、千原ジュニアや品川なんか名前を見ただけで商品価値がぐんと下がってしまう。これはあくまで主観なのであって、要するに私にとって誰が推薦文を書いているかなんてほとんど購入意欲のマイナスに過ぎないが、今回ばかりは、えっ何?水木しげると伊坂幸太郎って、妖怪系ミステリー?と興味が沸いてついつい帯買いをしてしまった。
 まあ何の根拠もなくほぼ間違いなく面白いだろうと3巻中2巻を買い、ミスタードーナツでカフェオレを飲みながら一気に読んだが、カフェオレのおかわりもせずに急いで3巻を買いに行った。月並みな表現で申し訳ないが、とにかく続きが気になった、そして面白かった。
さて、あらすじをただ説明するのは簡単だが、あらすじを説明せずにどう面白かったのかを表現するに、福山雅治の物真似で、あの低くて深い、けれどもどこか軽薄な声で「実に面白い」と言うのが、妙にしっくりくる。
もちろん「刻刻」の内容が福山雅治ほどまでに薄っぺらいという意味ではないが、水木しげると伊坂幸太郎が推薦文を書いているということからも察せられるように、何かしらのメッセージがあってエネルギーを使うような文学的な漫画でもなければ、涙を流すわけでも大笑いするわけでもない。ただ物語として純粋に「実に面白い」と唸るように言うのがぴったりな気がするのだ。
これが中尾彬が「実に面白いね~」なんて言ったところで全然胡散臭くて駄目で、福山雅治ぐらいの説得力がちょうど良いのである。