血の音楽〜日本語のシラブル2
じゃあここで童謡「七つの子」を唄ってみよう。
「♪かーらーすー、なぜなくのー」
次に、これをカッコつけて不良っぽく唄ってみよう。
「♪きゃーりゃあーしゅうー、にゃじぇにゃくにゃうー」
…なぜ、こうなるのか?
これは精一杯、日本語を外国語っぽく発音した結果なんだ。
「かきくけこ」は「きゃききゅけきょ」に。
「さしすせそ」は「しゃししゅせしょ」に。
「たちつてと」は「ちゃちちゅちぇちょ」に。
(これ下手にやると赤ちゃん言葉になってしまうので注意!)
これを意図的にやったのが矢沢永吉さん率いるキャロルだった。
ジョニー大倉さんの自伝的著書「キャロル夜明け前」によると、自分の書いた歌詞を矢沢さんに唄ってもらうとき、ぜんぶカタカナに書き直してイントネーションを伝えたという。そんな日本語を英語っぽく聴かせるようと工夫する光景がはっきり描かれている。
おそらく『ルイジアンナ』の「いつでも 男を ダメにする」は
「イッツーデイーンモ オーチョコーウォ デャメニスウルー」
と表記されたのだろう。
シラブル面からみても「でも」が「デイーンモ」だったり、「する」が「スウルー」だったり、日本独自のコブシとは違う音節の加え方をしている。
これらは革新的だった。あっさりした日本語の響きが一転してネバリ強くなる。
こうすることで音に滞在する時間が長くなり、音数が少なくても唄い方でリズムに躍動感が出せるんだ。
しかし長身でルックスのいい矢沢さんがこれを真剣に唄う姿はシャレにならないほどカッコよかった。この日本語の乗せ方は日本ロック文化としてサザンオールスターズやBOOWYやBZに受け継がれていくわけだけどさ、もし矢沢さんじゃなかったら文化になってたかどうか怪しいものだよね。
つづく