マルチ体験「人工ダイヤ」
俺の地元は千葉の田舎だったからヤンキーも沢山いた。中学生の頃なんか男子の8割はヤンキーだった。俺は違ったけどね。
20歳くらいのとき、そんなヤンキーの中心人物だった友人から電話がかかってきた。
「あのさ、明さぁ、金儲けしない?」
もう危険な香りがするわけよ。この超ヤンキーな男が言う金儲けって、まさかドラッグ関係かな?って。俺はビビりまくって
「それヤバイ仕事?だったら絶対イヤだよー」って言ったら、
「いや、全然そんなんじゃないからさ、一度話を聴きにこいよ」って言うわけ。
なんだかんだで結局、俺は西船橋駅前の純喫茶に呼び出されたんだ。気は進まなかったけど、断るのも怖いからね。
店内は満席でさぁ、そのヤンキーがど真ん中の席から「こっちこっち!」って手招きしてんの。ヤンキーの隣には年輩のヤクザみたいなオッサンが座ってて、まさに悪夢だった。
席につくとオッサンが言うのよ。
「君が明くんだね。この度はわざわざお越しくださいまして~」って、バカ丁寧に挨拶するんだけど、これがまた本物感があって怖いんだ。
「で、どのような話でしょう?」俺も相手を怒らせないように慎重に訊いたよ。
するとヤクザのオッサンは一冊のファイルを取り出して説明を始めたんだ。
なんでも『JPダイヤモンド』とかいう人工ダイヤモンドを買って、さらにこれを友達に流通すれば毎月30万円くらい、寝てても儲けられるって話だった。
「明くんは音楽関係にたくさん友人がいるだろうから、すぐにトップになれるよ」って。
「ちょっと待って下さい。これネズミ講ですか?」
俺はビビりながら言ったよ。
ヤクザのオッサンは一瞬顔を曇らせて
「いや違うよ。マージンの率が何パーセントだから、うちはネズミ講なんかじゃない。ネズミ講だったら捕まっちゃうからね。ふはは!」と笑った。
いや、マージン率がどうあれシステムは完全にネズミ講じゃんか!
「僕は、そんなにお金に困ってませんし、こんなことで友達を失いたくありませんので」と言って逃げるように店を出た。
慌ててヤンキーも出てきて
「明、ごめんな。俺も本当はネズミ講なんてやりたくないんだけどさ、先輩には逆らえなくてさ」と謝ってくれた。
なんかちょっと、かわいそうだったな。
おわり
20歳くらいのとき、そんなヤンキーの中心人物だった友人から電話がかかってきた。
「あのさ、明さぁ、金儲けしない?」
もう危険な香りがするわけよ。この超ヤンキーな男が言う金儲けって、まさかドラッグ関係かな?って。俺はビビりまくって
「それヤバイ仕事?だったら絶対イヤだよー」って言ったら、
「いや、全然そんなんじゃないからさ、一度話を聴きにこいよ」って言うわけ。
なんだかんだで結局、俺は西船橋駅前の純喫茶に呼び出されたんだ。気は進まなかったけど、断るのも怖いからね。
店内は満席でさぁ、そのヤンキーがど真ん中の席から「こっちこっち!」って手招きしてんの。ヤンキーの隣には年輩のヤクザみたいなオッサンが座ってて、まさに悪夢だった。
席につくとオッサンが言うのよ。
「君が明くんだね。この度はわざわざお越しくださいまして~」って、バカ丁寧に挨拶するんだけど、これがまた本物感があって怖いんだ。
「で、どのような話でしょう?」俺も相手を怒らせないように慎重に訊いたよ。
するとヤクザのオッサンは一冊のファイルを取り出して説明を始めたんだ。
なんでも『JPダイヤモンド』とかいう人工ダイヤモンドを買って、さらにこれを友達に流通すれば毎月30万円くらい、寝てても儲けられるって話だった。
「明くんは音楽関係にたくさん友人がいるだろうから、すぐにトップになれるよ」って。
「ちょっと待って下さい。これネズミ講ですか?」
俺はビビりながら言ったよ。
ヤクザのオッサンは一瞬顔を曇らせて
「いや違うよ。マージンの率が何パーセントだから、うちはネズミ講なんかじゃない。ネズミ講だったら捕まっちゃうからね。ふはは!」と笑った。
いや、マージン率がどうあれシステムは完全にネズミ講じゃんか!
「僕は、そんなにお金に困ってませんし、こんなことで友達を失いたくありませんので」と言って逃げるように店を出た。
慌ててヤンキーも出てきて
「明、ごめんな。俺も本当はネズミ講なんてやりたくないんだけどさ、先輩には逆らえなくてさ」と謝ってくれた。
なんかちょっと、かわいそうだったな。
おわり