小さなことから行動力を培う
何かを成し遂げた人の特徴の一つに力強い行動力があるのは、皆が認めることだと思います。この力強い行動力を培うには、どのような方法があるのかをテーマに考察していこうと考えます。
■人は、何に後悔するのか
「人生で最も後悔していること」を老人に聞いたところ70%の人が「挑戦や行動をしなかった」ことだと回答したアンケートの結果があります。
人間は、自分が選択し行動した結果がたとえ悪くても内因と考えるため受容度が上がり後悔としての印象が低くなる一方で挑戦や行動しなかった結果が外因と考えるため受容度が下がり印象が強く残るためこのようなアンケートの結果になるのかもしれません。実際に大きなリスクを伴う挑戦や行動は、事前に慎重な対応が必要であることから行動しない方が結果的に良い場合もあり一概にどちらが良いか判断ができません。
しかし現状をより良くする方法が分かっているリスクの低い課題や日々の小さな課題について別の欲求を優先したり、考え過ぎや慎重になり過ぎたり、怠けるための言い訳を探したり、やる気や体がついていかなかったりで先延ばしし問題が起き後悔した経験は、あると思います。少なくともリスクの低い課題や日々の小さな課題は、自分が選択し行動したほうが後で問題や後悔を回避できるので良さそうなのですがアンケート結果から実際は、行動できずに後悔することが少なくないと考えられます。
■行動できない要因
行動は、動機を原因とし動機は、知覚、感情、欲求、思考、判断を要因としその過程の中に行動できない一因が存在していることになります。
◇感情: 恐れや不安の時間的傾向
行動することまたは、行動しないことで生じるリスクを潜在意識が顕在意識に知らせ回避しようとする恐れや不安という感情は、近い未来に対して大きく感じ遠い未来に対して小さく感じる傾向があります。遠い未来には、多くの不確定要素が含まれ明確にリスクをイメージ化できないことが恐れや不安を小さく感じる一因であると考えられます。この恐れや不安の時間的傾向により行動することで変わる近い未来の新たなリスクを大きく感じ、行動しない現状維持の遠い未来のリスクを小さく感じる結果が先延ばし行動につながるのだと考えられます。現在の状態が良いか悪いかに関わらず今生存できている安定点を保存しようとする本能的な働きの影響も考えられます。
◇欲求: 利益優先
現代の企業の目的は、利益の最大化であり入社した社員も目的に沿うよう教育されるため利益の追求は、あたかも社会常識(技術革新、市場原理、利益率、合理化、効率化、生産性、品質、コストダウン、納期、ノルマ、成果など)として個人の中で受け取られることがあります。経済学者が作り出し企業が目的とし個人は、無批判に社会常識として受け入れつつあるこれらの概念の中にも有益で個人の人生に応用できるものもありますが中には、障害となるものや欠陥を含むものがあります。利益優先という概念は欲求に直結しているため特に問題を含んでいますがここでは、行動できない要因について焦点を当て考察します。個人の人生で単純に利益優先という概念を導入した場合は、利益の高い行動を優先し利益の低い行動は、後回しか行動しないという選択になります。
例えば、この利益をお金を儲ける仕事と仮定すると最も優先されることが仕事となりそのためには、感情的充足や体の健康維持を後回しか行動しないという選択になります。
このような状態だと日々の小さな課題に対する行動は先延ばしされ続けストレスと抑圧によりやがて感情と体とのバランスが崩れてしまいます。
◇思考、判断: 協調しない三者
「心の機能」で触れましたが潜在意識下の感情や欲求の処理結果を基に顕在意識が意識化し思考や判断が行われるため殆どの行動が事後承認になります。但し感情や欲求を超える外圧(法律、倫理、道徳、人間関係上の強制、会社のノルマなど)や何らかの目標に対する強い意思がある場合は、思考の判断により行動が行われます。
小さな日々の課題は、感情的に行動しない現状維持がリスクが低いと感じ、欲求的に利益の最優先が別にある(上記例では、お金を儲ける仕事を最優先)と感じそれを意識化した思考の判断は、行動しない(できない)選択となり先延ばしになるのだと考えられます。
これらのことから「思考、感情、欲求が協調しなければ動機が成立せず行動ができない」のだと思われます。
■行動力を培う方法
現代人は、思考、記憶、体を個別に教育・学習するさまざまな方法については、開発していますが感情や欲求を個別に教育・学習する方法については、家族や社会の中で自然に学んでいくものとしてあつかいます。そのため思考、感情、欲求のバランスをとる方法やその意味を教えられる機会がないため協調ができないのだと考えられます。そして知性偏重、情報過多、利益優先の中で顕在意識の思考と潜在意識の感情と欲求の間に不調和が生じバランスを崩すことで様々な問題が発生しているのだと考えられます。
思考、感情、欲求を協調させバランスを回復するには、いくつかの再学習と協調行動の練習が必要になります。
◆感情: 恐れや不安による抵抗感
行動することへの恐れや不安は、行動をできるだけ細かく分解することで抵抗感を小さくすることができます。
例えば、布団やベッドから起き上がるのがやっとという気力の人に大掃除をする行動は、不可能に近い一大事業と感じますが、移動せず手の届く範囲だけ粘着クリーナーのコロコロで掃除をするだけなら数分で終わるので抵抗感は小さく感じると思います。更に使った粘着クリーナーを剥がして捨てに行くのを分解して別の行動目標としてもいいでしょう。
この他人にとっては、注目するに値しない小さな掃除行動が本人にとっては、小さなスッキリ感と達成感による動機付けとなり行動を習慣化する第一歩となり次の一歩への呼び水となります。また行動の細分化は、潜在意識が変化を捕捉し安定状態へ引き戻そうとする働きを抑制する効果を期待できます。
◆欲求: 欲求の抑圧と偏向
体が求める欲求は、本来シンプルなもので食欲、睡眠欲、排泄欲(性欲)で顕在意識の思考が利益優先などを志向しているとストレスによる抑圧や偏向により別な欲求への過度の依存などで本来のシンプルな欲求に不調和が生じます。顕在意識の思考が感情と欲求が別々の方向に向かい協調しないことで生じる諸問題を認識することで圧制から解放され本来のシンプルな欲求のバランスを取り戻すことが期待できます。
◆思考、判断: 日々の小さな進歩を可視化し達成感を得る
顕在意識の思考は、外界の基準(正/負、価値/無価値、利/害、善/悪、他者など)と自己の位置を絶えず比較し評価する性質があります。この比較結果を受け感情の主体は、一喜一憂したり欲求(体)の主体は、新たな欲求を生み出したりします。この外界の対象間の差や対象と自己の差と動きが思考を生起する動力源とも考えられます。
前記感情の項で行動を細かく分解することで抵抗感を小さくすると書きましたが継続するためには、小さなものでも進歩を認識する必要がありその比較結果を受け達成感という動力源を得る必要があります。行動を細分化した結果一つの行動は、小さく短時間で完結するようになり目的を達成するまでの期間は、長くなり変化もゆるやかになりますが日々の差を認識するのが困難になるため可視化する日々の記録が必要になります。
- 小さな進歩という変化を可視化するために普段使っているto do List(するべきこと一覧)を細かく分解し行動目標一覧とするだけでOKです。それをカレンダーに行動目標として予定の期間を書き込み予定期間に行動しなければ空白で行動したならば○を書き込み達成を管理します。
- エクセルなどで1ヶ月日単位の行動目標表を作って達成率などを管理したりスマートフォンのカレンダーメモを使ったり本格的にプロジェクト管理アプリでWBS(Work Breakdown Structure)を管理してもOKです。
◆思考、感情、欲求の協調に必要なこと
顕在意識の思考に対して感情や欲求が強い場合、思考の理性を抑えて行動してしまったり逆に思考の理性や外圧(法律、倫理、道徳、人間関係上の強制、会社のノルマなど)が強い場合、感情や欲求を抑圧してしまった経験があると思います。思考、感情、欲求という主体の一者が継続的に強く働くとより強化され他の二者は、弱化される状態となりそれが習慣化してしまいます。筋肉を使わないとあっという間に衰えていくのは、経験上知っていると思いますが、思考、感情、欲求についても同様だと考えられます。
アンバランスな状態が習慣化してしまった状態を回復する練習の要件は、以下の三つに集約されると考えます。
- 「各主体に序列をつけない」(他の主体を抑圧や否定をしない)*1
- 「弱化した主体をバランスよく組み入れる」(バランスの回復)*2
- 「協調行動を練習する」(協調を習慣化)*3
*1 顕在意識の思考が主人で感情や欲求(体)は、自分の所有で隷属すべきとはとらえず大切な役割を持った協力者と考えます。
*2 思考、感情、欲求のそれぞれが行き過ぎず程合いよくバランスするように組み入れます。
*3 協調行動の練習内容は、次項に記述します。
■協調行動の練習
思考、感情、欲求(体)の協調行動を練習するには、同時にこれらを使う行動である必要があります。また気をつけなければならないことは、思考、感情、体の動作速度が異なる点と体を動かす動作は習慣化で自動化されており感覚器官からのフィードバック情報を詳細に意識化するには、思考が意図的に注意を行動に向けなければ感じ取ることができないことです。
これらのことから協調行動を行うには、思考は、意図的に注意を体に向け体は、感覚情報を感受できるよう緩慢な動作で感情は、体の快感や痛みや状態を十分感じ取る必要があります。
協調行動の練習に適しているのは、全身を使うストレッチです。またラジオ体操、太極拳、ヨガなどを緩慢な動作で行うことでも練習になります。本ブログで紹介している「心のストレッチ」でも練習できます。
目的は、協調行動の練習なので準備運動で得られる効果は、副産物として考えてください。
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