【日本が開発・配備する中距離巡航ミサイルは、近い将来、中国攻撃に使われ、日本自身の壊滅につながることについて】

〈要約〉
◆日本政府が射程距離1500~2000キロに及ぶ中距離巡航ミサイル(日本版トマホーク)開発を決定しました。

◆これらの攻撃的巡航ミサイルは、明らかに中国を標的としたものです。

◆近い将来、日本は英米に利用され、中国攻撃に向かうことになるでしょう。それは、日本自身の壊滅につながります。

◆むしろ、日本は武装中立を宣言し、アジア諸国との協力を通じて、平和と繁栄を実現すべきです。




1. 日本政府による攻撃的巡航ミサイル開発・配備の決定

報道によると、日本政府は射程距離1500~2000キロに及ぶ中距離巡航ミサイル(日本版トマホーク)開発を決定しました。

これらの攻撃的巡航ミサイルは、明らかに中国を標的としたものです。

射程距離1500キロの巡航ミサイルを九州から発射した場合、北京が射程距離に入ります。また、射程距離2000キロの巡航ミサイルを沖縄諸島や奄美諸島から発射した場合も、北京が射程距離に入ります。

中距離巡航ミサイルを自衛隊の艦船・航空機・潜水艦から発射することも計画されています。その場合、中国奥地の都市も攻撃することになります。


[宮古島のミサイル基地に配備された自衛隊の地対空ミサイルおよび地対艦ミサイル ー 将来、中距離巡航ミサイルも配備されるでしょう]


[アメリカのシンクタンクCSBAが提案する九州・琉球列島・奄美諸島から中国本土に対する中距離ミサイル攻撃(出典: Tightening The Chain)][1]

射程距離1500キロの巡航ミサイルは三菱重工が開発し、射程距離2000キロの巡航ミサイルは、川崎重工が開発します。


[射程距離1500キロの巡航ミサイルのベースとなる12式地対艦誘導弾]


[射程距離2000キロの巡航ミサイルのベースとなる小型標的機]

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[奄美大島・大熊地区の自衛隊ミサイル基地]


[宮古島の自衛隊ミサイル基地]


2. 日本が攻撃的巡航ミサイルを開発・配備する背景

日本は、これまで戦後一貫して、平和憲法の下、専守防衛に徹底し、攻撃的兵器を持たないことで平和を維持してきました。

にもかかわらず、その基本政策を根本的に変更し、攻撃的兵器を開発・導入するのはなぜでしょうか?。

その理解のためには、大局的な世界情勢の流れを理解する必要があります。

現在、英米を始めとする西欧諸国は、中国の急速な経済力・軍事力・国際的影響力の拡大に脅威を感じています。そのため、米欧の巨大資本は、あらゆる手を使って、中国の台頭を押さえ込もうとしています。

中国のGDPは、間もなくアメリカに追いつき、追い越します。それにともない、中国は、軍事力および国際的影響力を急速に拡大しつつあります。



中国のファーウェイは、すでに次世代移動通信の5Gの分野で事実上の世界標準を確立。その結果、中国は、5Gによって実現される自動運転やIoT、スマートシティ、AIサービスなど、近未来の巨大なビジネスチャンスを制することになります。



さらに、中国は、一帯一路政策を通じて、中国から中央アジア、中東、東ヨーロッパ、南ヨーロッパ、アフリカへも影響力を拡大しています。

通信分野を制することは、電子マネー・デジタル人民元の国際通貨化を通じ、これらの地域における中国の金融ビジネスの拡大も意味します。その結果、機軸通貨としてのドルの地位が脅かされることになります。



また、アフリカでは、固定電話の普及を飛び越えてスマートフォンが普及しています。給与が電子マネーとして直接スマートフォンに振り込まれ、スマートフォンが財布代わりに使われ始めています。中国は、アフリカにおける5Gの普及を促進しており、それにともない、中国の電子マネーがアフリカで普及すれば、伝統的にアフリカの金融を支配してきたヨーロッパの金融機関も駆逐されることになります。

中国は、すでに5Gを超える6Gの研究開発も進めており、情報通信分野での恒久的な優位性を確立しつつあります。さらに中国は、投資銀行分野にも進出しつつあります。このため、今、中国を封じ込めなければ、米欧は、先端技術分野・金融分野で、二度と中国に追いつけなくなる可能性があります。

そのため、米欧の巨大資本は、あらゆる手を使って、中国の台頭を押さえ込もうとしています。しかしながら、14億の人口と巨大市場を有する中国を、経済的に封じ込めることは困難です。

また、一帯一路を通じて、各国に影響力を拡大しつつある中国を政治的に押さえ込むことも困難です。

残る手段は中国を軍事的に押さえ込むことですが、中国はロシアと戦略的なパートナーシップを維持しており、米欧が中国を直接軍事的に攻撃することは、現実的ではありません。

このような状況の下、米欧の巨大資本が取り得る最も有効で、歴史的にもその有効性が証明されている手段は、日本をファシズム化・軍事大国化し、中国攻撃に使うという手法です。

今回、日本政府が開発を決定した射程距離1500~2000キロに及ぶ中距離巡航ミサイルは、明らかに中国を標的としたものです。

近い将来、日本は、英米に利用され、中国攻撃に向かうことになるでしょう。それは、日本自身の壊滅につながります。

攻撃的兵器を使用すれば当然相手国の反撃を受けるため、攻撃的兵器導入は、相手国の反撃を許さないだけの強力な攻撃力を持つ必要があるという主張を生み、核武装論につながります。アメリカ保守派の狙いは、日本と中国の間で地域的な核戦争を起こさせることです。 


3. 安倍-菅政権による日本のファシズム化と軍事大国化


[満州事変・日中戦争から太平洋戦争における日本の中国攻撃・侵攻]

かつて、日清戦争において、日本は欧米諸国の尖兵となり、中国を攻撃・侵略しました.

しかし、太平洋戦争後、日本は平和憲法を制定し、民主主義の国となり、戦力も不保持となりました。

そこで、再び、日本を使って中国を攻撃するためには、日本のファシズム化と軍事大国化が必要となります。

安倍-菅政権は、アメリカ政府およびアメリカ大資本が支えることで維持されています。言い換えますと、安倍-菅政権はアメリカの言いなりということになります。

菅首相は、異例なことに官房長官当時の2019年5月に訪米し、ペンス副大統領、ポンペオ国務長官と会談しています。ペンス副大統領は各国の首脳級とのみ会談するとされており、この当時から安倍の次は菅というのがアメリカの規定路線だったと思われます。アメリカは菅首相の官僚統制能力を高く評価しています。


[2019年5月、訪米した菅官房長官とペンス副大統領との会談]

また、日本の大資本も、アメリカのNSA(国家安全保障局)による情報収集にさらされています。企業内の公にしたくない秘密を暴露されることで、日本の企業はいつでも苦境に陥ります。

このような状況の下、安倍-菅政権は、日本のファシズム化と軍事大国化を着々と進めています。

安倍政権は、憲法違反の集団的自衛権を認める安保法制を強行採決で成立させたあと、特定秘密保護法(スパイ防止法)、共謀罪法を次々と成立させました。

集団的自衛権に基づき、自衛隊は、アメリカ軍を攻撃した相手を攻撃することになります。

特定秘密保護法に基づき、公務員に対する監視・捜査・情報収集が強化されます。共謀罪法に基づき、国民に対する監視・捜査・情報収集が強化されます。菅政権の中枢は、警察官僚が占めています。

また、安倍ー菅政権では、過去最大の防衛予算が更新され続けています。100機を越えるF-35の導入が決定され、イージス・アショア代替策も導入されることになっています。

さらに、安倍-菅政権は、新型コロナの意図的検査制限により新型コロナの感染拡大を放置しています。自作自演の非常事態を作出し、緊急事態を宣言、都市封鎖が出来ない現行憲法の限界を強調しつつ、感染地域に自衛隊を投入して自衛隊を英雄視、その上で憲法への緊急事態条項と自衛隊を明記することを目指しています。

安倍政権は、昨年4月、新型肺炎特措法に基づき、7都府県に対し緊急事態宣言を行いました。その前日、安倍首相は衆院議院運営委員会で、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、「緊急時に国家や国民がどのような役割を果たし、国難を乗り越えるか。憲法にどう位置付けるかは極めて重く大切な課題だ」と述べ、憲法改定による緊急事態条項の導入を求めました。


[衆院議院運営委員会で、憲法改定による緊急事態条項の導入を求める安倍首相]

かつて1923年の関東大震災の際、治安維持令が発布され、それが1925年の悪名高い治安維持法制定につながりました。

安倍政権は、ファシズム化を進めるため、災厄が欲しかったわけです。そこで、検査制限を行い、感染を拡大させ、自作自演の非常事態を作出したわけです。

新型肺炎特措法の緊急事態宣言は新型コロナ蔓延のときだけに限られますが、憲法に緊急事態条項を明記すれば、新型コロナの蔓延に限らず、いつでも自作自演の非常事態を作出して、反政府デモや反戦デモを押さえ込むことが出来ることになります。


[新型コロナ対策に動員される自衛隊衛生部隊の特殊車両]

また、安倍-菅政権が憲法に自衛隊を明記したいのは、事実上憲法9条を無効にするためです。法律には、「後法は前法に優先する」という原則があります。もし憲法に自衛隊が明記されれば、事実上の軍隊である自衛隊が憲法上明記されたのだから、それと矛盾する憲法9条の戦力不保持や戦争放棄は無効となる、という解釈が成り立つことになります。そのため、憲法への自衛隊明記は、攻撃的兵器の配備や軍事的威嚇、さらに軍事紛争への参加の道を開くことになります。

かつてドイツでは、ヒトラー率いるナチスが、憲法の緊急事態条項を悪用して、事実上議会を機能停止に追い込み、ヒトラー総統に権限を集中させ、独裁制を実現しました。それと同じことが日本で行われようとしています。



ちなみに、ファシズム化したドイツは、1942年、ソ連に侵攻し、社会主義国ソ連で殺戮と破壊を行いました。

現在、日本のファシズム化が進められているのは、米欧大資本が、ファシズム日本を使って中国を攻撃するためです。


4. 菅政権による学術会議任命拒否、日本版台湾関係法と日本のファイブ・アイズ加盟

菅政権は、発足早々、日本学術会議が推薦した新会員のうち6名の任命を拒否しました。任命を拒否された6名は、いずれも「安全保障関連法に反対する学者の会」の呼び掛け人や賛同者のみなさんです。[2]

そのため、今回の任命拒否は、安倍政権下で強行的に成立された安保法制、特定秘密保護法(スパイ防止法)、共謀罪法、さらに、安倍・菅政権で進められている憲法改定という一連の流れの中でとらえられるべきです。

言い換えますと、今回の任命拒否は、日本を対外的に軍事力を行使する国にさせる、さらに、日本を中国との軍事紛争に向かわせるという中長期的なアメリカの戦略の下で起こるべくして起こった事件といえます。[3]

任命拒否の目的は、日本の軍国化に反対する学者の排除です。平和主義の学者が排除されれば、国民は好戦派の学者の言うことを聞くしかないことになります。今後、好戦派の学者たちは、中国に対抗する外交の推進、対外的軍事力行使の必要性、そして軍事力の増強を説くことになるでしょう。

かつて日本が戦争にのめり込んで行く過程において、1933年、文部大臣は京都大学法学部教授瀧川幸辰の刑法学説をマルクス主義的であるとして休職処分を発令、著書を発禁にしました(滝川事件)。

また、1935年、それまで通説的学説であった天皇機関説の代表的学者である美濃部達吉の著書が発売禁止処分とされ、天皇機関説の教授も禁止されました(天皇機関説事件)。今回の任命拒否は、軍国化と思想統制につながるという点において、これらの事件に比すべきものと思われます。


アメリカは、すでに台湾の安全保障にアメリカが責任を持つとする台湾関係法を成立させています。間もなく日本の好戦派の学者たちは、中国に対抗する外交として日本版台湾関係法の必要性を主張するようになるでしょう。そして、それを広告代理店やメディアが喧伝するでしょう。

菅内閣の防衛大臣は安倍前首相の弟の岸信夫です。岸信夫は台湾との関係強化を目指す超党派議員連盟「日華議員懇談会」の幹事長を務めており、台湾と日本の安全保障面での協力を推進する政界有数の親台湾派です。[4]

このため、今後、防衛省が主導して、日本が台湾の安全保障に責任を持つとする日本版台湾関係法が内閣提出法案として国会に提出されるものと思われます。


[台湾の蔡英文総統が総統選挙で再選された際に、祝意を伝えるため訪台した岸信夫と蔡英文総統]

仮に台湾関係法が成立すれば、安保法制とセットで運用されることになります。すなわち、安保法制で抽象的に定められていた集団的自衛権行使の具体的内容として台湾防衛が位置付けられ、憲法違反の集団的自衛権が実際に行使される危険性が非常に高まることになります。


そして、好戦派の学者たちは、日本がファイブ・アイズに加盟することを主張するでしょう。それを広告代理店やメディアが喧伝するでしょう。

ファイブ・アイズとは、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドによって構成される信号情報(SIGINT)収集のための協力体制のことです。電話や通信、インターネットでやり取りされる情報を盗聴し、収集します。

イギリス・アメリカが日本をファイブ・アイズに加盟させる目的は2つあります。ひとつは、日本を中国に対する情報収集体制に組み込むことです。

もうひとつは、日本政府、とくに首相や防衛大臣など政府中枢に虚偽の情報を伝え、日本を対中軍事紛争に参戦させることです。

かつて、第2次大戦中、イギリス情報部は、アメリカを対独参戦させるため、偽の地図を作成しました。地図には、ドイツが南アメリカ全土を占領した後、南アメリカ合衆国を建国し、各地を航空路線で結ぶ計画が示されていました。

地図を見せられたアメリカのフランクリン・ルーズベルト大統領は、ドイツが南アメリカへ侵攻する計画を持っていると信じ込み、対独参戦に大きく傾きました。[5]


[Luftverkehrsnetz der Vereinigten Staaten von Südamerika Hauptstrecken (Air transport network of the United States of South America main lines)
イギリス情報部が作成した偽の地図:
ドイツによる占領後建国される南アメリカ合衆国の各地を結ぶ主要航空路線図]

日本には、ファイブ・アイズから提供された情報の真偽を検証する能力がありません。首相や防衛大臣は、提供された情報を鵜呑みにするしかありません


5. 日本が台湾危機に巻き込まれる可能性

この記事をお読みの方の中には、日本が中国を攻撃することは考えにくいという方がいらっしゃるかも知れません。

しかしながら、仮に台湾が独立を宣言し、台湾危機が発生した場合、日本は集団的自衛権により台湾危機に巻き込まれます。現在の台湾の蔡英文総統は独立派です。

中国は、台湾の独立を阻止するため、必ず軍事介入します。中国は、国内法の「反国家分裂法」により、仮に台湾が独立宣言をした場合、軍事力を使って、必ずこれを阻止すると定めています。

台湾は、アメリカに支援を求めます。アメリカは、国内法の「台湾関係法」により、台湾が攻撃を受けた場合、台湾を防衛することになっています。
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台湾とアメリカは、日本に対し支援を要請します。日本は、安保法制に基づき、台湾とアメリカを支援するため、集団的自衛権を発動、中国を攻撃することになります。集団的自衛権を発動した場合、日本が攻撃を受けていなくても、日本は、中国を攻撃することになります。

その場合、日本に配備された中距離ミサイルが中国への攻撃に使われます。


[九州・琉球列島・奄美諸島から中国本土に対する中距離弾道ミサイル攻撃(出典: Tightening The Chain)]


これに対し、中国は反撃を行います。日本は戦場となり、日本は中国の容赦ないミサイル攻撃にさらされることになるでしょう。

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[中国の移動式中距離弾道ミサイル「東風21」]


ちなみに、台湾危機が生じても、アメリカ・イギリスは遠距離から海上封鎖を行うのみでしょう。東アジアでは、実質的に日本だけが中国と戦うことになります。

また、同時にインドが国境地帯で中国と交戦するでしょう。

アメリカ・イギリスは、情報提供と海上封鎖のみを行い、実質的には、日本とインドが中国と戦うことになります。

かつて第2次大戦で、イギリス・アメリカが西ヨーロッパへの上陸作戦を出来るだけ遅らせ、ドイツとソ連を死力を尽くして戦わせたのと同様の手法がとられることになるわけです。

現在、英米主導によりQUAD+1(アメリカ、オーストラリア、日本、インド、+イギリスによる中国包囲網)が構築され、中国に対する軍事的圧力が加えられようとしています。昨年11月、アメリカ、オーストラリア、日本、インドは、インド近海のベンガル湾で共同軍事演習を実施しました。[6]

QUAD+1は、日本を中国との武力衝突へ向かわせるための英米による策謀です。日本は、QUAD+1から離脱すべきです。


なお、報道によると、2016年に、中国の雲南省で、元中国共産党員の男が、外国勢力と共謀して、雲南省昆明市の公安局や軍の兵器庫などを襲撃し、市政府を転覆させるクーデター計画を立てていたそうです。男は、中国当局により逮捕されました。[7]

アメリカの狙いは、中国を軍事的に制圧することではありません。アメリカの狙いは、中国を地域紛争に引きずり込み、その機に乗じ中国国内で複数の地域的クーデターを勃発させ、中国の体制に揺さぶりをかけることにあると考えられます。台湾と日本は、いわばアメリカが中国の体制に揺さぶりをかける際の「捨て駒」にされるわけです。


6. 安倍-菅政権による日本のファシズム化・軍事大国化と日銀による官製バブル

安倍-菅政権による日本のファシズム化および軍事大国化は、日銀の国債・株買い入れによる官製バブルと表裏一体で進められてきました。

官製バブルによる見せ掛けの好景気と株高で国民の批判をかわしつつ、ファシズム化と軍事大国化が進められてきたわけです。

しかしながら、日銀による官製バブルも永遠には続きません。

2021年1月、アメリカは、トランプ共和党政権からバイデン民主党政権へ移行しました。アメリカ民主党の政治基盤は、ヨーロッパ系国際金融資本や情報通信産業などの大資本です。



これまでアメリカの民主党政権下では、必ず株の大暴落が発生してきました。クリントン政権下でも、オバマ政権下でも、株の大暴落が発生しました。バイデン政権下でも、株の大暴落が発生します。目的は、大資本と富裕層が保有する株の持ち替えと中国に対する経済的攻撃です。

世界的な株の大暴落は、日本の官製バブルを崩壊させます。日本の景気が大きく後退し、大量の失業者が発生します。

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それをきっかけに、日本でも政権交代が起こるかも知れません。しかしながら、仮に立憲民主党を中心とする政権が成立しても、イギリス・アメリカが日本と中国を交戦させようとする流れは変わらないでしょう。


立憲民主党の枝野代表は、結党後初の公式な海外訪問先としてアメリカを訪問し、アメリカ民主党議員や外交問題評議会の研究員と会談しています。


[訪米時、アメリカ民主党議員と会談した際の立憲民主党枝野代表]


[訪米時、保守系シンクタンク外交問題評議会の研究員と会談する立憲民主党枝野代表]

枝野代表は、アメリカ民主党が応援しアメリカの情報機関が支援する香港反政府運動とそのリーダーだった周庭氏らを応援しています。

このため、台湾危機が生じた場合、立憲民主党は、アメリカ民主党に従い、台湾の自由と民主主義を守るという名目で、台湾を支援するでしょう。

仮に立憲民主党を中心とする新政権が公約通り安保法制を廃棄しても、新政権は、それ以前に成立していた「周辺事態法」に基づき、台湾危機に介入するでしょう。周辺事態法では、日本の周辺地域で平和と安全に重要な影響を与える武力紛争などが発生した場合、日米安全保障条約を効果的に運用し、日本の平和と安全に役立てるとされています。


7. ファシズム阻止のための強力かつ広範な国民運動の必要性

日本のファシズム化阻止のため、強力かつ広範な国民運動を組織し、展開する必要があります。

これは、単に安倍や菅を取り除けば済むという問題ではありません。安部や菅を取り除いても、制度的・構造的なファシズム体制は維持され、進行して行くからです。

閣内または自民党内で総理の座が横滑りされるかも知れません。

あるいは、地方自治体の首長または元首長が中央政界入りし、安倍-菅が築いた制度的・構造的なファシズム体制を引き継ぐ可能性もあります。小池百合子は、核武装論者です。

そのため、ファシズム化の背景にある、日本および米欧の大資本を批判し、攻撃する必要があります。

憲法改定を阻止するだけでは防げません。現行憲法の下でも、解釈改憲でファシズム化と中距離ミサイル配備は進みます。

政権交代しても変わりません。現在の野党は、すでに翼賛体質化しており、ファシズムを止める気力も能力もないからです。むしろ、野党は国民の反対の声を吸収し、何もしないという役割を果たしています。

国民自身が、ファシズム阻止のために立ち上がる必要があります。市民団体、労働組合、反戦平和団体、反原発団体、人権団体、法曹団体、学生団体、地方自治体、労働者、主婦、学生、高齢者、等々の民主的諸団体・諸個人が横の連携を強め、ファシズム阻止で共通行動を取る必要があります。

ファシズムの進行を阻止するため、政治家任せにせず、国民が「ファシズム阻止国民連絡会議」を立ち上げるべきです。メディアが伝えない重要情報を国民に伝えるとともに、政権とメディア・広告代理店の癒着、事実隠蔽、警察権・検察権の濫用、自衛隊の治安維持活動投入などを阻止するため、訴訟、不買運動、ストライキ、不服従などの実力行使を行います。

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[1983年、西ドイツにおける中距離核ミサイル配備に反対する長さ110キロに及ぶ人間の鎖 ー このあとアメリカは西ドイツへの中距離核ミサイル配備を断念しました]

自由と権利、平和と独立を得たいのであれば、国民が決定権を持つ必要があります。そのためには、ドイツのように労働組合活動を活発化させ、各地域に多様で活力のある中小企業を成立させ、地方政府の権限を強め、再生可能エネルギーを通じた分散型の経済成長を実現させる必要があります。

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外交的には、アジア諸国との連携が重要です。

現在、中国の経済規模はアメリカとほぼ肩を並べ、すでに日本の3倍に達していますが、今後、中国の経済規模はさらに成長を続け、2035年に現在の2倍、2050年に現在の3倍に成長すると予測されています。日本の経済規模は今後ほぼ横ばいと予測されているため、中国の経済規模は2035年に日本の6倍、2050年には日本の9倍にもなります。[8]

もし日本が、中国に対抗する軍事力を配備しようとすれば、莫大な財政負担を強いられることになります。さらに、もし戦闘になったら瞬時に日本本土が焦土となります。

そのため、日本の安全保障を日米同盟に依存するのでなく、アジア各国による地域的な安全保障の仕組みを作るべきです。

具体的には、CICA(アジア相互協力信頼醸成措置会議)をベースに、そこにASEAN地域フォーラムを合体させ、新しいアジア地域の集団安全保障の仕組みを構築すべきです。日本は、CICAにオブザーバーとして参加しています。日本は、CICAに正式に加盟し、集団安全保障の一翼を担うべきです。(⇒2019年6月17日付
弊ブログ記事をご参照下さい。)

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そして、日本は韓国と共に武装中立を目指すべきです。専守防衛に徹することが日本の安全を保障します。中国による侵略の可能性については、攻撃的兵器による抑止ではなく、国連を通じて批判し、国際世論に訴えることこそが最も有効です。貿易に依存する中国は国際社会で孤立したくないからです。


国民がファシズム阻止のために立ち上がり、国民が主導することで、新しい政界再編が実現するかも知れません。自民党内のアジア重視派議員(二階派など)や立憲民主党内の進歩派議員が結集し、アジア諸国との友好を大義とする新政党を創設することが考えられます。そして、本来平和主義に基づく公明党を自民党から引き離し、新政党との連立政権を樹立することが考えられます。

アメリカ保守派に盲従する安倍や岸、イギリスに盲従する麻生など自民党右派や維新の党を数で圧倒することになります。

さらに、国会が選任する特別検察官の制度を創設し、安倍、麻生を始め、虚偽、改竄に関わった全ての公務員を刑事罰で罰するべきです。又、捜査権限・検察権限を私物化し、恣意的に運用した警察官僚および検察官については、職権乱用罪で処罰すべきです。

そして、日銀機能を破綻させた日銀幹部に対しては、善管注意義務(Fiduciary Duty)違反に基づき、個人賠償責任を追及すべきです。

それが、法の支配を徹底させ、政権の私物化と一部特定利益のための政治が再び行われることを防ぐからです。


民主主義は、共同行動です。自分ひとりが得をしようとするのでなく、みんなで協力して権利と自由を獲得して行く。それが、民主主義です。

国民が、自ら真実の情報を集め、自ら議論し、自ら決定する。それが、民主主義です。

政治家やメディアが流す目先の断片的・部分的情報に頼っていると誘導されてしまいます。そのため、全体・大局を見通し、事実に基づき問題の本質をとらえるべきです。これまでの歴史的事実から、イギリス・アメリカの意図・狙いを理解することが大切です。

政治家や政党が提供する政策メニューを受動的に受け入れるのでなく、国民のみなさん自身が政策レベルで決定権を持つ必要があります。国民のみなさん自身が、日本をどういう国にしたいのか、ヴィジョンを持つ必要があります。細かい規定や細目は、政治家や官僚にさせれば良いことです。しかしながら、内政・外交における大原則は、国民のみなさん自身が決定する必要があります。

日本国民のみなさんが民主主義を進化させ、決定権を持たない限り、たとえ政権交代が起こっても、今後も、官僚であれ、アメリカ保守派であれ、国際金融資本であれ、国民のみなさん自身以外の勢力が決定権を持ち続けることになるでしょう。その結果、日本国民のみなさんは、権利と自由、さらに平和的生存権までをも失うことになるでしょう。


参照資料:
(1) Tightening the Chain: Implementing a Strategy of Maritime Pressure in the Western Pacific, May 23rd 2019, CSBA

(2) 「任命拒否は学問への冒瀆 安保法に反対する学者の会が抗議の会見」、2020年10月15日、東京新聞

(3) "The Case for Offshore Balancing - A Superior U.S. Grand Strategy" by John J. Mearsheimer and Stephen M. Walt, Foreign Affairs, July/August 2016 Issue

(4) 「岸新防衛相は親台派 『日米台の安全保障対話』必要性主張」、2020年9月16日、フォーカス台湾

(5) "The Astounding Counterfeit Nazi Invasion Map You’ve Never Heard Of", February 18th 2015, Mental Flooss

(6) "With an eye on China, US Navy joins India, Japan and Australia for Malabar exercise", November 5th 2020, Navy Times

(7) "Chinese state security organs unveil retired official’s plot to subvert state power", April 16th 2020, Global Times

(8) The World in 2050, February 2017, PwC


註記: 上記の見解は、私個人のものであり、いかなる団体あるいは政党の見解をも反映するものではありません。
私自身は、いずれの政党・政治団体にも所属していません。あくまでも一人の市民として、個人として発言しています。民主主義と平和を実現するために発言しています。