【日本を取り巻く安全保障環境を前提とした場合、憲法9条を守るとは、積極的な外交努力を通じ、中国と良好かつ永続的な友好関係を築くことであることについて】

日本国憲法 第九条 「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」



安倍政権は、憲法改定を目指しており、仮に次の参議院選挙あるいは衆議院選挙で議席数を減らすことがあっても、維新の会を取り込み、改憲の発議を行おうとするでしょう。目的は憲法9条を改定することにあります。その背景には、日本を中国と交戦させようというアメリカのオフショア・バランシング戦略があります。アメリカは、アメリカ自らが中国と戦うのでなく、地域の同盟国を中国と戦わせ、自らは後方から指令を出す、いわゆるオフショア・バランシング戦略を進めています。[1]:



これに対し、現在の日本の野党は、憲法改定、とくに憲法9条改定には反対ですが、あくまでも保守派が進める憲法改定に反対ということであり、積極的に憲法9条の精神を実現して行こうという姿勢が見られないようです。野党の主張は抽象的な議論に終始し、日本を取り巻く安全保障環境を前提にした具体的議論がほとんど見られません。

憲法9条を守るということは、ただ単に9条の文言を維持するということではありません。ただ9条を守ると言っていて、守れるわけではありません。憲法9条で戦争を放棄し、交戦権を否定した日本が平和を維持して行くためには、最大限の外交努力を通じ、能動的・積極的に諸外国、とくに周辺諸国と友好関係を築いて行く必要があります。これを日本を取り巻く現在の安全保障環境に基づき具体的に考えてみた場合、日本は、まさに中国との間で良好かつ永続的な友好関係を築き、これを維持・発展させる必要があるということを意味します。それが、憲法9条を守るということの具体的・実質的な中味です。



ところが、現在、日本の政党で中国と積極的に友好関係を築くという政党が存在しません。日本の政党で中国との戦争を防ぐ方策を真剣に追求している政党が存在しません。

これまで野党の中では、自由党がアジア諸国との連携を重視する政党でしたが、自由党は国民民主党と合流する過程で国民民主党の基本政策を丸呑みし、その結果、自由党の政策は消えてしまいました。[2]

このような状況になったのも、1972年に日中国交正常化を実現し、日中友好の端緒をつけた田中角栄首相が、その後、様々な謀略を受け、失脚したためと思われます。その後も、中国との友好関係を求める政治家が次々と失脚しました。そのため、日本の政治家がすっかり萎縮してしまいました。



時代とともに日本を取り巻く安全保障環境は変わり、それにともない、憲法9条を守るということの内容も変わってきました。1950年代から2000年代までは、朝鮮戦争に参加しない、ベトナム戦争に参加しない、湾岸戦争に参加しない、イラク戦争に参加しないなど、海外の戦争に参加しないことが憲法9条を守るということの中味でした。

これに対し、現在、アメリカが、オフショア・バランシング戦略の下、日本を中国と交戦させようとしている状況においては、日本自身が初めから紛争当事国となります。そのため、これまでのように単に戦争に参加しないという受身の姿勢でなく、戦争を未然に防ぐため、積極的に中国との友好関係を築いて行くことが必要となっています。

憲法9条を守り、その精神を実現するために、中国と積極的に友好関係を築くという政党が現れるべきです。

もし政治家が萎縮して声を上げることが出来ないのであれば、我々市民、国民が、積極的に中国との友好関係の深化・発展を求め、声を上げて行くべきです。

間もなく、日本の様々な分野において、中国との友好関係を求める大規模な大衆運動が起こることになるでしょう。それは、一人一人の市民の自覚に基づくものかも知れません。あるいは、各県市区町村レベルでの自立的判断に基づくものかも知れません。あるいは、中国との良好な関係を求める一部経済界・中小企業の働きかけによるものかも知れません。

いずれにせよ、萎縮した政治家に代わり、市民・国民が主導する、新しい政治状況が間もなく現れることになるでしょう。


参照資料:
(1) "The Case for Offshore Balancing - A Superior U.S. Grand Strategy" by John J. Mearsheimer and Stephen M. Walt, Foreign Affairs, July/August 2016 Issue

(2) 「国民民主、自由と合流=党名、政策は維持」、2019年4月26日、時事通信


註記: 上記の見解は、私個人のものであり、いかなる団体あるいは政党の見解をも反映するものではありません。
私自身は、いずれの政党・政治団体にも所属していません。あくまでも一人の市民として、個人として発言しています。民主主義と平和を実現するために発言しています。