【中国との結び付きを強めるアジア諸国の流れが、新しいアジアの安全保障枠組みの構築へつながることについて】
ハノイで開催された米朝首脳会談は合意に至りませんでした。会談後の北朝鮮側の発表によると、北朝鮮側が核施設の一部廃棄と引き換えに制裁の一部解除を求めたのに対し、アメリカ側が応じなかったようです。
今後も、米朝首脳会談において、アメリカが、北朝鮮の完全な非核化まで一切制裁解除をしないとの立場を取ったり、核兵器だけでなく化学兵器・生物兵器の破棄を求めたり、人工衛星の発射も止めるよう求めるようなことがあれば、米朝間の話し合いは事実上決裂することになると思われます。
もし米朝間の話し合いが決裂した場合、事態は、アメリカの意向にかかわらず、中国、ロシア、北朝鮮、韓国の間で進展して行くことになると思われます。
中国とロシアも、朝鮮半島の非核化を目標としています。しかしながら、非核化の時期については明確にしていません。むしろ核保有国である中国とロシアは、北朝鮮が、これ以上核兵器と弾道ミサイルの開発を進め、核ミサイルの多弾頭化や大気圏再突入の技術を確立する事態だけは避けたいと考えていると思われます。

そのため、中国とロシアは、もしアメリカが対話を拒む場合には、北朝鮮が核兵器と弾道ミサイルの開発を「無期限停止」することを条件に、北朝鮮に対する制裁を解除し、北朝鮮に対する経済援助と経済交流の再開に動く可能性があると思います。北朝鮮の金委員長は、間もなくロシアを訪問するそうです。[1]
また、韓国も、これまでのアメリカ依存の姿勢から、中国寄りの姿勢に大きく舵を切る可能性があります。
冷戦期においては、ソ連や中国、北朝鮮に対する国土防衛のため、韓国にとってアメリカとの同盟、そして、アメリカ軍の駐留は必要でした。しかしながら、冷戦が終わり、経済的に中国との結び付きが強まり、さらに北朝鮮との融和が進み、韓国から北朝鮮を経由して中国へつながる鉄道連結・道路連結の可能性が現実的になり、また、ロシアとの間で天然ガス・パイプライン建設の計画も浮上してくると、韓国がより繁栄するためには、北朝鮮・中国・ロシアとの関係強化が大切になってきます。

韓国は、アメリカおよび日本から経済的に自立し、中国との経済的結び付きを強めつつあります。中国の消費市場は、これから急速に拡大します。さらに、韓国から北朝鮮を経由して中国へ鉄道がつながれば、中国の一帯一路政策の下、韓国からドイツにまで鉄道が連結することになります。韓国国民および韓国産業界にしてみれば、中国との関係強化に大きな魅力を感じるはずです。
このような経済分野での動向は、安全保障の枠組みにも影響を与えます。近時、韓国と日本の間で、レーダー照射問題や徴用工問題、慰安婦問題、天皇の謝罪問題など、摩擦が生じているのは、韓国が中国との経済的・外交的結び付きを強め、以前のように日本との関係を重視する必要がなくなったことの表れであると思います。

この傾向は、今後も進むと思われます。考えてみれば、アジア諸国と中国との結び付きの強化は、すでにフィリピンのドゥテルテ政権で始まっていました。それが、現在、韓国におよび、間もなく台湾にもおよぶことになるでしょう。
台湾では、昨年、地方選挙で独立派の与党・民進党が惨敗しました。このため、2020年の大統領選挙では、親中国派の野党・国民党の朱立倫候補が勝利する可能性が高まっています。

一方、中国の軍幹部は、一国二制度の方式により台湾が中国と統一した場合、台湾の行政権の自立、台湾の立法権の維持、台湾の司法の独立の維持、台湾軍の維持、台湾の一部外交権の維持など、10の特権を享受出来ると提案しています。[2]
台湾の蔡英文大統領は、台湾の民主主義を一片たりとも譲らないとして、強硬な態度を取り続けていますが、非妥協的な姿勢は、中国との軍事紛争につながることになります。むしろ、台湾の人々は、より現実的な妥協の道を選ぶような気がします。
既得権益にしがみつくアメリカやイギリス、日本は、アジアにおいて、中国・ロシアと対峙する冷戦時代の安全保障枠組みをなんとか維持しようとしています。しかしながら、歴史の大きな流れを変えることは出来ないでしょう。時代錯誤のイギリスは、新造空母のクイーン・エリザベスをアジアに派遣すると息巻いていますが、中国の中距離弾道ミサイルの存在を考えれば、ただの浮かぶ棺桶になる運命でしょう。逆に、中国は、ミサイル駆逐艦をバルト海に派遣し、いつでもロンドンに核巡航ミサイルを撃ち込める態勢を取るかも知れません。
いずれにせよ、フィリピンから始まり、韓国、そして、台湾と進む、中国との結び付きを強める流れは、必然的にアジアの安全保障の枠組みにも影響を与えることになります。
先日、フィリピンのロレンザーナ国防大臣は、南シナ海で中国とアメリカの間で軍事紛争が生じた場合、フィリピンーアメリカ相互防衛条約によりフィリピンがアメリカ軍を防衛する義務を負うため、フィリピンが自動的に軍事紛争に巻き込まれる危険があるとし、フィリピンーアメリカ相互防衛条約の存在意義について疑問を投げかけました。[3]
同じことは、韓国についても言えます。中国とアメリカの間で軍事紛争が生じた場合、米韓相互防衛条約により韓国がアメリカ軍を防衛する義務を負うため、韓国が軍事紛争に自動的に巻き込まれることになります。韓国でも、米韓相互防衛条約の存在意義に関する議論が始まるでしょう。
台湾の親中国派・国民党では、すでに中国との間で平和条約を結ぶことを提案する幹部も現れています。[4]

間もなく、日本でも、虚偽と偽装に支えられた安倍政権が空中分解し、新しい政権は、中国、フィリピン、韓国、台湾、ASEAN諸国などと協力し、冷戦時代の安全保障の枠組みに代わる、中国・アジア諸国・アメリカによる「地域的集団安全保障体制」構築の議論を開始することになるでしょう。
集団安全保障の具体例としては、国際連合やOSCE、ASEAN地域フォーラムなどをあげることが出来ます。集団安全保障においては、「加盟国の中に」地域の安全を脅かす国が現れた場合、他の加盟国が協力して、その対処にあたることになります。
そのような集団安全保障の仕組みがアジアにおいて構築された場合、集団安全保障機構の総会あるいは理事会における決議に基づき、たとえば、域内のテロ組織や海賊を撲滅するために、中国の人民解放軍、日本の自衛隊、アメリカ軍が協力して対処することになります。
また、域内で地震や津波などの災害が発生した場合、中国の人民解放軍、日本の自衛隊、アメリカ軍が協力して災害救助活動を行うことになります。
各国が理性的に判断・行動すれば、冷戦時代の安全保障の枠組みから、中国・アジア諸国・アメリカによる「地域的集団安全保障体制」への移行は、平和裏に進むことになるでしょう。
しかしながら、もし仮に既得権益にしがみつき、移行に抵抗する勢力が軍事力に訴えた場合、戦場となるのは日本です。
参照資料:
(1) "Arrangements for Kim Jong-un's Russia visit to
restart soon, says diplomatic source", March 7th 2019, TASS
(2) "Chinese general lists 10 'privileges' Taiwan will
'enjoy' under 'one country, two systems' ", March 5th 2019,
Taiwan News
(3) "Philippines warns US treaty could drag it into war as B-52 bomber flies over South China Sea", March 6th 2019,
CNN
(4) "Wu Den-yih says KMT could sign peace treaty if it
regains presidency next year", February 15th 2019, Taipei
Times
註記: 上記の見解は、私個人のものであり、いかなる団体あるいは政党の見解をも反映するものではありません。
私自身は、いずれの政党・政治団体にも所属していません。あくまでも一人の市民として、個人として発言しています。民主主義と平和を実現するために発言しています。
ハノイで開催された米朝首脳会談は合意に至りませんでした。会談後の北朝鮮側の発表によると、北朝鮮側が核施設の一部廃棄と引き換えに制裁の一部解除を求めたのに対し、アメリカ側が応じなかったようです。
今後も、米朝首脳会談において、アメリカが、北朝鮮の完全な非核化まで一切制裁解除をしないとの立場を取ったり、核兵器だけでなく化学兵器・生物兵器の破棄を求めたり、人工衛星の発射も止めるよう求めるようなことがあれば、米朝間の話し合いは事実上決裂することになると思われます。
もし米朝間の話し合いが決裂した場合、事態は、アメリカの意向にかかわらず、中国、ロシア、北朝鮮、韓国の間で進展して行くことになると思われます。
中国とロシアも、朝鮮半島の非核化を目標としています。しかしながら、非核化の時期については明確にしていません。むしろ核保有国である中国とロシアは、北朝鮮が、これ以上核兵器と弾道ミサイルの開発を進め、核ミサイルの多弾頭化や大気圏再突入の技術を確立する事態だけは避けたいと考えていると思われます。

そのため、中国とロシアは、もしアメリカが対話を拒む場合には、北朝鮮が核兵器と弾道ミサイルの開発を「無期限停止」することを条件に、北朝鮮に対する制裁を解除し、北朝鮮に対する経済援助と経済交流の再開に動く可能性があると思います。北朝鮮の金委員長は、間もなくロシアを訪問するそうです。[1]
また、韓国も、これまでのアメリカ依存の姿勢から、中国寄りの姿勢に大きく舵を切る可能性があります。
冷戦期においては、ソ連や中国、北朝鮮に対する国土防衛のため、韓国にとってアメリカとの同盟、そして、アメリカ軍の駐留は必要でした。しかしながら、冷戦が終わり、経済的に中国との結び付きが強まり、さらに北朝鮮との融和が進み、韓国から北朝鮮を経由して中国へつながる鉄道連結・道路連結の可能性が現実的になり、また、ロシアとの間で天然ガス・パイプライン建設の計画も浮上してくると、韓国がより繁栄するためには、北朝鮮・中国・ロシアとの関係強化が大切になってきます。

韓国は、アメリカおよび日本から経済的に自立し、中国との経済的結び付きを強めつつあります。中国の消費市場は、これから急速に拡大します。さらに、韓国から北朝鮮を経由して中国へ鉄道がつながれば、中国の一帯一路政策の下、韓国からドイツにまで鉄道が連結することになります。韓国国民および韓国産業界にしてみれば、中国との関係強化に大きな魅力を感じるはずです。
このような経済分野での動向は、安全保障の枠組みにも影響を与えます。近時、韓国と日本の間で、レーダー照射問題や徴用工問題、慰安婦問題、天皇の謝罪問題など、摩擦が生じているのは、韓国が中国との経済的・外交的結び付きを強め、以前のように日本との関係を重視する必要がなくなったことの表れであると思います。

この傾向は、今後も進むと思われます。考えてみれば、アジア諸国と中国との結び付きの強化は、すでにフィリピンのドゥテルテ政権で始まっていました。それが、現在、韓国におよび、間もなく台湾にもおよぶことになるでしょう。
台湾では、昨年、地方選挙で独立派の与党・民進党が惨敗しました。このため、2020年の大統領選挙では、親中国派の野党・国民党の朱立倫候補が勝利する可能性が高まっています。

一方、中国の軍幹部は、一国二制度の方式により台湾が中国と統一した場合、台湾の行政権の自立、台湾の立法権の維持、台湾の司法の独立の維持、台湾軍の維持、台湾の一部外交権の維持など、10の特権を享受出来ると提案しています。[2]
台湾の蔡英文大統領は、台湾の民主主義を一片たりとも譲らないとして、強硬な態度を取り続けていますが、非妥協的な姿勢は、中国との軍事紛争につながることになります。むしろ、台湾の人々は、より現実的な妥協の道を選ぶような気がします。
既得権益にしがみつくアメリカやイギリス、日本は、アジアにおいて、中国・ロシアと対峙する冷戦時代の安全保障枠組みをなんとか維持しようとしています。しかしながら、歴史の大きな流れを変えることは出来ないでしょう。時代錯誤のイギリスは、新造空母のクイーン・エリザベスをアジアに派遣すると息巻いていますが、中国の中距離弾道ミサイルの存在を考えれば、ただの浮かぶ棺桶になる運命でしょう。逆に、中国は、ミサイル駆逐艦をバルト海に派遣し、いつでもロンドンに核巡航ミサイルを撃ち込める態勢を取るかも知れません。
いずれにせよ、フィリピンから始まり、韓国、そして、台湾と進む、中国との結び付きを強める流れは、必然的にアジアの安全保障の枠組みにも影響を与えることになります。
先日、フィリピンのロレンザーナ国防大臣は、南シナ海で中国とアメリカの間で軍事紛争が生じた場合、フィリピンーアメリカ相互防衛条約によりフィリピンがアメリカ軍を防衛する義務を負うため、フィリピンが自動的に軍事紛争に巻き込まれる危険があるとし、フィリピンーアメリカ相互防衛条約の存在意義について疑問を投げかけました。[3]
同じことは、韓国についても言えます。中国とアメリカの間で軍事紛争が生じた場合、米韓相互防衛条約により韓国がアメリカ軍を防衛する義務を負うため、韓国が軍事紛争に自動的に巻き込まれることになります。韓国でも、米韓相互防衛条約の存在意義に関する議論が始まるでしょう。
台湾の親中国派・国民党では、すでに中国との間で平和条約を結ぶことを提案する幹部も現れています。[4]

間もなく、日本でも、虚偽と偽装に支えられた安倍政権が空中分解し、新しい政権は、中国、フィリピン、韓国、台湾、ASEAN諸国などと協力し、冷戦時代の安全保障の枠組みに代わる、中国・アジア諸国・アメリカによる「地域的集団安全保障体制」構築の議論を開始することになるでしょう。
集団安全保障の具体例としては、国際連合やOSCE、ASEAN地域フォーラムなどをあげることが出来ます。集団安全保障においては、「加盟国の中に」地域の安全を脅かす国が現れた場合、他の加盟国が協力して、その対処にあたることになります。
そのような集団安全保障の仕組みがアジアにおいて構築された場合、集団安全保障機構の総会あるいは理事会における決議に基づき、たとえば、域内のテロ組織や海賊を撲滅するために、中国の人民解放軍、日本の自衛隊、アメリカ軍が協力して対処することになります。
また、域内で地震や津波などの災害が発生した場合、中国の人民解放軍、日本の自衛隊、アメリカ軍が協力して災害救助活動を行うことになります。
各国が理性的に判断・行動すれば、冷戦時代の安全保障の枠組みから、中国・アジア諸国・アメリカによる「地域的集団安全保障体制」への移行は、平和裏に進むことになるでしょう。
しかしながら、もし仮に既得権益にしがみつき、移行に抵抗する勢力が軍事力に訴えた場合、戦場となるのは日本です。
参照資料:
(1) "Arrangements for Kim Jong-un's Russia visit to
restart soon, says diplomatic source", March 7th 2019, TASS
(2) "Chinese general lists 10 'privileges' Taiwan will
'enjoy' under 'one country, two systems' ", March 5th 2019,
Taiwan News
(3) "Philippines warns US treaty could drag it into war as B-52 bomber flies over South China Sea", March 6th 2019,
CNN
(4) "Wu Den-yih says KMT could sign peace treaty if it
regains presidency next year", February 15th 2019, Taipei
Times
註記: 上記の見解は、私個人のものであり、いかなる団体あるいは政党の見解をも反映するものではありません。
私自身は、いずれの政党・政治団体にも所属していません。あくまでも一人の市民として、個人として発言しています。民主主義と平和を実現するために発言しています。