【ヨーロッパの金融資本とアメリカ保守派は、ファシズム体制の独裁国家を作り、共産主義・社会主義国と戦わせることについて】

1. 共産主義国対策としてのファシズム体制独裁国家

ヨーロッパの金融資本とアメリカ保守派の手法は、いつも同じです。歴史をご覧いただくと、すぐにお気付きいただけると思います。

それも当然のことです。同じ手法が常に有効だったからです。そのため、同じ手法が繰り返し使われます。

1917年にロシアで社会主義革命が成功し、ソ連が成立したのち、ヨーロッパの金融資本も、アメリカ保守派も、ソ連をいかに崩壊させるかを考えました。ソ連が経済的に驚異的な成長を見せ、ヨーロッパ諸国やアジア諸国にも共産主義の影響が拡大したからです。

そこで、ヨーロッパの金融資本とアメリカ保守派は、ヨーロッパに反共主義の独裁国家を作り、それぞれの国の共産主義者を弾圧させるとともに、複数の反共主義独裁国家間で軍事同盟を結ばせ、ソ連に侵攻させることにしました。それがファシズム国家のナチス・ドイツとムッソリーニのイタリアです。

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ナチス・ドイツは、反ユダヤ主義でもあったため、初めフランスに侵攻してフランスを占領、次にイギリスに対しても空爆を続けました。しかしながら、イギリスへの上陸作戦がきわめて困難であることが分かると、ヒトラーは方向を転じ、独ソ不可侵条約を破り、仇敵であるソ連への侵攻を開始しました。1941年の夏のことです。

第2次世界大戦のヨーロッパ戦線における真の激戦は、独ソ戦です。両国は、まさに死力を尽くして戦いました。当初ナチス・ドイツは、電撃的な進撃を続け、モスクワに迫りましたが、大寒波に見舞われて進撃がストップします。その後、態勢を立て直したソ連が、1943年にスターリングラードの戦いなどで勝利を収め、ドイツを押し戻します。

ソ連の独裁者スターリンは、イギリスとアメリカに対し、早く西ヨーロッパで上陸作戦を敢行し、第2戦線(西部戦線)での戦いを始めるよう求めます。しかしながら、イギリスとアメリカは、上陸用舟艇の生産の遅れなどを理由にナチス・ドイツとの地上戦開始を遅らせ、ソ連へ物資の援助をするのみでした。何のことはない、イギリスも、アメリカも、ナチス・ドイツとソ連が死力を尽くして戦い、互いに殺戮し消耗し合うのを待っていたわけです。

結局、イギリスとアメリカは、1944年の6月にフランスのノルマンディーで上陸作戦を敢行。東から進撃するソ連と、西から進撃するイギリス・アメリカ軍が、ドイツ本土に攻め込み、1945年5月にナチス・ドイツが降伏します。

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第2次世界大戦で勝利したものの、参戦国中、最大の死傷者数を記録したのがソ連です。独ソ戦の結果、ソ連では1500万人の軍人が死亡し、民間人を含めると実に2000〜3000万人が死亡したとされています。もし独ソ戦による多大な死傷者がなければ、ソ連の経済成長は続き、その影響力もより拡大していたことでしょう。


2. 社会主義国対策としてのファシズム体制独裁国家

それと同じことが、現在起こっています。かつてのソ連に代わり、急速な経済成長を続けているのが社会主義国の中国です。中国は、2020年にアメリカを抜き、世界一の経済大国になると予想されています。さらに、一帯一路政策により、中国の経済的・政治的影響力は、中央アジアから中東、東アフリカにまで拡大しつつあります。

そこで、ヨーロッパの金融資本とアメリカ保守派は、かつて有効であった同じ手法を再び使うことにしました。再びファシズム体制の独裁国家を作り、社会主義国家の中国と戦わせることにしました。

そのファシズム体制の独裁国家とは、言うまでもなく、日本のことです。

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この点、日本には、言論の自由があるではないか、ナチスのような突撃隊による反対派への暴力もないではないか、また、ユダヤ人差別もないではないか、したがって日本の現状はファシズムではない、という反論があるかも知れません。

しかしながら、日本の大手メディアは、政府のコントロール下にあり、政府に批判的なコメンテーターは大手メディアから全て消えました。記者クラブを通じ、報道機関も官邸の意向を忖度している状況です。

また、ナチスの突撃隊のような目に見える暴力はありませんが、共謀罪法を利用した国民情報の収集に基づく、様々な謀略が秘密裡に行われているかも知れません。

さらに、債券市場・株式市場に国家が介入し、日銀が国債・株式を大量に買い入れ、多くの上場企業の筆頭株主が日銀になっています。日本経済は、すでにナチス・ドイツのような統制経済になっています。そして、与党・政府によるLGBT差別は、形を変えた反ユダヤ主義です。

何よりも、日報問題に見られるように、自衛隊に対する国会による文民統制が全く効かず、自衛隊の活動が国民に開示されない状況です。国民・国会のコントロールが及ばない以上、自衛隊は何をするか分かりません。


3. 琉球列島および奄美諸島の要塞化とアメリカのオフショア・バランシング戦略

そのようなファシズム体制の下、現在、琉球列島(宮古島と石垣島)と奄美諸島(奄美大島)において、自衛隊の対艦ミサイル・対空ミサイル基地の建設が急ピッチで進められています。

今や時代は、制空権をめぐる航空戦の時代から、弾道ミサイルを撃ち合うミサイル戦の時代に移っています。

1996年の台湾危機以降、中国は、アメリカの空母打撃群が中国本土および中国領海に近づくことを防ぐため、短距離・中距離ミサイルを中国本土に大量に配備し続けました。いわゆる「接近阻止/領域拒否(A2/AD)戦略」です。[1]

その結果、中国は、すでに日本列島、東シナ海、南シナ海を射程に収める1000発を超える中距離弾道ミサイルを保有しています。在日米軍基地も、自衛隊基地も、いつでも破壊出来る態勢です。

RAND研究所のレポート「THE U.S.-CHINA MILITARY SCORECARD」において示されているように、沖縄の嘉手納基地の滑走路は、わずか2発の弾道ミサイルの着弾で使用不可能になります。建設が予定されている辺野古基地も同様です。航空機の離発着はすぐに不可能になります。[2]

また、海上を移動する第7艦隊の空母打撃群に対しても、中国が、戦術核を搭載した中距離弾道ミサイルを使えば、これを殲滅出来る状況です。アメリカの空母打撃群は、中国本土に近づけません。

このため、現在、東アジア、東シナ海、南シナ海では、中国がアメリカに対し、軍事的優位を確立しつつあります。

そこで、アメリカは、中国に対抗するため、日本政府に琉球列島および奄美諸島を「浮沈空母」として要塞化させることにしました。

奄美諸島および琉球列島に建設中の自衛隊のミサイル基地には、移動式の対艦ミサイル・対空ミサイルが配備される予定です。そして、基地周辺には、移動式ミサイルを格納するため、地中深く多数の長大なトンネルが掘られると思われます。

多数の長大なトンネル内に格納された移動式ミサイルは、外部からはその位置を特定することが出来ません。そのため、たとえ中国のミサイル攻撃や空爆を受けても、多くの移動式ミサイルは破壊を免れ、反撃し続けることが可能になります。まさに「浮沈空母」です。

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奄美大島・大熊地区において建設中のミサイル基地
(写真出典: 小西誠さんの2018年9月1日付ブログ記事「軍事要塞に変貌する奄美―種子島(馬毛島)―薩南諸島」)[3]

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奄美大島・瀬戸内町において建設中のミサイル基地
(写真出典: 小西誠さんの2018年9月1日付ブログ記事「軍事要塞に変貌する奄美―種子島(馬毛島)―薩南諸島」)

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宮古島において建設中のミサイル基地
(写真出典: 小西誠さんの2018年9月7日付ブログ記事「政府は、自衛隊全体を「災害派遣部隊」として根本から再編成せよ」)[4]

現在、日本政府は、あくまでも尖閣諸島の防衛のため、および奄美諸島や琉球列島を通過する中国の軍艦や航空機に備えるため、対艦ミサイル・対空ミサイルを琉球列島および奄美諸島に配備するとしています。

しかしながら、建設中の基地はきわめて大規模であり、将来的には、より射程の長い中距離ミサイルの配備も想定されているのかも知れません。

中国の中距離ミサイルにより、アメリカの水上艦艇は、東シナ海・南シナ海において、自由な活動が出来なくなりました。これに対抗して、自衛隊が琉球列島および奄美諸島に中距離ミサイルを配備すれば、今度は中国の水上艦艇が東シナ海・南シナ海で自由に活動出来なくなります。東シナ海・南シナ海は、まさに「死の海」になります。

さらに、もし仮に日本が憲法9条を改定した場合、日本は攻撃的兵器の配備を開始し、琉球列島および奄美諸島に、より射程を伸ばした中距離ミサイルを配備するかも知れません。中国の上海や天津、北京まで射程に収める中距離ミサイルを配備するかも知れません。そして、日本は戦術核の配備も行うかも知れません。

現在、アメリカは、アメリカ自らが中国やロシアと戦うのでなく、地域の同盟国を中国やロシアと戦わせ、自らは後方から指令を出す、いわゆるオフショア・バランシング戦略を進めています。自衛隊による琉球列島および奄美諸島の要塞化は、まさにオフショア・バランシング戦略の具体化になります。[5]

仮に日中間で軍事衝突が起こっても、アメリカは、中国と日本の軍事衝突に巻き込まれることを出来るだけ避け、日本に対し情報の提供や物資の提供などを行うだけでしょう。すでに2015年の日米新ガイドラインにおいて、自衛隊は島嶼攻撃を阻止する第一義的な責任を有する、と定められています。

今後、琉球列島および奄美諸島の要塞化が進めば、近い将来、琉球列島あるいは奄美諸島を通過する中国軍艦艇と自衛隊の間で、何らかの軍事衝突が偶発的に起こるかも知れません。あるいは、かつての盧溝橋事件のように、日本側が謀略で意図的に中国との軍事衝突を引き起こすかも知れません。

琉球列島および奄美諸島付近で日中の軍事衝突が繰り返され、さらに、琉球列島および奄美諸島に中国の上海や天津、北京までをも射程に収める中距離ミサイルが配備され、戦術核の配備も行われた場合、事態をコントロール出来ない中国共産党政権に対し、中国国民の不満が高まるかも知れません。

かつて、ソ連では、アフガン戦争における軍事的な失敗が体制崩壊のひとつのきっかけとなりました。アメリカのオフショア・バランシング戦略の目的は、琉球列島および奄美諸島の要塞化を通じ、中国を地域的な軍事紛争に引きずり込み、中国の体制に揺さぶりをかけることにあるものと思われます。

そこにおいては、軍事的効率性・政治的目的の実現のみが追求され、住民の生命・身体の安全への考慮は皆無です。

73年前の1945年、沖縄戦において、日本軍の沖縄現地司令部は、本土決戦に向けた時間稼ぎの持久戦を行なうことを決定、守備隊司令官の牛島将軍は、日本軍をじりじり後退させ、なんと民間人のみなさんが避難している地域に日本軍を移動させました。その結果、まさに避難地域そのものが戦場となり、避難民のみなさんが砲火にさらされることとなりました。

そのため、沖縄戦での日本側の死亡・行方不明者18万8千人のうち、実に半数の9万4千人が民間人でした。日本の中央政府は、沖縄を犠牲にして、本土の利益を守りました。

今回も、日本の中央政府は、アメリカのオフショア・バランシング戦略の下、琉球列島を戦場にし、沖縄を犠牲にしようとしています。日本保守派の手法も全く変わらないということです。アメリカのオフショア・バランシング戦略の目的は、中国を東アジアの紛争に引きずり込み、中国の共産党政権に揺さぶりをかけることです。


4. イージス・アショアの攻撃的兵器への転用可能性

さらに、安倍政権は、イージス・アショアの導入を決定しました。その際、自衛隊の助言に基づかず、政治主導で決定しました。政治主導・官邸主導ということは、言い換えると、アメリカ保守派の意向に従ったということです。

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1つのイージス・アショア・サイトは陸上型SPY-1レーダーと24基のSM3ミサイルを備えるVLS(垂直発射システム)から構成されます。VLSはイージス艦で用いられているVLSを基に移動可能なものが開発されるそうです。基地周辺にトンネルを掘り、移動式VLSを格納することになるのかも知れません。

イージス・アショアの導入は、中国とロシアから見れば一線を越えた行動だと思います。

というのも、イージス・アショアに装備されるSM3ミサイル(スタンダード・ミサイル3ブロックIIA)は、射程距離が2500kmで、設置が予定されている萩市と秋田市から、中国の上海も、天津も、北京も、また、ロシアのウラジオストックも、射程に収めることになるからです。

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(図出典: 長周新聞2017年12月16日号)[6]

イージス・アショアに装備されるSM3ミサイルの弾頭には、飛来する弾道ミサイルに体当たりして迎撃するための飛翔体が装着されており、日本政府は、あくまでも防衛のための兵器として運用すると説明しています。

しかしながら、今後、もし自民党の改憲案通りに憲法が改定され、攻撃的兵器の導入が可能となれば、イージス・アショアは、すぐに攻撃用兵器へ転用が可能です。弾頭を通常爆薬に変えれば良いだけだからです。さらに、「戦術核」搭載の可能性もあります。

もし憲法が改定され、攻撃的兵器の導入が可能になれば、日本の兵器産業が活発化し、ドローンなどの無人兵器、レーザー兵器、AIの軍事への応用など、様々な兵器の開発・導入も一気に進むことになるでしょう。

そのため、今後、中国とロシアは、日本の憲法改定と再軍備を阻むため、日本に対し様々な政治工作・諜報活動を行うものと思われます。

そして、それでもなお日本の憲法改定と再軍備をとどめることが出来ないとき、中国とロシアは、最終的に、日本に対し軍事的手段を取ることになると思います。それ以外に日本の暴走を止める手段がないからです。


5. 日本が改憲した場合、中国およびロシアが日本に対し軍事的手段を取る可能性

中国も、ロシアも、日本の暴走の背後にアメリカのオフショア・バランシング戦略があることを知っています。そして、中国も、ロシアも、日本がきわめて攻撃的で無謀な国家であることを知っています。日本人は、歴史的に、客観的な国力・軍事力の違いを無視して大国に対し戦争を仕掛ける民族です。また、間も無く自衛隊は、海外で中国やロシアに対し妨害活動を開始するでしょう。

そのため、日本の憲法が改定された場合、中国とロシアは、日本の軍国主義が本格的に復活する前に、何よりも日本が核武装する前に、日本に対し比較的早めに軍事的手段を取ることになると思われます。

ロシアは、旧ソ連の時代、1939年に勃発したノモンハン事件の経験から、優越した兵器を使い、力の差を見せつければ、日本は引き下がるということを知っています。

また、中国も、日清戦争、日中戦争の教訓から、小規模な衝突を繰り返すのでなく、短期に圧倒的な戦力を集中的に投入することが重要だと考えることでしょう。

きっかけは、尖閣諸島における軍事衝突かも知れません。南シナ海における軍事衝突かも知れません。台湾危機かも知れません。いずれにせよ、中国は、まず自衛隊に先に攻撃させることになるでしょう。

中国は、すでに日本全土を射程に収める1000発を超える中距離弾道ミサイルを保有しています。一旦、軍事衝突が発生すれば、紛争は一気にエスカレートし、中国は、陸海空・宇宙・サイバー戦・電子戦を総合的・体型的に駆使し、圧倒的な戦力を集中的に投入し、日本の自衛隊の防衛システム・戦闘システムを破壊するでしょう。[7]

ロシアは、攻撃型原潜を派遣し、中国の軍事行動を支援するかも知れません。

アメリカのオフショア・バランシング戦略に従って日本が憲法改定と再軍備を進めれば進めるほど、中国とロシアの軍事的協力が深まります。[8]

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RAND研究所研究員のシュミレーションでは、中国と日本の間で軍事衝突が起こった場合、24時間以内に自衛艦の20%が破壊されると予想しています。[9]

たとえば、中国から見れば、奄美諸島および琉球列島の自衛隊のミサイル基地を全て破壊し、山口県と秋田県のイージス・アショアを破壊し、自衛艦の20〜30%を撃沈し、自衛隊航空機の30〜40%を破壊すれば、十分な戦果をあげたと言えることになるでしょう。数千名の自衛官が損失することになります。

そして、仮に日本が予想以上の抵抗をするときは、中国は躊躇なく「戦術核」を投入し、日本の継戦意思を砕くでしょう。

アメリカは、米軍あるいは米軍基地が直接攻撃を受けない限り、介入しません。日本に対し、情報と物資を提供するだけです。すでに2015年の日米新ガイドラインにおいて、自衛隊は島嶼攻撃を阻止する第一義的な責任を有する、と定められています。そのため、事実上、中国およびロシア対日本の戦いになります。


6. 中国と日本の軍事衝突のきっかけ ー 尖閣諸島・南シナ海・台湾危機

中国と日本の軍事衝突のきっかけは、尖閣諸島における軍事衝突かも知れません。南シナ海における軍事衝突かも知れません。あるいは、台湾危機かも知れません。

尖閣諸島周辺では、現在までのところ、中国も日本も巡視船を航行させていますが、もし両国間の緊張が高まり、軍艦を投入するような事態になれば、軍事衝突の危険性が一気に高まります。

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また、日本の海上自衛隊は、9月、南シナ海でイギリス海軍と共同軍事演習を行いました。たとえば、まず中国軍の艦艇とイギリス軍の艦艇が偶発的に軍事衝突を起こし、そこに日本の自衛艦が巻き込まれるという可能性もあります。

しかしながら、中国が本格的に軍事力を行使する可能性が一番高いのは台湾危機であると思われます。

中国は、すでに2005年に「反国家分裂法」を制定し、仮に台湾が独立を宣言した場合、軍事的に介入することを明文化しています。言い換えますと、たとえ軍事的に大きな困難が予想されても、台湾が独立を宣言すれば、中国は自動的に軍事介入するということです。

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一方、アメリカは、国内法の「台湾関係法」に基づき、台湾防衛のため、軍事力を行使します。

その場合、台湾およびアメリカからの要請を受け、日本は、安保法制に基づき、集団的自衛権を発動、中国を攻撃することになります。

中国との軍事紛争の際に適用されるエアシー・バトル戦略によると、中国との軍事紛争が生じた際、アメリカは、空母など水上艦艇の主力と航空機を中国の弾道ミサイルの届かないグアム島やパラオへ退避させるとしています。

そのため、当初、主な戦闘は、中国軍と台湾軍・日本の自衛隊との間で、台湾と琉球列島を戦場として行われることになるでしょう。[10]

そして、かつてドイツとソ連が殺戮し合い消耗し合うのをイギリスとアメリカが待っていたように、中国と台湾・日本が戦い、消耗し合ったあとで、とくに中国が多くの弾道ミサイルを消耗したあとで、初めてアメリカ軍の主力が参戦することになると思われます。[11]

中国と台湾・日本の戦いを観察したアメリカは、中国がどのような指揮・命令系統で弾道ミサイルを発射するのか、どのようなサイバー攻撃を行うのか、どのような妨害電波を駆使して電子戦を行うのか、等々について情報を集め、対策を立てることが出来ます。


7. 中国と日本の軍事衝突の政治的・経済的影響

なお、中国と日本が軍事的に衝突した場合、日本から部品を輸出し、中国で組み立てる経済構造は中断することになります。その影響は10年、場合によっては20年以上続くでしょう。

そのため、中国は、一帯一路をさらに促進し、ヨーロッパ諸国との経済的結び付きを強めることになるでしょう。一方、日本は、ますますアメリカ経済に依存するようになるでしょう。

その結果、もっとも得をするのが、ヨーロッパとアメリカです。

アメリカの目的は、中国を東アジアの紛争に引きずり込んで共産党政権に揺さぶりをかけるとともに、中国と日本の経済関係を阻害することですから、その目的は達成されるわけです。

ちなみに、仮に日本で政権交代が起こっても、新しい政権は、外国金融資本の影響を強く受けると予想されますので、やはり日本は中国との軍事衝突に向かうことになると思われます。


8. 提言: 冷戦型の軍事的対立に代わり集団安全保障による平和の実現へ

現在、日本では、与党はもちろん、野党の立憲民主党でさえ、日米安保条約体制の堅持をうたっています。

しかしながら、日米安保条約は、冷戦時代に締結された軍事同盟です。今後、アメリカが中国との対立を深め、オフショア・バランシング戦略を進めれば、日本は米中対立の最前線に立たされ、まさに日本が戦場となる危険性が高まることになります。

そのため、日本国民は、日米安保条約体制に代わる新しい安全保障体制を構想・構築すべきです。日米安保条約体制に代わり、中国およびアメリカとアジア諸国が構成する集団安全保障体制により地域の平和と安定を維持していくべきです。[12]

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集団安全保障の具体例としては、国際連合やOSCE(欧州安全保障協力機構)、ASEAN地域フォーラムなどをあげることが出来ます。集団安全保障においては、「加盟国の中に」地域の安全を脅かす国が現れた場合、他の加盟国が協力して、その対処にあたることになります。

そのような集団安全保障の仕組みが、中国、アメリカ、アジア諸国の協力により、アジアにおいて構築された場合、集団安全保障機構の総会あるいは理事会における決議に基づき、たとえば、域内のテロ組織や海賊を撲滅するために、中国の人民解放軍、日本の自衛隊、アメリカ軍が協力して対処することになります。

また、域内で地震や津波などの災害が発生した場合、中国の人民解放軍、日本の自衛隊、アメリカ軍が協力して災害救助活動を行うことになります。

さらに、域内に、核保有を進めようという独裁国が現れた場合、その抑制のため、中国、日本、アメリカが協力することになります。

アジアの平和を維持するため、新しい、あるべき安全保障体制に関し、広範な国民的議論を開始すべきです。男性・女性、全ての年齢層の国民が参加し、新しい、あるべき安全保障体制について議論を開始すべきです。

まず尖閣諸島の領有権問題を棚上げし、中国との正常な友好関係を回復すべきです。

日本国民のみなさんが、自由と権利、平和と独立を得たいのであれば、民主主義を進化させ、国民のみなさんが決定権を持つ必要があります。そのためには、ドイツのように、労働組合の活動を活発化させ、各地域に多様で活力のある中小企業を成立させ、地方政府の権限を強めるとともに、再生可能エネルギーを通じた、分散型の経済成長を実現させて行く必要があります。

民主主義は、共同行動です。自分ひとりが得をしようとするのでなく、みんなで協力して権利と自由を獲得して行く。それが、民主主義です。

国民が、自ら真実の情報を集め、自ら議論し、自ら決定する。それが、民主主義です。

日本国民のみなさんが民主主義を進化させ、決定権を持たない限り、たとえ政権交代が起こっても、今後も、独裁的政治家であれ、官僚であれ、外国勢力であれ、国民のみなさん自身以外の勢力が決定権を持ち続けることになるでしょう。


註記: 上記の見解は、私個人のものであり、いかなる団体あるいは政党の見解をも反映するものではありません。


参照資料:
(1) AirSea Battle, Center for Strategic and Budgetary Assessments, 2010

(2) The US-China Military Scorecard, RAND Corporation, 2015

(3) 小西誠さんの2018年9月1日付ブログ記事「軍事要塞に変貌する奄美―種子島(馬毛島)―薩南諸島」

(4) 小西誠さんの2018年9月7日付ブログ記事「政府・自衛隊は、イージス・アショア、自衛隊の南西シフト態勢などの大軍拡を直ちに中止し、自衛隊全体を「災害派遣部隊」として根本から再編成せよ。」

(5) "The Case for Offshore Balancing - A Superior U.S. Grand Strategy" by John J. Mearsheimer and Stephen M. Walt, Foreign Affairs, July/August 2016 Issue

(6) 「防衛隠れ蓑にした攻撃拠点化 イージス・アショア配備の意味」、2018年12月16日、長周新聞

(7) "Systems Confrontation and System Destruction Warfare: How the Chinese People's Liberation Army Seeks to Wage Modern Warfare" by Jeffrey Engstrom, February 2018, Rand Corporation

(8) "What Russia's Vostok-18 Exercise with China Means" by Lyle J. Goldstein, September 5th 2018, The National Interest

(9) "How FP Stumbled Into a War With China — and Lost", January 15th 2016, Foreign Policy

(10) "China might actually seize Japan's southern islands" by James Holmes, April 10th 2018, SBS News

(11) "Asymmetric Warfare, American Style" by Toshi Yoshihara and James R. Holmes, U.S. Naval Institute Proceedings Magazine - April 2012 Vol. 138/4/1,310

(12) "Collective Security Is America's Only Hope", David Santoro, October 15th 2017, The National Interest