【第3回「友愛政治とコミュニタリアニズム研究会」ー 新しい政治理念の確立を目指して (憲法と民主主義)】

7月16日、都内ホテルの会議室を会場として、第3回「友愛政治とコミュニタリアニズム研究会」が開催されました。

研究会は、東アジア共同体研究所理事長・元内閣総理大臣の鳩山友紀夫(由紀夫)さんと、市民政治バンド代表・元衆議院議員の首藤信彦さんが主宰し、千葉大学教授の小林正弥さんが講師を務められます。

研究会の目的は、混迷を深める日本政治、国際政治を打開するべく、日本の個人、社会、地域、アジアと世界を包含する新しい政治の理念と運動を作り出すことです。

その際、参考になるのが1990年代からアメリカで、混迷するリベラリズムに対して出現したコミュニタリアニズムです。これは、古い共同体への回帰を目指すものではなく、国家を超えた共同体の構成員として、「善い生き方」の実現も含めて正義を考え、新しい政治の理念を創り出す思想だそうです。

研究会では、講師の講義、そして、参加者の議論を通じ、新しい友愛政治を創建し、現実の状況の中から新たな活路を切り開いて行くことを目指しています。


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(写真出典: 首藤信彦さんの7月16日付FACEBOOK記事)


第3回の研究会でも、冒頭、鳩山さんから当日の研究会のテーマに関連してスピーチがありました。

鳩山さんは、安倍政権は国家主義的傾向を持っており、人間が国家の手段になろうとしていると指摘しました。そして、ヨーロッパ統合の先駆者クーデンホフ・カレルギーの言葉を引用しつつ、国家は目的ではなく、国家は手段であるとおっしゃいました。

その上で、鳩山さんは、互いを目的とする人間関係、互いを手段としない、一人一人が大切にされる社会を構築していくべきであるとおっしゃいました。

鳩山さんは、安倍政権は本当に許されない状態になっている、この研究会を通じ、安倍専制政治に対置する新しい政治理念を打ち立てて行きたいと決意を示されました。

研究会では、まず首藤さんから、世界文化遺産「ニューラナーク」とロバート・オーウェンについて、プレゼンテーションがありました。ロバート・オーウェンのユートピア社会主義が、空想的なものではなく、あるべき未来の姿を構想した上で、今出来ることを行うというものだったということ、工場法や児童教育などオーウェンが始めた社会改良運動が現代においても生きていることについて、ご説明がありました。

そのあと、小林教授から、コミュニタリアニズムを憲法および民主主義に適用した場合、どのような政治が実現出来るかについてご説明がありました。

小林教授は、現行憲法は、公共善・責任・幸福・平和などのポジティブな倫理的・精神的規定を含むので、これらを憲法理念として現実社会に活かすべきとして、コミュニタリアニズム的活憲の提案をされました。

また、法律と区別して、ポジティブな倫理的憲章を別に作る可能性についても言及され、これは政策の指針にもなり得ると発言されました。


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(首藤信彦さんと鳩山友紀夫(由紀夫)さん)


講義のあと、参加者との質疑応答の時間が設けられました。参加者から、質問やコメントが行われました。

私からは、下記の質問・コメントをさせていただきました。

「今回、この研究会を開催いただきまして、ありがとうございます。また、小林先生から有意義な講義をいただき、ありがとうございました。

その小林先生の講義の中で、一番最後に、ポジティブ倫理憲章のご提案がありました。これは本当に素晴らしいご提案であると思います。

私、これ、大賛成なんですね。ぜひこの研究会での議論を踏まえ、コミュニタリアニズムおよび友愛精神に基づき、ポジティブ倫理憲章を取りまとめ、発表していただきたいと思います。

ポジティブ倫理憲章という言葉を聞いたとき、憲章という言葉もあり、アメリカの独立宣言、THE DECLARATION OF INDEPENDENCEを思い出しました。ちなみに、独立宣言では、圧政が行われるとき、人民はその政府を倒し、新しい政府を樹立する権利があると書いてありますが、その下に、当時イギリスの植民地であったアメリカにおいて、イギリス国王がいかに専制的な政治を行っていたかが列挙されているんですね。イギリス国王は、植民地の議会を閉鎖した、勝手に税金を課した、司法を歪めた、などが列挙されてるんですね。

そこで、ポジティブ倫理憲章を作成する際も、現在の安倍政権の専制的政治について具体的に列挙し、それに対して、コミュニタリアニズム的な政治はこうなんだ、本来の民主主義はこうなんだという書き方をすると効果的ではないかと思います。ポジティブ倫理憲章が、ある意味、日本の独立宣言になるわけです。

そもそも民主主義は道具です。鳩山さんが第1回研究会でおっしゃられたように、基本理念・基本哲学によって政治は大きく違ってくると思います。基本となる政治理念・政治哲学が間違っていると、どんどん間違った方向へ行ってしまう。たとえば、あれだけ民主的なワイマール憲法の下でも、ナチス・ドイツが成立してしまった。

今日の研究会の初めに鳩山さんがおっしゃられたように、現在、日本では、安倍政権による専制的な政治が行われています。安倍政権で行われているのは、一部特定利益が優先される利権政治です。安倍政権の場合、その一部特定利益は、富裕層かも知れません、森友・加計問題のように個人かも知れません、あるいは、アメリカ軍かも知れません。

これに対置されるのが、国民全体の一般福利を実現する政治であると思います。ぜひコミュニタリアニズムおよび友愛精神に基づき、ポジティブ倫理憲章を取りまとめ、発表していただきたいと思います。」

私の発言の直後、小林教授から、「(ポジティブ倫理憲章については、リベラリズムの側から、政治が国民に理想を押し付けるべきではないという批判が来ることが予想されるので、) 実は、ポジティブ倫理憲章を資料に載せるのには勇気が必要でした。載せるかどうか最後まで迷っていました。ポジティブ倫理憲章を評価するコメントをいただき、非常に元気付けられます。」とのコメントがありました。

さらに、その小林教授のコメントを受けて、鳩山さんがマイクを握り、静かな声で、そして、確信に満ちた笑顔で、「ぜひ、倫理憲章、作りましょう。小林先生を中心に倫理憲章を作りましょう。」と宣言されました。私は、思わず拍手をいたしました。会場からも多くの賛同の拍手が寄せられました。静かなご発言の中に強い決意をこめられる、鳩山さんの政治家としての迫力、度量の大きさ、懐の深さを感じました。

鳩山さんは、さらに続けて、「トランプ大統領は、ある意味、アメリカ軍およびグローバル金融資本から独立している。その間に、日本が民主主義を復活し、アメリカから独立性を強めるチャンスである。」と発言されました。

私は、これは爆弾発言だなと思いました。世界政治を動かす二大勢力は、アメリカの軍産複合体と国境を超えたグローバル金融資本だからです。通常、日本の政治家は、アメリカの軍産複合体、または、国境を超えたグローバル金融資本、または、その両方にへつらうことで、政治生命を維持しようとします。ところが、鳩山さんは、そのどちらからも、日本が独立して行くことを表明しました。


研究会のあと、会場にいた鳩山さんとお話し、ポジティブ倫理憲章を作ると宣言していただいたことについて、感謝をお伝えすることが出来ました。ポジティブ倫理憲章を作るとのご発言で、すごくパワーをいただきました、とお伝えすることが出来ました。

さらに、私が、「爆弾発言。鳩山さんは、トランプ大統領が、ある意味、アメリカ軍およびグローバル金融資本から独立している。その間に、日本が民主主義を復活し、アメリカから独立性を強めるチャンスであるとおっしゃってましたが、良いんですか?、あんなこと言っちゃって。会場には、週刊誌の記者もいたみたいですが。」とお伝えすると、鳩山さんは、「あの程度の発言では、大々的に報道されませんよ。」とおっしゃっていました。

そこで、私が「そうなんですね。では、私のブログに書いても良いですか?。」とお尋ねすると、「良いですよ。」とのお答えでした。そこで、このブログに鳩山さんの爆弾発言について書かせていただいている次第です。


研究会の会場には、民主党政権で法務大臣を務められた、元衆議院議員の平岡秀夫さんもいらっしゃました。平岡さんは、質疑応答の時間に、コミュニタリアニズム的な憲法解釈では、集団的自衛権に反対、安保法制も廃棄となるそうだが、我々の政権のとき、アメリカからは圧力を感じた。アメリカにどう対処するのか、と質問をされていました。

小林教授が、国際政治、外交については、次回の研究会で議論します、と答えていました。

休憩時間に平岡さんとお話し、私から、「日米安保条約体制の下では、集団的自衛権に反対し、安保法制廃棄を求めると、アメリカから圧力を受ける。日本では、ほとんど全ての政党が安保条約体制を前提としている。日米安保条約体制に代わり、中国、アジア諸国、アメリカによる、アジアにおける集団安全保障体制を構築すべきではないか?。」とお伝えしたところ、平岡さんは、「民主党政権のとき、民主党が政権を離れたあと、党内で、集団安全保障について議論しました。国連憲章も、地域的集団安全保障について書いてありますよね。」とおっしゃっていました。

次回研究会は、2〜3週間後に開催されるそうです。

日本政治だけでなく、国際政治の混迷をも打開する、新しい政治理念と運動が、この研究会から生まれることが期待されます。