【アメリカ保守派が安倍首相を辞任させる可能性と与党別働隊としての野党 ー 国民一人一人が民主主義の理解を持つことが、不正と多数の横暴とファシズムを阻止し、日本に民主主義を定着させることについて】

1. アメリカ保守派が安倍首相を辞任させる可能性について

安倍政権は、森友学園問題・加計学園問題で、すでに行き詰まっていると思います。

アメリカ保守派も、日本の国民世論を注視しながら、安倍首相をいつ辞任させるかを検討していると思います。アメリカ保守派にしてみれば、安保法制の成立で目的は達しています。憲法改正をしなくとも、安保法制によって日本に集団的自衛権を行使させ、自衛隊を海外へ派兵することが可能だからです。

憲法改正は非常に困難です。国民投票の上、その過半数の賛成が必要となるからです。下手に憲法改正を試みて失敗すると、その反動で安保法制の正当性が揺らぎ、安保法制の維持も危なくなります。

しかしながら、安倍首相は、首相・自民党総裁である限り、客観的状況を無視してでも、憲法改正へ突き進むでしょう。安倍首相自身、政治家になったのは、憲法改正を行うためだと公言しています。

そのため、アメリカ保守派は、かつて安倍首相の祖父である岸信介を、日米安保条約を維持し、反米機運をそらすために辞任させたように、安保法制、特定秘密保護法、共謀罪法、内閣人事局を維持するために、安倍首相を辞任させることを検討していると思います。

また、安倍首相の在任を許すと、排外的・民族主義的ファシズムの傾向が強まり、外国金融資本にとっても好ましくないこととなります。

すでにトランプ政権は、北朝鮮問題でも、関税問題でも、安倍政権を全く相手にしていません。

日本の保守派メディアの一部も、安倍首相に不利な報道を始めています。自民党内では、来年の参議院選挙をにらみ、安倍首相の党総裁選3選をいぶかる声が出始めています。

そこで、アメリカ保守派は、安倍首相を時期を見計らって辞任させ、岸田氏や石破氏、野田聖子氏へ首相を交代させることを検討していると思います。安倍・麻生に比べれば、岸田氏や石破氏は無難に見えます。野田聖子氏なら初の女性首相で話題性があります。

さらに、今後、官製バブルが崩壊した場合、自民党・公明党が議席を減らす可能性があります。その場合、アメリカ保守派は、自公+維新の党政権、そして最悪、自公+維新の党+国民民主党政権で、安保法制を維持したいと考えていると思います。

維新の党は、実質的に安保法制に賛成であり、国民民主党も、一部修正を求めているものの、事実上安保法制容認の立場です。

日本では、野党と言われている政党も、そのほとんどが官僚あるいは資本の代弁者です。維新の党は、一貫して自民党の別働隊です。国民民主党は、党首も幹事長も財務省出身であり、官僚の勢力復活のための政党です。日本の野党は、そのほとんどが、与党が政権を維持するためのシステムの一部です。


2. 安倍政権による民主主義の諸原則の破壊について

安倍政権で行われてきたことを見ると、日本では、国民よりも、政権側・アメリカ保守派の方が、民主主義が良く分かっているようです。彼らは、何を破壊すべきかが分かっています。

民主主義は、複数の諸原則が相互に作用しながら機能する政治システムです。一つの原則が弱まると民主主義全体が弱まり、逆に一つの原則が強まると民主主義全体が強まります。

安倍政権は、民主主義の諸原則をひとつずつ潰してきました。

「政府の説明責任の原則」に対しては、国会での不誠実な答弁や虚偽答弁、文書の改ざん・隠蔽で、これを破壊しました。

「司法の独立の原則」に対しては、法務省による、司法人事の締め付けで、これを破壊しました。政府に不利な判決を下した裁判官が左遷され、政府に有利な判決を下す裁判官が昇進します。

「法の支配の原則」に対しては、内閣人事局による人事の締め付けと首相の意図の忖度を通じた人による支配、そして、恣意的な訴追権の運用で、これを破壊しました。安倍首相に不利な判断をした官僚が左遷され個人攻撃・人格攻撃を受ける一方、首相に有利な判断をした官僚が昇進します。また、首相に不利な人間が訴追され長期勾留される一方、首相に近いジャーナリストの犯罪がもみ消されました。

「報道の自由の原則」に対しては、大手メディア幹部の接待や記者クラブを通じた政権とメディアの癒着、政権に批判的なコメンテーターの排除、放送法に基づく電波停止の脅しで、これを破壊しました。

「文民統制の原則」に対しては、自衛隊幹部および防衛官僚による日報の秘匿や情報不開示により、これを破壊しました。

「立憲主義の原則」に対しては、憲法違反の安保法制の強行採決により、これを破壊しました。


3. 真の民主主義を実現するために必要なこと

悪辣な政治家を辞任させ、交代させるだけでは問題の解決にはなりません。たとえ悪辣な政治家を辞任させても、別の悪辣な政治家が権力を握るだけだからです。国民一人一人が、十分な力と健全な倫理観と民主主義の理解を持ち、悪辣な政治を許さないこと、それが不正と多数の横暴とファシズムを防ぐ、真の、そして、唯一の解決方法です。

たとえ安倍首相が辞任しても、別の政治家が、内閣人事局、特定秘密保護法、安保法制、共謀罪法を使って、多数の横暴を続けるだけです。

国民が主権を持ち、本当の民主主義が実現するためには、国民一人一人が十分な力と健全な倫理観と民主主義の理解を持つことが必要です。

残念ながら、日本では、民主主義の諸原則を理解している人がほとんどいません。学校教育が、民主主義の諸原則について教えないからです。日本のリベラルは、政府の個々の問題点を指摘する際に、同時に、根拠となる民主主義の原則を国民に伝え、その理解を広める必要があります。

アメリカやドイツでは、「法の支配」「政府の説明責任」「司法の独立」「多数決の原則と少数者の権利の保護」「自由で公正な選挙」「立憲主義」「文民統制」「地方分権」「言論の自由」「国民の知る権利」「報道の自由」「刑事手続上の基本的人権」などの民主主義の諸原則は小学生でも知っている常識中の常識です。

民主主義を漠然と理解しているだけでは、国民の権利と自由の侵害を防ぐことは出来ません。民主主義の諸原則を理解していないと、国民の権利と自由が侵害されたことにさえ気付きません。

国民一人一人が十分な力と健全な倫理観と民主主義の理解を持つまでは、日本の政治は、単にひとつの資本から別の資本への権力のたらい回しと官僚の影響力の拡大・減少に終始するだけでしょう。

一部の政治家や有識者、オピニオン・リーダーだけでなく、国民の一人一人が、民主主義の諸原則を十分に理解してこそ、不正と多数の横暴とファシズムを阻止し、日本に民主主義を定着させることが出来ます。

日本国民は、安倍政権によって破壊された民主主義の諸原則をひとつずつ復活させて行くことを通じ、自由と権利を取り戻し、戦争を回避し、自らの運命を自らの手で切り拓いていくことが出来るようになるでしょう。


参照資料:

民主主義の諸原則(英語版・抜粋)

(1) 民主主義の原則: 多数決の原則と少数者の権利の保護

(2) 民主主義の原則: 自由で公正な選挙

(3) 民主主義の原則: 政府の説明責任

(4) 民主主義の原則: 法の支配

(5) 民主主義の原則: 司法の独立

(6) 民主主義の原則: 文民統制

(7) 民主主義の原則: 地方分権

(8) 民主主義の原則: 報道の自由


民主主義の諸原則(日本語版・抜粋) リスト

(1) 民主主義の原則: 多数決の原則と少数者の権利の保護

(2) 民主主義の原則: 政府の説明責任

(3) 民主主義の原則: 法の支配

(4) 民主主義の原則: 司法の独立

(5) 民主主義の原則: 文民統制

(6) 民主主義の原則: 地方分権

(7) 民主主義の原則: 報道の自由