【総選挙の本当の争点と大局的・中長期的視点の重要性について】

安倍首相が、10月22日に総選挙を実施することを決定したというニュースが伝えられています。その決定の理由が、民進党に離党者が続いているとともに、都民ファーストの国政政党準備がまだ整っていないため、与党が勝利する可能性が一番高いということだそうです。

すなわち、次期総選挙は、国民の利害ための選挙ではなく、与党の利害ための選挙ということになります。本当に恥知らずの首相であり、非民主主義的な政権であると思います。

フランクリン・ルーズベルト大統領によると、ファシズムの定義は、私的パワーによる政府の私物化ですが、安倍政権は、民主主義の根幹をなす選挙をも私物化しているということであると思います。


安倍首相の決定を受け、現在、メディアは、来るべき総選挙の争点について、消費税や教育、子育て支援をあげ、議員のスキャンダルや個人的問題など、局所的、一時的な問題のみを伝えているようです。

しかしながら、総選挙の争点について考える際は、一時的・近視眼的問題に惑わされるのでなく、大局的・中長期的に、日本をどういう国にして行くのかを考える視点が一番大切であると思います。今回の総選挙においては、とくにその視点が重要です。

大局的・中長期的視点に立った場合、次期総選挙の争点は、「自公政権を継続させ、憲法改正と自主防衛・核武装へ向かうのか」あるいは「政権交代を実現し、憲法の平和主義を守り、外交による安全保障を目指すのか」の選択であると思います。それが総選挙の本当の争点です。以下、ご説明させて下さい。

もし、自公が勝利し、与党政権があと4年間継続したら、その間に与党政権は、秘密保護法、安保法制、共謀罪法を使い、反対派を押さえつつ、憲法改正と核武装を実現するでしょう。

核武装論者の小池百合子が主導する都民ファーストも国政に進出し、民進党を離党した保守派政治家とともに、憲法改正と核武装を主張し始めるでしょう。

この流れは、東アジアの情勢およびアメリカのオフショア・バランシング戦略と密接に連動しています。

北朝鮮の核兵器開発と度重なる核実験を受け、韓国ではアメリカ軍の戦術核を国内に配備すべきとの意見が過半数となっているそうです。さらに、韓国自前の核兵器を開発・配備すべきとの主張もあるようです。

日本においても、先日、石破元防衛大臣が、アメリカ軍の戦術核を国内に配備する可能性について言及しました。保守派の議員から非核三原則を見直すべきとの声が上がっています。間も無く、日本が、自前の核兵器を開発・配備すべきとの主張も起こってくるでしょう。

仮に韓国および日本にアメリカ軍の戦術核さらに自前の核兵器が配備された場合、対抗上、中国は、核兵器を大幅に増強するでしょう。東アジアにおいて核兵器と核兵器が至近距離で対峙する状況となります。

もしそうなったら、アメリカ軍の通常兵器などは無意味となります。在韓米軍、在日米軍は縮小され、グアム以東へ撤収されることになるでしょう。

そして、韓国、日本の防衛は、核兵器を中心とした「自主防衛」が基本となり、それにともない、ガイドライン、安保条約も改定されることになるでしょう。

アメリカは、北朝鮮問題を解決する予定はないようです。むしろ、危機を煽りつつ、東アジアの核ドミノへ持って行くつもりのようです。

2020年には、中国がアメリカを抜いて世界一の経済大国になると予想されています。この傾向が続けば、アメリカは、やがて経済力でも、通常兵力でも、中国に叶わなくなります。そこで、アメリカは、核兵器に頼ることにしたようです。

アメリカ軍を東アジアから撤収し、アメリカが、東アジアの紛争に巻き込まれない形を作った上で、アジアの国同士を対峙させ、戦わせるという戦略です。アジアの国同士が、偶発的衝突から全面戦争、核戦争へ至る可能性も視野に入れていると思います。これが、アメリカのオフショア・バランシング戦略です。


そのような事態に至らぬよう、日本は、外交による安全保障の実現を最大限追求するとともに、米中間の話し合いと包括的な軍縮を提案すべきです。北朝鮮、韓国、日本を含む北東アジアには、非核兵器地帯を設けるべきです。それこそが、日本の真の国益に適い、国民が求めていることだと思います。

大局的・中長期的視野で考えれば、政治的理念の違いを乗り越え、野党が選挙協力を行うべきことは明らかです。野党が選挙協力を徹底し、候補者を一本化すれば、与党の議席を大幅に減らすことが可能です。

逆に、もし野党が野党連携をやめれば、保守派は、秘密保護法、安保法制、共謀罪法を使い、戦前のように一部野党に対し、集中的に政治的・社会的攻撃を加えるでしょう。その結果、他の野党も国民も萎縮して、ファシズム体制が完成し、大政翼賛会状態になることは明らかです。

もし野党連携をやめれば、まさに保守派の思うつぼです。彼らにとって最大の脅威は、野党が一丸となって選挙協力を行い、候補者を一本化してくることです。なぜなら、総選挙における保守派の得票は、2009年の民主党による政権交代のときから全く変化していないからです。野党が大局的・中長期的な視点を国民に訴え、野党連携を通じて多数派を形成すれば、小選挙区制においては、一瞬で政権交代が可能です。


参照資料:
"How North Korea Is Ensuring a Nuclear Arms Race in Asia" by Michael Auslin, The National Interest, September 15, 2017