【21世紀のトルーマン・ドクトリンについて】
アメリカ民主党のティム・ケイン上院議員が、外交雑誌「FOREIGN AFFAIRS」の7/8月号に、論文「A New Truman Doctrine: Grand Strategy in a Hyperconnected World」を発表し、21世紀のトルーマン・ドクトリンを構築する必要性について主張しています。

元々、トルーマン・ドクトリンは、1947年に、アメリカのトルーマン大統領が提唱した外交・安全保障戦略で、ソ連をリーダーとする共産主義ブロックの拡大に対し、アメリカをリーダーとする民主主義ブロックを形成し、軍事・外交・経済において対抗して行こうとするものでした。
その後40年間にわたり、トルーマン・ドクトリンは、アメリカの外交・安全保障戦略の原則として機能し、最終的にソ連の崩壊という結果をもたらしました。
ケイン上院議員は、冷戦終結以降のアメリカが、一貫した国家戦略を失っているとし、21世紀のトルーマン・ドクトリンを構築すべきであると主張しています。すなわち、現在の世界が、アメリカやEU、日本などの民主主義諸国と中国やロシアなどの権威主義諸国、そして、イスラム国やNGO、多国籍企業などの非国家主体の3つの要素により構成されているとした上で、アメリカがリーダーとなり、民主主義諸国が協力し、民主主義を拡大、支援して行くべきであるとしています。
ケイン上院議員は、その際、まずアメリカが自らの民主主義を再構築し、民主主義の手本となるべきであるとしています。そして、軍事よりも、外交や経済によって、民主主義の拡大を実現して行くべきであるとしています。
私は、ケイン上院議員の主張に基本的に賛成です。冷戦終結以降、アメリカは、あまりにも軍事による影響力拡大に傾倒し過ぎました。民主主義の拡大においては、軍事によるレジーム・チェンジではなく、外交や経済を通じた改革促進を手段とすべきです。
ただ、私は、ケイン上院議員が主張するように民主主義諸国と権威主義諸国という枠組みを適用し、アメリカが中国とロシアと対抗して行くという戦略には反対です。アメリカは、中国を敵視するのではなく、将来的に民主化する潜在的可能性のある国として、友好的に遇するべきであると思っています。
アメリカは、現在、台頭する中国と復活したロシアという2大国と同時に対抗するという状況に至り、まさに苦境に陥っています。その結果、日本を何としてでも味方につけるため、安倍首相や麻生財務大臣、菅官房長官のような、言うことは聞くが能力のない政治家に頼らざるを得ない状況となっています。安倍政権は、中国に対抗するため、国民世論を無視して、秘密保護法、安保法制、共謀罪法を強行採決し、戦時体制の構築へと暴走しています。民主主義とは真逆の方向へ向かっています。
私は、アメリカの大学院でお世話になった教授を通じ、再三、「アメリカは、中国との友好関係を第一義としつつ、ロシアの影響力を抑えることに専念すべきだ。」とアメリカの有識者に伝えてきました。
というのも、中国は非常に活発な市場経済を持ち、商業、金融、製造業が発達しているからです。そのため、市場経済を基盤に民主化を進めて行くことが可能です。
これに対し、ロシアは、天然ガスと石油の輸出に経済も財政も依存しており、いわゆる「PETRO STATE」という性格を持ちます。そのため、経済的・政治的に権力が集中し、必然的に、独裁的・寡頭制的傾向を持つことになります。民主化が困難です。
アメリカは、現在、中国の経済的・政治的影響力を抑え込もうと必死になっています。これは、アメリカが、イギリスの帝国主義政策を鵜呑みにし、2番目の大国を叩くという戦略を取っているためです。しかしながら、その結果、アメリカは、中国とロシアの接近を許し、苦境に陥る結果となっています。
今からでも遅くありません。アメリカは、中国との友好関係を第一義とし、ロシアの影響力を抑えることに専念すべきです。それが、結果として、中国とロシアの蜜月関係を妨げ、アメリカが、相対的優位を得ることにつながるからです。
アメリカは、冷戦に勝利したときと同様、民主主義という道義的正当性を使うべきです。なぜなら、民主主義は、相手国の政府を飛び越え、相手国の国民に直接アピールする、もっとも強力な武器だからです。
アメリカが、軍事的に、中国を包囲しようとすると、防衛上、中国は共産党政権に権限を集中し、民主化が遅れることになります。中国への軍事的圧力を緩和することが、中国の民主化を促進することになります。
また、日本についても、現在のようなファシズム化の傾向を止め、徹底的な民主化を促進すべきです。それが、必ず中国の市民に影響を与え、中国の民主化を促進するからです。

アメリカは、民主主義を道義的正当性として使うことにより、そして、それによってのみ、世界のリーダーとしての地位を維持することが出来るでしょう。
アメリカは、中国とロシアという2大国と同時に対抗し続ける限り、衰退の途をたどるでしょう。
ケイン上院議員は、昨年のアメリカ大統領選挙において、副大統領候補として、ヒラリー・クリントン大統領候補とともに選挙戦を戦いました。もしクリントン候補が大統領になっていたら、すぐに21世紀のトルーマン・ドクトリンの構築とその実践に取り組んでいたことでしょう。
日本の野党政治家や民主主義団体、シンクタンクは、ケイン上院議員と国際的に連携し、民主主義拡大のための戦略の構築とその実践にあたるべきです。アメリカの次期中間選挙では、共和党のトランプ大統領への反発から、民主党が上院でも下院でも勝利するでしょう。その時から、21世紀のトルーマン・ドクトリンが始動するはずです。
参照資料:
(1) "A New Truman Doctrine: Grand Strategy in a Hyperconnected World" by Tim Kaine, Foreign Affairs July/August 2017 Issue
"Video: A 21st century Truman Doctrine?: U.S. foreign policy with Senator Tim Kaine", The Brookings Institution
アメリカ民主党のティム・ケイン上院議員が、外交雑誌「FOREIGN AFFAIRS」の7/8月号に、論文「A New Truman Doctrine: Grand Strategy in a Hyperconnected World」を発表し、21世紀のトルーマン・ドクトリンを構築する必要性について主張しています。

元々、トルーマン・ドクトリンは、1947年に、アメリカのトルーマン大統領が提唱した外交・安全保障戦略で、ソ連をリーダーとする共産主義ブロックの拡大に対し、アメリカをリーダーとする民主主義ブロックを形成し、軍事・外交・経済において対抗して行こうとするものでした。
その後40年間にわたり、トルーマン・ドクトリンは、アメリカの外交・安全保障戦略の原則として機能し、最終的にソ連の崩壊という結果をもたらしました。
ケイン上院議員は、冷戦終結以降のアメリカが、一貫した国家戦略を失っているとし、21世紀のトルーマン・ドクトリンを構築すべきであると主張しています。すなわち、現在の世界が、アメリカやEU、日本などの民主主義諸国と中国やロシアなどの権威主義諸国、そして、イスラム国やNGO、多国籍企業などの非国家主体の3つの要素により構成されているとした上で、アメリカがリーダーとなり、民主主義諸国が協力し、民主主義を拡大、支援して行くべきであるとしています。
ケイン上院議員は、その際、まずアメリカが自らの民主主義を再構築し、民主主義の手本となるべきであるとしています。そして、軍事よりも、外交や経済によって、民主主義の拡大を実現して行くべきであるとしています。
私は、ケイン上院議員の主張に基本的に賛成です。冷戦終結以降、アメリカは、あまりにも軍事による影響力拡大に傾倒し過ぎました。民主主義の拡大においては、軍事によるレジーム・チェンジではなく、外交や経済を通じた改革促進を手段とすべきです。
ただ、私は、ケイン上院議員が主張するように民主主義諸国と権威主義諸国という枠組みを適用し、アメリカが中国とロシアと対抗して行くという戦略には反対です。アメリカは、中国を敵視するのではなく、将来的に民主化する潜在的可能性のある国として、友好的に遇するべきであると思っています。
アメリカは、現在、台頭する中国と復活したロシアという2大国と同時に対抗するという状況に至り、まさに苦境に陥っています。その結果、日本を何としてでも味方につけるため、安倍首相や麻生財務大臣、菅官房長官のような、言うことは聞くが能力のない政治家に頼らざるを得ない状況となっています。安倍政権は、中国に対抗するため、国民世論を無視して、秘密保護法、安保法制、共謀罪法を強行採決し、戦時体制の構築へと暴走しています。民主主義とは真逆の方向へ向かっています。
私は、アメリカの大学院でお世話になった教授を通じ、再三、「アメリカは、中国との友好関係を第一義としつつ、ロシアの影響力を抑えることに専念すべきだ。」とアメリカの有識者に伝えてきました。
というのも、中国は非常に活発な市場経済を持ち、商業、金融、製造業が発達しているからです。そのため、市場経済を基盤に民主化を進めて行くことが可能です。
これに対し、ロシアは、天然ガスと石油の輸出に経済も財政も依存しており、いわゆる「PETRO STATE」という性格を持ちます。そのため、経済的・政治的に権力が集中し、必然的に、独裁的・寡頭制的傾向を持つことになります。民主化が困難です。
アメリカは、現在、中国の経済的・政治的影響力を抑え込もうと必死になっています。これは、アメリカが、イギリスの帝国主義政策を鵜呑みにし、2番目の大国を叩くという戦略を取っているためです。しかしながら、その結果、アメリカは、中国とロシアの接近を許し、苦境に陥る結果となっています。
今からでも遅くありません。アメリカは、中国との友好関係を第一義とし、ロシアの影響力を抑えることに専念すべきです。それが、結果として、中国とロシアの蜜月関係を妨げ、アメリカが、相対的優位を得ることにつながるからです。
アメリカは、冷戦に勝利したときと同様、民主主義という道義的正当性を使うべきです。なぜなら、民主主義は、相手国の政府を飛び越え、相手国の国民に直接アピールする、もっとも強力な武器だからです。
アメリカが、軍事的に、中国を包囲しようとすると、防衛上、中国は共産党政権に権限を集中し、民主化が遅れることになります。中国への軍事的圧力を緩和することが、中国の民主化を促進することになります。
また、日本についても、現在のようなファシズム化の傾向を止め、徹底的な民主化を促進すべきです。それが、必ず中国の市民に影響を与え、中国の民主化を促進するからです。

アメリカは、民主主義を道義的正当性として使うことにより、そして、それによってのみ、世界のリーダーとしての地位を維持することが出来るでしょう。
アメリカは、中国とロシアという2大国と同時に対抗し続ける限り、衰退の途をたどるでしょう。
ケイン上院議員は、昨年のアメリカ大統領選挙において、副大統領候補として、ヒラリー・クリントン大統領候補とともに選挙戦を戦いました。もしクリントン候補が大統領になっていたら、すぐに21世紀のトルーマン・ドクトリンの構築とその実践に取り組んでいたことでしょう。
日本の野党政治家や民主主義団体、シンクタンクは、ケイン上院議員と国際的に連携し、民主主義拡大のための戦略の構築とその実践にあたるべきです。アメリカの次期中間選挙では、共和党のトランプ大統領への反発から、民主党が上院でも下院でも勝利するでしょう。その時から、21世紀のトルーマン・ドクトリンが始動するはずです。
参照資料:
(1) "A New Truman Doctrine: Grand Strategy in a Hyperconnected World" by Tim Kaine, Foreign Affairs July/August 2017 Issue
"Video: A 21st century Truman Doctrine?: U.S. foreign policy with Senator Tim Kaine", The Brookings Institution