【台湾総統選挙の結果が日本の国家安全保障に与える影響について】

1月16日に投開票された台湾総統選挙では、野党民進党の蔡英文候補が勝利し、2016年5月から新しい台湾総統に就任することが決まりました。

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現職の国民党・馬総統が中国との関係強化を進めてきたのに対し、民進党・蔡英文氏は、いわゆる独立派です。

中国と台湾国民党は、1992年に、世界に中国はひとつであるという合意(1992年合意)に達しました。中国は中華人民共和国がひとつの中国、国民党は中華民国がひとつの中国という解釈ですが、少なくとも世界に中国はひとつであるという点では合意していました。

これに対し、民進党および蔡英文氏は、1992年合意を認めていません。言い換えますと、ふたつの中国が存在するという立場と考えられます。台湾独立に一歩近づくことになります。

中国は、台湾は一時的に離反しているひとつの省に過ぎず、将来、中国本土に統一されるという立場です。このため、台湾が独立に近づく動きを示すと、激しく反対の意思を表します。1995年、当時の李登輝総統が、現職の総統としてアメリカを訪問した際、中国は、台湾海峡で実弾演習を行いました。

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中国は、すでに2005年、「反国家分裂法」を制定し、仮に台湾が独立を宣言した場合、軍事介入して独立を阻止することを、国家の方針として、明文化しています。

一方、アメリカは、1979年、「台湾関係法」を制定し、台湾が武力による侵略を受けた場合、これを防衛するとしています。

このため、今後、蔡英文新総統が独立への歩みを進めると、台中関係が一気に緊迫することが予想されます。さらに、蔡英文新総統が事実上の独立宣言を行った場合、中国による軍事介入、アメリカによる軍事力行使が、必ず発生します。

その場合、台湾およびアメリカの要請を受け、日本は、安保法制に基づき集団的自衛権を発動、中国を攻撃することとなります。中国は、必ず反撃しますから、日本本土が戦場となります。

さらに、注目すべきは、仮に野党間協力が成功し、次期参議院選挙並びに衆議院選挙で勝利を収め、政権交代が実現、安保法制を廃棄したとしても、周辺事態法は残るということです。

このため、安保法制が廃棄されても、台湾が独立を宣言し、台湾有事が発生した場合、周辺事態法に基づき、日本はアメリカの後方支援を行うこととなります。台湾と日本との距離的近接性を考えると、前線も後方もないと言わなければなりません。また、軍事においては、後方支援すなわち兵站が第一の攻撃目標となります。そのため、中国は日本にある米軍基地を攻撃し、日本が戦場となります。

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中国は、すでに日本本土全体を射程に収める、数百発を超える弾道ミサイルおよび巡航ミサイルを配備しています。来年には一千発を超えると予想されています。中国が、日本を攻撃するときは、弾道ミサイルおよび巡航ミサイルによる反復攻撃が行われると予想されます。

野党および日本国民・市民のみなさまにおかれましては、今後、野党間協力・政権交代・安保法制廃棄を目指すとともに、与党政権並びに中国共産党、台湾民進党に働きかけ、台中関係が平和的に移行するよう、最大限の外交努力を求めていただきますよう、お願い申し上げます。

ご検討いただけましたら、幸いと存じ上げます。