【政治解決によるテロリズムの克服について】

2015年1月24日および2月1日、イスラム国による日本人人質殺害という事態が発生しました。また、11月13日、フランスのパリでイスラム国による大規模なテロが行われました。今後、日本が、イスラム国に対する軍事行動の後方支援を担うようなことがあれば、日本人および日本国に対し、テロ活動が行なわれる可能性があります。

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イスラム国には、外国人も参加しています。このため、日本本土に対する、アラブ系以外の外国人によるテロや日本人協力者によるテロが行なわれる可能性もあります。1月29日、国際原子力機関 (IAEA) の事務局長は、警備の薄い原子力発電所はテロリストの攻撃を受ける危険性があると警告しました。また、テロに対する新幹線の脆弱性も繰り返し指摘されています。

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国際社会のテロに対する戦いに、日本も参加しなくて良いのかという議論もあると思います。しかしながら、イスラム国を含む、中東の紛争は、武力では解決しません。政治解決のみが唯一の解決方法です。

イラクにおいて、多数派のシーア派イスラム教徒が政権を取ったのち、少数派のスンニ派イスラム教徒を抑圧したため、スンニ派が武器を調達し、テロや武力で対抗したことが、イスラム国拡大の背景にあると言われています。であるとすれば、少数派の基本的人権を保護し、その政治参加への途を開くことこそが、スンニ派の武装解除とテロリズムからの脱却を可能とし、問題の根本的解決につながるものと思われます。日本は、この分野で貢献すべきです。

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軍事行動以外の方法で、イスラム国拡大阻止に貢献したいと考えている国も多いと思います。日本は、これらの国々と協力しながら、活動して行くことが考えられます。

たとえば、インドネシアは、1億7千万人のイスラム教徒を有する、世界最大のイスラム教国ですが、穏健な民主主義国であり、人道主義・民主主義・社会的公正の原則 (Pancasila) の下、国内の多数派イスラム教徒、少数派イスラム教徒、キリスト教徒、ヒンドゥー教徒らが共存しています。インドネシアは、国内のイスラム教過激派(ジェマ・イスラミア)の動きを封じ込め、外国からの投資を呼び込むことに成功した経験も持ちます。

さらに、イスラム国に対する武器や資金の流入を断つことも大切と思われます。

日本の国家安全保障を実現するためには、軍事に偏重するのでなく、外交政策を優先させる必要があります。


参照資料:
(1) "IAEA chief urges vigilance against ‘terrorist’ nuke threats", January 26th 2015, AFP

(2) Majority Rule, Minority Rights, The Principles of Democracy, April 2005, InfoUSA, U.S. Department of State

(3) "Does Islamic State ideology threaten Indonesia?" by Sri Lestari, August 11th 2015, BBC