【維新の党の対案の両義性について】
安倍政権が成立を目指している安保法案に対し、維新の党が対案を提示しました。[1]
与党案が武力行使の要件とする「存立危機事態」に対し、維新案は「武力攻撃危機事態」を提案しています(下記参照)。
△与党が提案する存立危機事態
「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険が ある事態」
△維新の党が提案する武力攻撃危機事態
「条約に基づき我が国周辺の地域において我が国の防衛のために活動している外国の軍隊に対する武力攻撃 (我が国に対する外部からの武力攻撃を除く。)が発生し、これにより我が国に対する外部から の武力攻撃が発生する明白な危険があると認められるに至った事態」
維新の党は、上記の武力攻撃危機事態における武力の行使は、日本の周辺における個別的自衛権の行使であり、憲法に違反しないと主張します。
しかしながら、維新案では、「外国の軍隊」に対する武力攻撃が発生した場合に、自衛隊が反撃するとされています。日本が攻撃されていないにもかかわらず、自衛隊が反撃するのであれば、それは集団的自衛権であり、憲法に違反します。
実際、維新案が、集団的自衛権を認めたものなのか、個別的自衛権の範囲内なのかについて、メディアの報道では、見解が分かれているようです。[2][3] また、政党・政治家の間でも、見解が分かれているようです。[4]
私が懸念するのは、今後、与党政権と維新の党との間で法案修正協議が進み、維新案を一部取り入れる形で妥協が成立するのではないか、ということです。その場合、いわゆる玉虫色の文言が採用され、与党政権は、これは集団的自衛権を認めたものであると主張する一方、維新の党は、これは個別的自衛権にとどめたものであると主張することになります。
そして、結局、実際の自衛隊の運用は、与党政権の裁量で行われることになり、与党政権は、集団的自衛権を行使した、と断定することとなるでしょう。
世論調査によると、国民の圧倒的多数は、今国会における安保法案の成立に反対し、国民の多数は安保法案に反対しています。
安倍政権が進める憲法違反の安保法案、および、維新の党が提案した憲法違反の疑義のある対案は、いずれも廃案にすべきです。
参照資料:
(1) 安保法制に関する「維新の党 独自案」
(2) "維新 安保関連法案の対案、あす正式決定へ"、2015年7月1日、日本テレビ
(3) <維新対案>「攻撃危機事態」を定義 安保調査会で了承、2015年7月1日、毎日新聞
(4) <安保法案>維新対案8日にも衆院提出…「たっぷり審議を」、2015年7月5日、毎日新聞
註記: 上記の見解は、私個人のものであり、いかなる団体あるいは政党の見解をも反映するものではありません。
安倍政権が成立を目指している安保法案に対し、維新の党が対案を提示しました。[1]
与党案が武力行使の要件とする「存立危機事態」に対し、維新案は「武力攻撃危機事態」を提案しています(下記参照)。
△与党が提案する存立危機事態
「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険が ある事態」
△維新の党が提案する武力攻撃危機事態
「条約に基づき我が国周辺の地域において我が国の防衛のために活動している外国の軍隊に対する武力攻撃 (我が国に対する外部からの武力攻撃を除く。)が発生し、これにより我が国に対する外部から の武力攻撃が発生する明白な危険があると認められるに至った事態」
維新の党は、上記の武力攻撃危機事態における武力の行使は、日本の周辺における個別的自衛権の行使であり、憲法に違反しないと主張します。
しかしながら、維新案では、「外国の軍隊」に対する武力攻撃が発生した場合に、自衛隊が反撃するとされています。日本が攻撃されていないにもかかわらず、自衛隊が反撃するのであれば、それは集団的自衛権であり、憲法に違反します。
実際、維新案が、集団的自衛権を認めたものなのか、個別的自衛権の範囲内なのかについて、メディアの報道では、見解が分かれているようです。[2][3] また、政党・政治家の間でも、見解が分かれているようです。[4]
私が懸念するのは、今後、与党政権と維新の党との間で法案修正協議が進み、維新案を一部取り入れる形で妥協が成立するのではないか、ということです。その場合、いわゆる玉虫色の文言が採用され、与党政権は、これは集団的自衛権を認めたものであると主張する一方、維新の党は、これは個別的自衛権にとどめたものであると主張することになります。
そして、結局、実際の自衛隊の運用は、与党政権の裁量で行われることになり、与党政権は、集団的自衛権を行使した、と断定することとなるでしょう。
世論調査によると、国民の圧倒的多数は、今国会における安保法案の成立に反対し、国民の多数は安保法案に反対しています。
安倍政権が進める憲法違反の安保法案、および、維新の党が提案した憲法違反の疑義のある対案は、いずれも廃案にすべきです。
参照資料:
(1) 安保法制に関する「維新の党 独自案」
(2) "維新 安保関連法案の対案、あす正式決定へ"、2015年7月1日、日本テレビ
(3) <維新対案>「攻撃危機事態」を定義 安保調査会で了承、2015年7月1日、毎日新聞
(4) <安保法案>維新対案8日にも衆院提出…「たっぷり審議を」、2015年7月5日、毎日新聞
註記: 上記の見解は、私個人のものであり、いかなる団体あるいは政党の見解をも反映するものではありません。