【立憲主義が、民主主義の原則であることについて】

国会の憲法審査会において、野党側参考人だけでなく、与党側参考人も安保法制が違憲であると証言したことで、安倍政権が進める集団的自衛権行使・後方支援拡大の動きの違憲性に批判が集まっています。

世論調査によると、国民の圧倒的多数が安保法制の今国会での成立に反対し、国民の多数が集団的自衛権行使・後方支援拡大に反対しています。憲法審査会における参考人の証言をきっかけにして、この国民の世論が表面化したものと思われます。

立憲主義の下、国の最高法規である憲法に違反する法律も、行政行為も全て無効です。国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、憲法を尊重し擁護する義務を負います。

この立憲主義は、単なる憲法の法理ではなく、より広く、国民の権利と自由を守るための、民主主義の原則のひとつです。

歴史的に、国家権力が国民の権利と自由を抑圧してきたことに鑑み、国民の権利と自由を守るため、もっとも重要な内容を憲法に定め、国家権力の横暴を防ぐこととしました。重要な民主主義の原則である、法の支配から派生した原則です。

ちなみに、主流的な理論によると、民主主義は、自由で公正な選挙だけで実現するものではなく、政府の説明責任や法の支配、報道の自由や独立した司法など、多数の原則が互いに影響し合い、支え合うことによって成立すると言われています。

ひとつの原則が強まると、他のすべての原則が強まり、逆に、ひとつの原則が弱まると、他の全ての原則が弱まります。

現在、安倍政権は、憲法違反の安保法制を成立させようとしていますが、国会において、野党側が質問をしても、安倍首相や中谷防衛大臣、岸田外務大臣、菅官房長官等は、質問と異なることを答えたり、論点をずらしたり、非論理的な答弁を繰り返しています。これは、政府の説明責任という民主主義の原則に違反するものです。政府は、その決定や行動に関し国民に説明する義務を負います。

そして、本来であれば、メディアが、政府の説明責任の不十分さを厳しく批判するべきですが、元経産官僚の古賀茂明さんがニューヨーク・タイムズへの寄稿文で明らかにしたように、日本のメディアには構造的問題があり、報道の自由を狭めています。報道の自由は、もっとも重要な民主主義の原則のひとつです。

さらに、今後、安倍政権の憲法違反の閣議決定や安保法制に関し、違憲訴訟が提起・審査されると思われますが、そのときは、司法の独立が試されます。

私は、安倍政権が憲法違反の閣議決定を行ない、憲法違反の安保法制を推進している状況であるからこそ、日本国民のみなさんが、ひとつひとつの民主主義の原則を十分理解し、民主主義を通じ、自らの権利と自由を守る伝統を作り上げて行くことが大切だと思っています。

ひとつひとつの民主主義の原則を大切にし、これを着実に強めて行くことが、国民の権利と自由を守り、国民の生命と安全、暮らしを守ることにつながります。


参照資料:
The Principles of Democracy, April 2005, InfoUSA, U.S. Department of State


註記: 上記の見解は、私個人のものであり、いかなる団体あるいは政党の見解をも反映するものではありません。