【次期参議院選挙における与野党逆転の重要性および長期的な国家安全保障政策について】

安倍首相は、2月12日の施政方針演説において、「集団的自衛権」という言葉を一度も使いませんでした。安全保障法制が、今国会の最大の焦点であるにもかかわらずです。

与党政権は、野党・国民の批判を恐れているのかも知れません。このため、集団的自衛権に関する法案の提出を、統一地方選挙のあとに延ばした上で、短い国会審議のあと、安定多数を背景に、安保法制を強行採決する予定なのかも知れません。

与党政権の独走にブレーキをかけるべく、野党は、次期参議院選挙での与野党逆転を戦略目標とし、国会内外で協力することが大切と思われます。

野党が次期参議院選挙における与野党逆転を戦略目標として明確化し、これを繰り返し主張することにより、今国会においても、与党政権は強硬な姿勢を取りにくくなると思います。自衛隊の海外派遣には国会承認(衆議院、参議院それぞれの可決)が必要であるため、次期参議院選挙で与野党が逆転すれば、仮に今国会で安保法制を整えても、自衛隊の海外派遣が出来なくなるからです。

世論調査によると、現時点でも、集団的自衛権による自衛隊派遣に反対する国民が多数を占めています。[1] 仮に今国会で、与党政権が安保法制を強行採決するようなことがあれば、次期参議院選挙での与野党逆転を望む国民の声は、非常に大きくなると思います。

現在、与党政権は、与党間協議において、過激派集団が集団的自衛権行使の対象となるのか、集団的自衛権行使に地理的制約はあるのか、集団的自衛権行使によりホルムズ海峡の機雷掃海は出来るのか、などの議論を行ない、世論の反応を見つつ、国民の反対の弱いところから法制を進めようとしているようです。非常に行き当たりばったりの印象を受けます。大切なのは、安全保障環境の趨勢に基づく、長期的で、確固とした国家安全保障戦略だと思います。

長期的な国家安全保障戦略においては、エネルギー戦略がひとつの基盤となります。今後ますます不安定化する中東地域からのエネルギー輸入を減らすため、再生可能エネルギーの割合を大幅に増やすべきです。ちなみに、ドイツでは、すでに昨年、再生可能エネルギーによる発電が総発電量の25%以上を占めました。2035年までに、60%に達する予定です。[2]

また、原発も危険です。イスラム教過激派集団が、原発を攻撃目標にする可能性があるからです。[3] 野党は、2月16日の代表質問の中で、テロに対する国内の防護の備えについて質問しましたが、これに対する首相の答弁は、きわめて曖昧なものでした。

テロリストは、しばしば、その国の政治的中枢や歴史的遺産を攻撃目標にします。これらが破壊されると国民が受ける精神的ダメージが大きいからです。アメリカであれば、連邦議事堂やニューヨークの高層ビル、自由の女神などです。日本であれば、国会議事堂や京都の歴史的遺産などです。

仮に静岡県の浜岡原発が破壊されれば、放射能の拡散により、首都機能が停止する可能性があります。また、福井県の原発が破壊されれば、放射能の拡散により、京都に大きな被害が出る可能性があります。

原発再稼働の安全性審査に、テロに対する脆弱性も含ませる必要があると思います。また、警察力だけで原発をテロから守れるのか、検討が必要だと思います。最悪のケースを想定すれば、自衛隊の銃火器で常時守る必要があるかも知れません。

野党は、国家安全保障の観点からも、早期の脱原発を主張すべきです。


参照資料:
(1)「自衛隊海外派遣、反対5割超=集団的自衛権で-時事世論調査」、2015年2月12日、時事通信

(2) "Germany Exceeds 25% Renewable Energy", December 30th 2014,Energy Matters

(3) "IAEA chief urges vigilance against ‘terrorist’ nuke threats", January 26th 2015, AFP


註記: 上記の見解は、私個人のものであり、いかなる団体あるいは政党の見解をも反映するものではありません。