【現与党政権による日本の国家安全保障の毀損について】

1. 6月29日付の弊ブログ記事「JAPANESE GOVT'S INCOMPETENCE ON NAT'L SECURITY」の中で、次のようにお伝えしました。

「現在の与党政権の国家安全保障政策は、二転三転し、非常に場当たり的な印象を受けます。東アジアの安全保障環境やグローバルなパワーバランスに基づいて、理詰めで、客観的に必要性を議論するのでなく、とにかく主張するだけ主張して、もし認められるものがあれば、それを実行しようという姿勢のようです。非常に不安定です。」

「集団的自衛権に関する、これまでの首相の記者会見や集中審議、そして、与党間協議で明らかとなったことは、現行法制の下でも、民族主義的な政権が、その気になれば、いかに情報を開示せず、いかに他党の声に配慮せず、いかに国民の意思を無視して、防衛政策を押し進めることが出来るか、ということでした。」

「このような政府の姿勢が続けば、日本の国家安全保障はガタガタになります。周辺各国との関係を損なうだけでなく、同盟国の安全保障も損ないます。また、自衛隊にも混乱を招きます。」

この心配が、現実のものとなりつつあるようです。

2. 安倍首相の靖国参拝、そして、安倍政権による、慰安婦問題に関する河野談話検証、集団的自衛権容認という事態を受けて、韓国と日本との外交関係が非常に悪化しています。韓国国会の外交統一委員会は、4日、日本の河野談話検証と集団的自衛権容認を批判する決議案2案を可決しました。

一方、日本と韓国の外交関係悪化という状況の下、中国の習近平主席が、7月3日-4日、韓国を訪問し、中国と韓国が急速に接近しつつあります。東アジアのパワーバランスが大きく変化しつつあります。

その結果、日本と韓国というふたつの同盟国に依拠した、アメリカのアジア戦略の基盤が崩れつつあります。

3. すでに、韓国と中国との貿易は、韓国とアメリカ・日本との貿易総額よりも大きくなっています。強い経済的結び付きを反映し、中国と韓国の関係は、非常に強くなっています。

さらに、習近平主席は、韓国訪問中の講演で、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に、中国の明王朝が李氏朝鮮を救ったこと、そして、第二次大戦において、中国と朝鮮が、日本の侵略を受け、被害・損害を受けたことを指摘し、両国の歴史的な結び付きを強調しました。

外交専門のアメリカの大学院フレッチャー・スクールのLEE SUNG-YOON教授によると、韓国では、歴史に詳しくない学生でも、1590年代の文禄・慶長の役(豊臣秀吉による朝鮮出兵)において、中国の明王朝が、李氏朝鮮を守ったことを知っているそうです。

4. 現与党政権の民族主義的な姿勢、そして、集団的自衛権容認にあたり、情報を開示せず、他党の声に配慮せず、国民の意思を無視し、周辺各国との外交を軽視した姿勢が、日本の安全保障を損ないつつあります。

このような政府の姿勢が続けば、日本の国家安全保障はガタガタになります。周辺各国との関係を損なうだけでなく、同盟国アメリカの安全保障も損ないます。

以上のような与党政権の姿勢に照らしてみた場合、現在の政権には、国家安全保障政策に関する政権担当能力がないと言わざるを得ないと思います。

5. 野党は、単に集団的自衛権の限定的容認を認めるか否かという狭い議論にとどまるのでなく、「外交を優先した国家安全保障政策の推進」と「情報開示をともなう民主的文民統制の確立」という、より高い次元から、主張を行なって行くことが必要だと思います。

それが、東アジアの平和と国民の生命・権利・自由を守ることにつながります。


参照資料:

(1) "Chinese Leader, Underlining Ties to South Korea, Cites Japan as Onetime Mutual Enemy", July 4th, 2014, The New York Times

http://www.nytimes.com/2014/07/05/world/asia/in-south-korea-chinese-leader-cites-japan-as-onetime-mutual-enemy.html?_r=0

(2) "S. Korean lawmakers adopt two anti-Japan resolutions", July 4th, 2014, Yonhap News Agency

http://english.yonhapnews.co.kr/national/2014/07/04/46/0301000000AEN20140704004200315F.html

(3) "Xi, Park share concerns over Japan's constitution reinterpretation", July 4th, 2014, Xinhuanet

http://news.xinhuanet.com/english/china/2014-07/04/c_133460880.htm

以上


註記: 上記の見解は、私個人のものであり、いかなる団体あるいは政党の見解をも反映するものではありません。