第32回 世紀を越えるヒットの法則
富良野塾生による21世紀迎えるための新しい「今日、悲別で」という公演を見た。
本当の匂いの出た演出であった。
「北の国から」を初め数々の倉本聰さんの脚本作品は、何故いつもロング大ヒットするのだろうか?
今回の公演は、90年の5期生による卒塾公演で、9年ぶりの東京公演だ。
企画は85年のテレビドラマの際、形を創るまで2年、その後音や匂いを取り入れご自身も実体験し手直しながら15年の歳月が流れた。
舞台を共に見ていた前席の人が落盤シーンで体を震わせ、公演が終えた際パラパラと拍手がおこり段々に大きくなってゆくうねりは、会場全体が一体となった感動を覚えた。
帰る際のそこに集った人達は会ったことはないが、何故か共通の知人のように思えた。
20世紀は「最大公約数」の時代であった。
テレビ番組では以前のお化け番組「8時だヨ!全員集合」のように、子供から大人まで楽しめることがヒット条件だった。
社会の細分化が進み、「数%の倍数」の時代に変化してきたように思う。
広い世代や地域でのヒットがなくなり属性を絞り、ターゲットを絞り込むほど発火しやすく、その後、話題とムーブメントを起こし波紋マーケティングによってヒットの規模が決まる。
プリクラや、宇多田ヒカルなどのヒットはその典型に思う。
生活者や消費者は「納得できるもの」を厳しく求め、思いつきやハプニングといった表層的なものでなく、「お金や時間を費やすなら、きちんと創られた本物の良いものが見たい、欲しい」と要求する。
倉本さんのように現実直視でこだわりとテーマを持って、創作続ける「本物」を求めている。
過日、ヨドバシカメラの藤沢社長に、「4000億の売上とはすごいですね」と申し上げたら「本物を安く売ればいいんだ。ルイビトンのバックは日本人の女性が一番買っている、この前ルイビトンの方がこられて言っていたよ」と。
一過性のブームでない価値ある「銀座の虎や」「新潟の加島屋」のような、「長く続く、目に見えない価値をもった商品は、心を濡らして、絞れば水を出せる状態から、生まれたようだ。