9つのポイントからアメリカの大統領と日本の総理大臣の権限を比較。 | 国際法と国際政治から読み解く現在

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2017年アメリカ大統領選挙に向けて、予備選挙が繰り広げられる中、気になるのが、大統領がアメリカ政治にどれほどの力を及ぼすのかです。

 

アメリカにおける政権交代の意味は、日本との比較をすることによって全く規模の異なるものであることがわかります。

 

1.政権交代のパターン

 

アメリカ大統領制

・任期(4年)の終了時

大統領が失職しても、副大統領が昇格するので、政権交代にはなりません。

 

日本議院内閣制

・不信任決議による辞職

・議会の解散

・任期なし

 

2.候補者選考

アメリカ大統領制

未経験者の参入が可能

連邦政治にまったく関わりをもったことがない歴代政治家

ジョージ・W・ブッシュ

ビル・クリントン

ロナルド・レーガン

ジミー・ カーター

(前職は全員州知事である、オバマの前職は連邦上院議員だが経験値は2004年に一回当選と浅い)

 

日本議院内閣制

通常国会議員から選出

 

アメリカ大統領選挙が予備選挙も含めて、約2年に及ぶ長期戦(新聞、メディアを巻き込む)であるのに対し、日本の総理大臣候補は比較的短期間に(場合によると数日から1~2週間以内に)選出される。

 

3.代表をきめる重要なアクター

アメリカ大統領制

政党内の党員

日本議院内閣制

同僚の議員

 

 4.大統領の人事行政

アメリカ大統領制

アメリカの大統領は局長級まで直接指名

大統領が任命するポジションの数は3,500程度。

投票日前から任命のための準備作業を開始する。公式には、投票日後に連邦政府から資金とオフィスが用意され、 選考作業が本格化する。

 

政治任用者は、次の4種類に大別できる。

1) 上院の承認に基づく大統領任命者

……法律で官職が設置される各省局長(Assistant Secretary)級以上は、原則として、これに該当

2) 上院承認を要さない大統領任命者

……大統領補佐官、大統領上級顧問等

大統領補佐官などホワイトハウスの上級職員は大統領が直接任命する。ホワイトハウスの下位の職員については大統領の承認に基づき大統領首席補佐官等が任命。

3) 上級管理職(Senior Executive Service:審議官、課長級)のうちの非職業公務員

4) 一般職の政治任用者

なお、徹底した権力分立のシステムをとるアメリカにおいては、憲法上、上・下院議員が行政府の職を占めることは禁止されています。

 

行政府において現職議員が就いているポストが皆無です。


行政府の人材供給減

 

 

ポストがない、失職した行政府の再就職先

ロビー活動に再就職するひとも

日本議院内閣制

内閣総理大臣が国務大臣を任命(68条)

その大臣が国会議員でもある場合には、大臣ではなくなるだけで国会議員という地位まで辞めるわけではない。(国務大臣の過半数が国会議員でなければならない)

 

巨大な官僚機構の上に、新政権が任命できる政務は就任したばかりのわずか3~5人程度。

 

 

5.官僚制のあり方

アメリカの官僚制 

官僚たちの

自分が属する局や省に対する忠誠  < 大統領への忠誠心

 

大統領が再選に失敗すると、彼らもほぼ全員失職することになります。自分の職務の成功は政権の成功につながりうるし、自らの失政は政権の再選失敗に帰着します。

 

日本の官僚制

首相による行政部の把握・統制強くない

高級官僚の座をもっている

 

6.政策変更あるいは政策転換

アメリカの官僚制 

官僚たちは、政策変更あるいは政策転換について、積極的な体質をもつ。

 

前任者は前政権によって任命された官僚であり、それは対立政党に所属する政敵であることが多いです。前政権による誤りを積極的に国民に公開ないし暴露し、自分たちがいかに画期的な改善を行っているかをアピールすることにあります。

 

日本の官僚制

政策の誤りを自ら直す、あるいは政策転換を積極的に主導するという誘引に乏しい。

 

天下り規制や関連する組織の削減といった問題についての指摘が困難。

 

 

7.大統領と官僚制との関係

アメリカの官僚制 

大統領は官僚制をうまくコントロールする困難度低い

 

日本の官僚制 

大統領は官僚制をうまくコントロールする困難度非常に高い。

 

8.シンクタンク

アメリカの官僚制

アメリカに存在する民間のシンクタンク

アメリカの大統領直属の大統領執政府ととりわけそこに包含されるホワイトハウス事務局は、大統領を制度的に支える強力にして巨大な手足となります。

民間から選ばれる大統領補佐官を中心とするこのスタッフ組織が、行政部各省庁に対して、議会に対して、またメディアや利益団体に対して、大統領が影響力を及ぼそうとする際の重要な制度的拠点となり、行政部に上から厳 しい規律を課していくことになります。

大統領は直属の自分に対する忠誠度がきわめて高いスタッフ組織を抱えているからこそ、外部に対して一定程度強力なリーダーシップ を行使できます。

 

前クリントン政権が任命した局長の経歴

日本の官僚制

多くの議員は与野党を問わず官僚に直接間接に依存。

 

民主党政権の例

官僚と戦い、官僚に依存しない大方針を実践しようとすると、政治家によほどの専門能力が備わっていないと機能しない可能性が高いです。なぜなら、日本の政治家自身が、官僚を通して配分されるさまざまな補助金や事業、あるいはそこで決定されるさまざまな規則や政策(規制や保護など)の受益者であるためです。

 

9.立法と行政の関係

アメリカ大統領

アメリカの大統領 は、立法に関しては弱い立場におかれているが、行政権に属することについては、ある意味できわめて自立的な決定権限を握っているといえる。

日本の総理大臣

立法に関しても、行政権に属することについても、決定権限がきわめて少ない。